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【三国志異伝】《唯一無二の計》  作者: 賭博士郎C賢厳
第二章:劉備の南征・南方攻略
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大病の正体:伍

  西暦219年・12月 (建安24年)



 南中を支配する孟獲が大病を患う。

 南中・南蛮の王である孟獲が(やまい)にかかり、南中・南蛮の統治が効かなくなる。 そのため、野心を持ち不満を持つ反乱四天王の阿会喃(あかいなん)董茶那(とうとな)兀突骨(ごつとつこつ)忙牙長(ぼうがちょう)が孟獲に反旗を翻す。 それに対抗するため、忠義の帯来洞主(たいらいどうしゅ)金環三結(きんかんさんけつ)木鹿大王(ぼくろくだいおう)朶思大王(だしだいおう)が孟獲を守りながら応戦する。 その反乱四天王も劉備軍・蜀軍が全て退治・討伐した。 ここに南中・南蛮の反乱も終わりを告げた…はずだった…。 なんにしてもこれで、あとは孟獲に会うだけ。





 南中・第五洞村。 ここはあの金環三結(きんかんさんけつ)が守る村である。 金環三結(きんかんさんけつ)は反乱軍ではなく、孟獲派の正規軍なので祝融からの木札と書状があれば十分通過できるはずだ。 金環三結(きんかんさんけつ)の他にも木鹿大王(ぼくろくだいおう)朶思大王(だしだいおう)が第五洞村にいる。 劉備軍・蜀軍は第五洞村の前で陣を敷く。


 金環三結(きんかんさんけつ)たちが劉備に援軍の礼を言うため、わざわざ会いに来ていた。


「今回の援軍ありがとうございます。」

「これで反乱軍も鎮圧できました。」

「心よりお礼申し上げます。」

「ふむ、反乱軍を討伐できて良かった。

 ワシとしても背後の憂いを放置する訳にはいかんからな。

 これで祝融殿の援軍要請も果たしたことになる。」

「はい、感謝致します。」

「もし援軍が来なかったら、我々もどうなっていたか…」

「これで南中も平和が戻りましょう。」

「ところで孟獲殿の容体はどうか?」

「はい、あまり思わしくありません。」

「はい、原因が不明なので我々も対処のしようがありません。」

「一体どうしたら…?」

「ふむ、孟獲殿に会えるか?」

「はい、孟獲様は南中奥にある第九洞村におります。」

「反乱軍も鎮圧されて、祝融様からの木札と書状があれば自由に行けましょう。」

「よし、ワシが孟獲殿に会って、反乱軍討伐の報告と孟獲殿の容体を診てみよう。」

「はい、宜しくお願いします。」

「我々はそれぞれの村に戻って守ります。」

「今回は本当にありがとうございました。」

「ふむ、わかった」


 金環三結(きんかんさんけつ)たちが劉備に臣下の礼をとると、すぐにそれぞれの村に戻っていった。 劉備はその日は本陣で休み、翌日には第六洞村へ向かう。 もう劉備に敵対する者は居ないので、そのまま楽々と第九洞村へ向かうことができた。 劉備軍・蜀軍は第九洞村に到着すると、村の目の前で陣を敷く。





 南中・第九洞村。 ここは孟獲の弟・孟優が守備する村である。 しかし、何故か孟優も孟獲同様に大病を患い寝込んでいる。 そこでまずは援軍要請した祝融から会いに行くことにした。


「祝融殿でござるか? 劉備でござる」

「おお、劉備殿か。 今回の援軍まことにありがとうございます。」

「ふむ、反乱軍のあの四人はしっかりと討伐しておいた。 これで南中も平定できるだろう。」

「はい、夫に代わって改めて礼を言います。」

「ところで孟獲殿にお会いできるかな?」

「はい、こちらです。」


 劉備と護衛や医者らは祝融の案内で、孟獲と孟優が寝込んでいる寝室まで行く。 劉備が孟獲に会うと、特に目視では身体の異常は見られないが、とても苦しそうな痛い表情をしている。 あの猛勇で知られる男がとても弱々しく見えた。


「孟獲殿。 劉備でござる。」

「おお、劉備殿。 よく来てくれた。

 ワシはこのザマで申し訳ない。」

「否、安静にしていなされ。

 そなたに(あだ)なす者は片付けて参った。」

「おお、恩に着る…劉備殿。」

「今、蜀の名医に診てもらう。」

「おお、ありがたい」


 そう言うと早速、劉備が連れてきた蜀・名医たちが孟獲と孟優を診る。 頭のてっぺんから足の爪先まで診察するけど、特に異常は見られないようだ。 名医たちも首を(かし)げる。


「どうだ?」

「解りません。 特に異常はありません。」

「…そうか…」

「ただ一点。 不明な点があります。」

「何っ!?」

「お二人の左脇腹に黒く円い模様のようなモノがありました。」

「何っ!?」


 そう言って劉備も孟獲と孟優の左脇腹を見てみると、約5mmぐらいの黒色の円いホクロみたいなモノがあった。 これを見た時、劉備の顔色が変わった。 劉備には()()が何か判ったようだ。


