兵士の反乱:参
西暦220年・10月 (建安25年)
樊城。 荊州北部にある城で呉の領土。
ここに張任・冷苞・高沛が守備する。
また呉の精兵一万で守備する。
それと樊城の守備もほぼ完了している。
一方の楊任・楊昂と二万の魏の軍勢が樊城を包囲する。 もう既に樊城の包囲は完了しており、そこで陣を敷く。 今は総攻撃の準備をしている最中。
張魯は魏に所属しており、配下の楊任・楊昂は二万の魏の精兵を有している。
劉璋は呉に所属しており、配下の張任・冷苞・高沛は一万の呉の精兵を有している。
この二人が荊州・樊城を賭けて対決する。
楊任・楊昂が総攻撃を開始して、二万の軍勢が樊城の城壁に貼り付く。 高い梯子を使用して、どんどんと城壁をよじ登る。 一万の城兵も弓矢・投石(落石)・熱湯などを用いて応戦する。 二万の軍勢がどんどんと城壁をよじ登るけど、城兵もよく対応して、なかなか城壁を登りきれない。 楊任・楊昂が火矢を用いて援護射撃するも、城兵も火矢を用いて楊任・楊昂軍に応戦する。 まさに一進一退の戦況となる。
「ちっ、しぶとい!」
「なかなか落ちないな!」
総攻撃は夕方まで続くけど、最後まで城壁をよじ登ることができず、イタズラに兵力を減らす結果となった。 このまま夜になっても総攻撃を続けた。 将軍たちに悪神が囁く。
[戦え!]…と。
「それ行け!」
「手を緩めるな!」
「防げ防げ!」
「落とされるな!」
「なんとしても守りきれ!」
各将共に必死だった。
なんとしても結果・戦功が欲しい。
だけど兵士たちにしてみれば、真夜中まで徹夜して城攻めしないといけないのか? と思う兵士が続出する。 また城兵も命を懸けてまで樊城を守る兵士は多くない。 こんな城…守る価値があるのか? と思う兵士が続出する。 兵士たちの張魯や劉璋に対する忠誠心はあまり高くない。
城攻めは連日三日三晩行われており、双方の軍に戦死者・逃亡者が続出する始末。 明らかに各将たちは焦っている。 なんとしても結果・戦功が欲しいのだ。 兵士のことなど、少しも考えていない。 これでは両陣営の兵士の不満や反感が上がるだけだ。
「……」
「おい、将軍は俺たちのことをどう思ってると思う?」
「どう……?」
「知らねえよ。
俺たちのことを兵士と思っているのか、物だと思っているのか、よく解らねえよ。」
「物……?」
「ああ、そうだよ! 物だよ!」
「このままだと俺たち餓死か…戦死だぞ!」
「おい、そうなったら妻子の面倒は誰が見るんだ?」
「ああ、そうだよ!
老いた母の面倒は誰が見るんだ?」
「……」
「おい、もう逃げちまおうか?」
「ああ、そうだな。
逃げちまおうぜ!」
「ああ、そうだな。
逃げようぞ!」
「よし、早い方がいい!」
張魯軍の兵士も劉璋軍の兵士も士気が減少しており、逃げ出す兵士も後が絶たない。 このままでは戦どころではなくなる。 七日間、ずっと戦い続けたところで、楊任・楊昂軍が樊城から三十里離れた場所まで撤退して陣を敷く。 だけど将軍たちに悪神が囁く。
[戦え!]…と。
仕方なく撤退した形の楊任・楊昂は陣中の兵士の様子を確認する。
「兵士の様子はどうだ?」
「それが戦死者・逃亡者などが多数出ていて、この陣中にいる兵士の数が一万までに減少している。」
「そうか、一万か……」
「どうだ? 一旦南陽まで引き返すか?」
「えっ? 樊城を落とさないまま、南陽まで撤退するのか?」
「しかし、一万で城攻めは不可能だろう?」
「…だが…」
「クソッ、一体どうすればいいんだ?」
