EP52:番外編:追記(「Ep11:女房伊予」の)
浄見に顔を引き寄せられ、唇に触れるか触れないかの口づけをされた後、
「兄さまこそ、怖いなら、逃げてもいいのよ」
と言われた時平は、頭の中で何かのタガが外れる音がした。
もういい。
浄見が誘ったんだ。
私は酔ってるし、浄見はもう子供じゃない。
と自分に言い訳し、素早く浄見を抱きよせ、強く唇を押し当てた。
唇で浄見の口を開き、舌を押し入れ浄見の中を愛撫した。
浄見はそれに戸惑っていたが、そっと舌に舌を絡めて時平の愛撫に応えた。
時平が浄見の唾液を飲み込もうと舌を吸うと、浄見はうっとりとした表情を浮かべた。
浄見の陶酔から漏れる声に興奮した時平は、片手で浄見の頭を操りながら一層熱心に中を舌でまさぐった。
浄見ははじめて自分の口の中に、時平の、熱い、弾力のある、しなやかな一部が入ってきた違和感にとまどっていたが、浄見の中を激しく情熱的に動き回るので、頭の芯がぼーっとする感覚になった。
時平に舌を飲み込まれそうになると、思わず「んっっ」と声が出た。
首の後ろを支える時平の手のひらと指の感触が、舌の動きと連動し、律動的に動くので、浄見は頭がぼんやりして痺れたようになり何も考えられなくなった。
浄見は手に力が入らなくなり、胸の前に下ろし、唇を時平の唇から離した。
いったん落ち着こうと、浄見はうつむいて『ふぅ』と息を吐いた。
次の瞬間、時平が腰に回した手で浄見の体を素早く引き寄せ、あごをつまんで上を向かせ、もう一度口づけた。
時平が再び舌で浄見の舌を絡めとり、全てを飲み込もうとする。
今度は浄見も時平の舌を吸い、愛情を示そうと頑張っていると、時平が唇を離して
「浄見が欲しい。ダメ?」
と言った。
浄見が戸惑っていると、時平がふと真面目な顔になり
「あぁ、バカな事を言った。気持ち悪いよね。」
と寂しそうに言った。
浄見は首を横に振って
「違うの。気持ち悪くなんてないわ。ただ、びっくりして・・・。今日はもう、どうしていいか、頭がいっぱいで考えが追い付かないの。」
時平が微笑んで
「いつまでも待つよ。もう決めたから。浄見を恋人にする。そして妻にする。もうこの先は浄見だけでいいんだ。浄見だけで私は満たされるから、時間はたっぷりある。」
浄見は嬉しさのあまり胸が苦しくなった。
時平はその夜、はじめて浄見を胸に抱いて眠った。
幼い浄見が膝の上で眠るのを座って抱いていたことはあったが、一緒に並んで眠ることはなかった。
自分の腕の上に浄見の顔があり、胸に熱い息が触れる。
その重みと、ぬくもりだけで、幸せになった。
浄見がそばにいるという実感に胸が高鳴った。
衣一枚だけを通して触れる感覚も今までに味わったことがなく、思わず寝返りをうち、浄見を抱きしめると、華奢なくせに柔らかく、しなやかなことにも興奮した。
抱きしめる腕に力をこめると浄見が
「んーっ・・・兄さま?どうしたの?苦しいわ。眠れないわ。」
というので、ますます興奮して、浄見の上に半身を乗せ重みをかけた。
浄見の身体にふれた部分が熱を帯び、衣越しに汗を感じた。
浄見の柔らかさに思わず反応しそうになったが、ひじで体を支えて体を起こし、ごまかすように首すじに口づけた。
浄見は眠そうにう~~んと時平を押しのけた。
時平がギラついた目で
「いつまで我慢できるか、保証できない。」
と言うと、浄見は眠そうな目で
「う~~ん、今日は眠いので、また明日ね?」
とそっけなく言った。
時平はひとつの関門を超えると、渇望と忍耐のまた新たな関門が生じるだけだという事を早々に悟った。
ゴロンと仰向けになり
『ああ、でも、これからは浄見がずっとそばにいるんだ。』
と思わず微笑んだ。
最後までお読みいただきありがとうございました。
「Ep11:女房伊予」の最後の方です。