「こ…これは…」

「「「「?」」」」

「劉備殿…?」

「りゅ…劉備殿…どうした…?」

「これは…(やまい)ではない…。

 これは呪い…呪術だ…」

「「「「!?」」」」

「えっ!?」

「な、何っ!?」

「ワシは()()を見たことある。

 昔、ワシが若い頃、友人が呪いにかかったことがあってな。 その時もその友人の左脇腹にこの様な黒く円い模様のようなモノがあったのだ。」

「「「「……」」」」

「孟獲殿…誰か呪いに精通していて、そなたに怨みのある者を知らないか?」

「……」

「私には解りません。」

「俺も呪術ができる者など知りません。」

「…そうか…」

「…いや、一人にいる…」

「本当か? 孟獲殿!」

「ああ、おそらく伯酸瑁のことだろう。」

「「あっ…!」」

「伯酸瑁…?」

「この地に伝わるアヤカシってヤツだ」

「アヤカシ…?」

「「……」」

「あぁ…」


 孟獲が伯酸瑁について説明してくれた。


 昔から南中を守る悪神(アヤカシ)がいた。

 その悪神(アヤカシ)は南中を守る代わりに、一年に一度、この地の美女を献上しなければならない。 そうしてこの地は守られた。 ところが孟獲が王になってから、その古い風習を脱却するため、一年に一度の美女の献上を中止した。 そこからまもなく孟獲や孟優の体調がおかしくなった。 おそらく献上しないことに激怒した悪神(アヤカシ)の仕業だと思われる。 その悪神(アヤカシ)には呪術と秘術が使えて、猛勇で知られる孟獲といえど、太刀打ちできなかった。 孟獲は怒りと憎しみを込めて、その悪神(アヤカシ)を『伯酸瑁』と呼ぶようになった。 それからどんどんと容体もおかしくなり、反乱軍まで出現するに至った。 孟獲の変調がわかったところで劉備が納得する。


「なるほど、そういうことか…」

「伯酸瑁め! 古い風習を押し付けおって!」

「孟獲様…」

「朱褒! 至急成都にいる孔明にワシの書状を送り、お札を書いてもらうよう頼んで参れ!」

「はっ、判りました!」

「祝融殿はこの部屋の四方の壁に黒い布を()げて、四方角に盛り塩を置いてもらえぬか?」

「はい、判りました。」

「盛り塩が黒く変色したら、新しい盛り塩と交換してくれ。 また成都よりお札が届くと思うので、そのお札をこの部屋の東西南北の壁に貼り、黒く変色したら、新しいお札と交換してくれ。」

「はい、判りました。」

「これで呪術の威力も落ちるはず…」

「すまねえ…劉備殿…」

「助かります…劉備殿…」

「孟獲殿…この伯酸瑁は退治せねば、そなたたちも助かるまい…」

「ああ、判っている…」

「……」

「宜しくお願いします!」

「よし、これより伯酸瑁討伐の軍を編成して、アヤカシ退治に向かう! 皆の者、用意を怠るな!」

「「「「はっ!」」」」


 やっぱり直接、その伯酸瑁を退治しないと孟獲と孟優は呪術から回復できないだろう。 劉備は孟獲から伯酸瑁討伐の了承を得て、改めて劉備軍・蜀軍30万を編成して、孟獲から教えられた南中奥にある『御神山(おかみさん)の洞窟』へ向かう。 いよいよ南中征伐・最後の強敵(ボス)悪神(アヤカシ)伯酸瑁(ハクサンボウ)との対決だ。





 許昌・曹操が住まう宮殿。 体調を崩した曹操の容体が急変して、今…危篤となってる。 曹操の寝室には、曹丕・曹彰・曹植・曹真・曹洪・司馬懿・程昱・賈詡・劉曄・夏侯惇・夏侯尚・夏侯覇・司馬師・司馬昭らがいて、曹操を看取っている。 もうまもなく西暦219年・12月 (建安24年) も終わり、新しく西暦220年・1月 (建安25年) を迎えるタイミングで曹操が一瞬だけ意識を取り戻す。


「どうやら…余もここまでのようだ…」

「「「「……」」」」

「「「父上…」」」

「曹丕よ…そなたに余の葬儀を任せる。

 そなたが魏王・丞相となり、天下を平定するのだ…」

「はっ、判りました!」


 曹丕が正式に曹操の後を継ぐ。


「曹彰・曹植よ…そなたたちも曹丕を助けながら魏を繁栄させてくれ…」

「「はっ、判りました!」」

「司馬懿・程昱・賈詡・劉曄・夏侯惇よ…魏こそ漢に代わる新たな国として、逆賊・呉と蜀を葬り去れ…!」

「「「「はっ、判りました!」」」」

「曹真・曹洪よ…そなたたちも宜しく頼むな。

 魏を絶やしてはならぬぞ!」

「「はっ、判りました!」」

「ふふふ、伯酸瑁のヤツが呼んでおるわ!」

「「「「?」」」」

「…余はまさに戦いばかりの人生だった…」

「「「「!」」」」


 最期に曹操が不思議な事を言いながら、そのまま死去した。 ちょうど西暦220年・1月 (建安25年) になったタイミングであった。 ここに巨星()つ。 曹操孟徳→魏王・漢の丞相→病死・享年65歳であった。



 ここにまた一人の英雄『乱世の奸雄』が志半ばでこの世を去った。

 【注意事項】

※今回も全て架空なのでオリジナルをお楽しみください。


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