楊任・楊昂が、今後の城攻めについて話し合う。 このまま城攻めするか、それとも南陽まで引き返すか、考える。 でも…たったの一万だけの軍勢で、果たしてこのまま城攻めできるのか、正直いって不可能に近いかもしれない。 せめて…あともう一万の兵士が残っていれば、まだなんとかなると思うけど…。 それに城攻めの兵士たちも不満や反感があるようだ。 兵士たちに悪神が囁く。
[乱せよ!]…と。
なんとか耐えた張任・冷苞・高沛も城兵の様子を確認する。
「おい、兵士の数はどうだ?」
「……」
「ああ、戦死者・逃亡者などが多数出ていて、この城に残っている兵士の数は、あと四千程度しか残っていない。」
「四千……っ!?」
「おいおい、これでは籠城戦どころではないぞ!」
「ああ、そうだな。
これでは翌日には、樊城は陥落しているだろう。」
「これで我々も終わりだな!」
「…クソッ…」
「おい、一体どうする?」
張任・冷苞・高沛も、今後の事について話し合う。 このまま樊城で籠城するか、それとも襄陽まで引き返すか、考える。 ハッキリいって、たったの四千程度の城兵で樊城を守りきれるはずもない。 樊城を守るには最低でも三万の軍勢が必要。 それを一万の城兵で守るなど無茶があったのだ。 それに城兵の中にも不満や反感があるようだ。 兵士たちに悪神が囁く。
[乱せよ!]…と。
「!!?」
「な…なんだ? お前たち…?」
「お…おい、お前たち…?」
「うるせえっ!」
「このヤロウッ!」
「テメエらっ!」
「ブッ殺してやるッ!」
なんと城兵四千が張任・冷苞・高沛に反乱して攻撃する。 これには張任たちも驚く。
「俺たちは物じゃない!」
「そうだそうだ!
俺たちはお前たちの物じゃない!
お前たちと同じ人間だ!」
「「「!!?」」」
兵士たちの反逆は想像以上で、予想以上に酷使しすぎた。
なんとか張任・高沛は樊城から脱出するけど、逃げ遅れた冷苞だけが城兵四千の怒りに討ち死に・戦死した。
一方の樊城から三十里離れた場所まで撤退して陣を敷く楊任・楊昂軍の一万の兵士も、遂に楊任たちに対して反乱して攻撃する。
「ッ!!?」
「お…おい、なんだ…お前たち…?」
「チクショウゥゥッ!」
「うるせえぇ!」
「このヤロウゥ!」
「テメエらぁ!」
「ブッ殺してやるぅ!」
これには楊任たちも驚く。
「お前たち!」
「反乱だ!」
「「うぜえぇぇーーっ!」」
「「「死ねぇーーーっ!!」」」
ようやく兵士たちを酷使したことに気づくも、もう既に遅い。
なんとか楊任は陣から脱出するけど、逃げ遅れた楊昂は一万の軍勢に怒りの討ち死に・戦死した。 兵士たちに悪神が囁く。
[樊城を奪え!]…と。
楊任は南陽へ、張任・高沛は襄陽へ、それぞれ敗走する。 樊城に張魯軍一万と劉璋軍四千と謎の千の軍勢、合わせて一万五千の軍勢が集結。 その軍を指揮するのが、あの伯酸瑁なのだ。 伯酸瑁は樊城の地下牢に閉じ込められてる于禁・楽進・李典の精神を操って、この樊城を守らせた。 樊城は今、漢にも魏にも呉にも蜀にも、どこにも属していない独立した勢力となった。
西暦220年・11月 (建安25年)
伯酸瑁の出現により、張魯・劉璋が相次いで病死。 また伯酸瑁の精神操作を受けた張任・高沛・閻圃・楊任・楊白らと謎の一万五千の軍勢が樊城に集結。 今の樊城は于禁・楽進・李典・張任・高沛・閻圃・楊任・楊白らと三万の軍勢で守られてる。 その李典や張任らは完全に正気を失っており、瞳の色が赤く光る。 伯酸瑁は普通の人間ではなく、悪神なのだ。 伯酸瑁の姿は人間には見えない。 だけど伯酸瑁は人間を呪ったり操ったりできる。
伯酸瑁…南中に続いて、樊城にも登場。
最後に悪神が囁く。
[漢よ滅べ!]…と。
【注意事項】
※また悪神伯酸瑁が登場。 超常的な能力を使用する。
※悪神伯酸瑁の目的が何なのか? 本当に漢を滅亡させることなのか?
※今度の樊城は伯酸瑁のモノとなった。