EP32:番外編:開花前夜②
『はぁ?』と浄見の怒りは一気に沸点に達したが、有馬が勝ち誇った顔で浄見の方へ視線を送るので、ここで狼狽えてでていけば、有馬の思うツボだ!とぐっと我慢した。
椛更衣はそれを見て、『まぁ!』とおっとり驚いている。
時平が
「急ぎの用件とは何ですか?本当にこの頃忙しいので、手早く話してください。」
と扇を弄びながら有馬に言うと
「あら、この頃は一人をご寵愛で忙しくて、わたくしのことなどお忘れでしょう?わたくし寂しくってたまりませんの。でもいいんですの。今日は珍しい、美味しいお酒が手に入ったので一緒に飲みたかったのですわ。さあどうぞ」
と有馬が盃に酒を注ぐ。
時平は
「それは申し訳ないと思っていますが、そもそも、あなたもはじめから遊びだとわかっていたでしょう?」
有馬が時平ににじりよって胡坐をかいた腿に手を乗せ、時平の肩に頭をもたせかけた。
「それでも・・・遊びから始まる本気の恋もあるでしょう?とっくにお気づきだと思いますけど、わたくしが本当に愛するお方はあなただけですわ。」
と言いながら時平の下腹部に手を伸ばして動かした。
「あら!こんなにすぐに反応なさるということは、あの子とは何もしてないんでしょう?」
と驚いたようにつぶやくと、時平は有馬の腕をつかんで引き離し
「あなたには関係ないことです。」
「どうしてですの?あなたの事を愛していれば、あなたをこんな風に放っておくことなど考えられませんわ!あなたを満足させることもできない女など忘れておしまいなさいな。」
「用事とはこれですか?それならもう失礼します」
といって時平が立ち上がろうとすると、有馬がさせまいと時平の首にしがみついて
「わたくしなら、そのままで、あなたがそこにいるだけで、最後までして差し上げます。あなたは何もしなくていいわ。ただそこに寝ていらして!あなたに尽くして、最高の気持ちにしてあげます。」
浄見はその姿を見てギリギリと奥歯をかみしめるあまり、歯ぎしりの音が二人に聞こえやしないかと椛更衣をハラハラさせていた。
時平は首に回された有馬の腕をつかんで首から離すと
「あなたとどんなことをするよりも、伊予とただ一緒にいるほうが何十倍も楽しいのです。失礼する。」
と言い放った。
時平がザッと几帳をよけて出ていく音がした後、有馬が浄見と椛更衣のいる几帳を蹴倒して、
「さっさと帰りな!邪魔だよ!」
と怒鳴ったので、浄見と椛更衣はすごすごと素早く抜け出した。
浄見は椛更衣と別れた後、別の対にある自分の房に戻ると、小袖姿の時平が寝ながら待っていて、浄見に気づくと起き上がって
「遅かったね」
と微笑んだ。
浄見は時平を満足させていないと有馬に言われたことを気にして、時平に申し訳なく思った。
時平の前に座って首に腕を回し、浄見から時平の唇を吸った。
すぐに時平は浄見の背中を両手で支え自分の方へ抱き寄せると、唇を強く押し当て、舌で浄見の口中をまさぐった。
浄見は自分の舌を時平に飲み込まれそうに感じると頭がくらくらして気持ちよくなった。
浄見も一生懸命、時平のすべてを飲み込もうと必死になった。
唇が離れると浄見は自分の頬が赤くなっているのを感じた。
時平の胸の衣をはだけると、張りのある、少し盛り上がった、形のいい筋肉があり、浄見は美しいと思って惹かれるようにそこへ口づけていた。
時平がビクッと身を震わせ
「どうしたの?何があった?」
浄見は悩んだが
「有馬さんのところへ兄さまがいったのを、几帳の陰で見てたの。」
時平は驚いて
「どうしてそんなことを!」
「有馬さんに房事のテクニックを教えてと頼んだら、見せてくれるって言って。そこで隠れているようにと。」
浄見は恥ずかしくてうつむいた。
時平は浄見の下紐を解いて素肌に触り、浄見の小さい胸のふくらみを愛撫した。
浄見はまだ何も感じなかったが、時平が胸に唇を這わせた後、そっと吸うと浄見の全身に興奮が走った。
ゾクゾクとして下腹部が重くなったような気がした。
時平が唇を胸から頸に這わしながら、指で浄見の陰部を触った。
時平が『ん?』という表情をして
「浄見は覚悟はできてるの?」
と聞くと、浄見は急に怖くなって首を横に振った。
時平はホッとため息をつくと
「そうだな。まだ早いな。」
と言ったが、もう一度浄見の胸を吸って、浄見が吐息を漏らすのを見るとニヤリと笑ってごろりと仰向けになった。
浄見は起き上がって急いで衣の乱れを直し、下紐をしっかり結んだ。
「せめて、老人になる前にはできるといいけど・・・」
と、浄見に腕枕をしながら時平が眠りにつくと浄見は時平の匂いを目いっぱい吸い込みながら、静かに眠りに落ちた。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また、何か思いついたら書きます~~!