EP34:番外編:破瓜(はか) ②
時平は浄見の胸から少し顔を上げ
「取り込み中だと言っただろう。わかったらかえってくれ」
と冷たく言い放った。
丹後は何も言わずくるりと背を向けて立ち去ったが、浄見はその目に光るものを見た気がした。
浄見はあの気の強い丹後が泣いてる?と思うと胸が痛くなった。
もし逆の立場なら、時平の事を恨んで、憎んで、嫌いになってしまうかもしれないと思った。
あまりにも酷い仕打ちに思えた。
恋人が後から現れた若い女に乗り換えたら誰だって傷つくし耐えられない。
それに、わざわざ目の前で見せつけるなんてひどいと思った。
「兄さま・・・」
「私は残酷だろう?」
時平は浄見の目を見つめながら真剣な顔で言った。
「私が残酷な証拠に、他の女性たちを抱いているとき何を考えていたか知ってる?」
浄見は首を横に振った。
時平は浄見の耳に口を寄せ
「ずっと、ひとりの少女の肌や声や身体を想っていた。彼女たちを身代わりにした。」
と吐息交じりに囁いた。
浄見はそれを聞くと全身に興奮が走った。
胸が締め付けられ、切なくなった。
時平にこれほど愛されていたと思うと死ぬほどうれしくなった。
自分がこれほどずっと求められていると思うと誇らしくなった。
と同時に、他の女性に対する時平の残酷な仕打ちに、有頂天になるほど歓喜する自分という人間が嫌いになった。
その冷酷さ、身勝手さ、独占欲に嫌悪を抱いた。
浄見は常々、他人を傷つけても平気な人間を軽蔑していた。
しかし、自分の胸に顔をうずめるこの人を、どうしても嫌いになることはできなかった。
他の人をどんなに傷つけても、他の人にとってどんなに悪人であっても、浄見にとってはたったひとりの愛しい恋人だった。
時平なしでは生きていけないと思った。
この愛しい人を誰にも渡したくないと思った。
『兄さまは私のもの』と。
時平は念入りに指で確認すると、ゆっくりと浄見の中に入った。
浄見は押し広げられていく違和感と、小さな血管が裂けるような痛みを感じた。
浄見の苦痛の表情に興奮が高まった時平が、律動的に動き始めると突き当たるたびに浄見は快感の声を漏らした。
全ての感覚がそこに集中し、時平のわずかな動きに浄見は敏感に反応した。
時平の動きが速まり、浄見に快楽の波が押し寄せ、肉体が細かく震え始めた。
浄見の間欠的な痙攣が時平を締め付け、至上の快感で頭が痺れた。
最後の波が二人を飲み込むと、時平がスッと離れた。
浄見は身をおこし自分のその部分からの出血をみて少し胸が痛み、何かを失った感覚と少しの後悔があった。
汗と体液にまみれた裸体を見て、行為中の乱れた自分の姿を思い出し、穢らわしいと思った。
下品なあられもない声を無意識に・無自覚に出したのを恥ずかしいと思った。
こんなにも自分を制御できないという事実が、浄見を不安にさせた。
時平の愛撫によって、自分では制御できない快感を生じ、いやらしい声を上げる女になった。
まるで下品な、淫猥な、好色な娼婦だと思った。
罪悪感が生じた。
自分に対して激しい吐き気を覚えたのに、時平の均整の取れた筋肉質の美しい裸体をみると、さきほどの快感を思い出し、興奮に襲われた。
時平が寝転んで腕を伸ばすと、浄見はそこに頭を乗せる。
時平は浄見の頭を胸に抱きしめ、ふぅと息を吐き
「やっと手に入れた。」
と呟いた。
浄見も時平の匂いを吸い込み、時平の背に手をのばし抱きしめると
「兄さま、大好き」
と呟いた。
最後までお読みいただきありがとうございました。
R15?R18?なやつはこれで終わり・・・かな?