EP44:番外編:有馬②
衣を剥いで有馬の豊満な乳房を口を使って愛撫すると、有馬は快感の声を漏らした。
時平はつねづね、自分の欲望を満たそうとするとき、相手の女性には快楽をもたらすのが最低限の礼儀だと思っていた。
女性が快感を感じるまで手や口で丁寧に愛撫し、十分に潤ったところで自分の欲望を満たす段階に移る。
豊かな肉体の女性は多くの場合、母性にあふれていて、時平をいつも甘えさせてくれた。
時平が気乗りしないときには逆に口や手で刺激してくれ、最後まで導いてくれた。
今も時平は、有馬を愛撫している途中で、浄見を思い出し、いつもならそれがより刺激となって気持ちが高まるのに、今日は怖気づいたまま、その気がなくなってしまった。
浄見のことを考え、絶望し、苦しくなり、イライラするという事を繰り返すうちに、女が煩わしくなっていた。
「すみません。今日は無理です」
と体を仰向けに投げ出し正直に言うと、有馬は驚いたようだが、
「では、わたくしが・・・」
といって、口に含み、手で刺激し、反応させると、その上に乗り、自分で動いた。
時平が刺激されるまま、脊髄反射的に果てると、有馬は時平の上で挑むように
「誰があなたを苦しめているの?」
というので時平は苛立った口調で
「子供です。つまらない、どうにもならない事について考えるのがもううんざりなんです。考えたくない。」
「お子様の中に手がかかる子がいるの?」
時平は浄見の勝気な顔を思い出し、触れたいのに触れられない自分のふがいなさと、他の男に微笑みかける浄見の姿に苛立ち
「いや、子供じゃない、私の・・・私の女だっ!」
と思わず吐き捨て、上半身を起こしたので驚いた有馬は慌てて時平の上からおりた。
有馬が横に座りなおすのを見つめながら時平は
「すみません。こんなことになって。申し訳ないと思ってます。」
と謝ると有馬はぼんやりと見つめ、ぽってりとした唇を少しあけ
「また、いつでも、苛立った時はお相手しますわね。」
と微笑んだ。
時平は今更ながら申し訳なく思って
「これは、その、本気ではなく、お互い遊びの関係だと思っていますが、それでいいですね?」
と念を押すと有馬は
「まぁ!野暮なことをおっしゃらないで。男女の仲なんていつどうなるかわかりませんでしょ?あなたの方がわたくしに夢中になるかもしれないでしょ。」
と笑いながら言った。
時平は、今まで数々の女性たちに、甘え、慰められ、心の傷を癒されてきたことにつくづく感謝した。
「あなたのような母性の溢れる人を好きになればよかった。」
と時平がぽつりと漏らすと、有馬は
「え?何かおっしゃった?」
と忙しそうに衣を着付けながら聞き直した。