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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
297/505

EP297:竹丸と伊予の事件日記「誘惑の濁世(ゆうわくのじょくせ)」 その3

*****【竹丸の日記】*****


あれだけしつこくネチネチジトジト想い続けてたのに??


苦しそうに声を絞り出し

「浄見に他の男を知る機会を与えたい。幼いころから私に洗脳され、このまま妻になれば一生、他の可能性を知らずに過ごすかもしれない。それは可哀想だ。」


はぁ?!

カッコつけてるけど、単に、四郎様や泉丸(せんまる)から

『幼女に恋愛感情??!!何コイツキモっ!!』

って思われるのがイヤで、それを見た姫からも

『やっぱりコイツキモっ!』

って思われるかもしれないって心配してるのでは?!


こう見えて、気の小さい、器の小さい人なんだよなぁ~~~!

昔から知ってたけど。


世間では冷酷非道(れいこくひどう)無共感人間(サイコパス)と思われてそうだけど案外、おそらく本人自覚ないけど、常識的で家族思いで優しい、外聞を気にする、ハメを外せない平凡な人なんだよなぁ~~。


冷ややかな薄目の横眼で見つつ

「じゃあ、そう姫に伝えておきますねぇ~~~~!でも、伝えるまでも無くもう、アレかもしれませんねぇ~~~。ほら、四郎様とフツーに付き合ってて、今も枇杷(びわ)屋敷でイチャついてたりして!」


頭を抱え込んで項垂(うなだ)れてる若殿(わかとの)の姿にニヤッとほくそ笑んだ。


しばらくは(へこ)んだままだろうと考えて、主殿を立ち去ろうとすると、


サッ!


顔を上げ、いきなり


「父上が日記に記したという、この三首の和歌(うた)に、どんな意味があるというんだ?」


呟いた。


復活っ?(はや)っっ!!

驚いたけど、確かに気になる!

大殿(おおとの)和歌(うた)の通り以外の意味を込めて日記に記したという事ですか?」


ウンと頷き

「それにこの日付の意味は?和歌(うた)を詠んだ日と内容に何か関係があり、意味が込められているというのか?」


意味が込められてる・・・?

う~~~~ん。

声に出し考えてみることにした。

ブツブツとひとりで呟く。


「ええと、一首目は

(はる)()の いともかしこき (ひかり)なる しのぶもぢずり みちのくにあり』

・・・・元慶(がんぎょう)八年(884年)と言えば、私はまだ四歳です。この年に何かあったんですか?

しのぶもぢずり・・・といえば、乱れ模様の()(ごろも)・・・あっ!春に陸奥(みちのく)で何か乱れたんですかね?乱があったとか?そうだ!蝦夷(えみし)の反乱?」


若殿(わかとの)は黙ったまま考えこみ、何も答えない。


「次の和歌(うた)は、

(つね)もなき (なつ)草葉(くさば)に ()(ひと)を (いのち)とたのむ (せみ)のはかなさ』

貞観(じょうがん)十七年(875年)と言えば、私が生まれる前です!何があったのか全く分からないですね。

蝉という名前の人が、夏とか草葉とかいう名前の人に、命乞いをしたのに儚くなった、つまり殺された?とかですかねぇ。」


「・・・・・・・・」


無視っ???!!!

イラっとしたけど


「三首目は、

宿(やど)りせし 花橘(はなたちばな)も ()れはてん (かれ)ほととぎす (こえ)()えぬらむ』

仁和(にんな)四年(888年)は私が八歳の頃です!ちょうど堀河邸(ここ)に従者として雇われたあたりですかね。

あの頃は初々しかったなぁ~~~!!

懐かしいなぁ~~~~!

ホラ!私ってまだ子供でカワイイ従者だったでしょ?

同僚から言われませんでした?

カワイイ従者で羨ましい~~~~!的なこと!?」


若殿(わかとの)

「何かと厄介(やっかい)そうな子供を連れてるな、とよく言われたもんだ。」


こんな時だけシレっと答えた。


アレ?

あることを思い出し

「この和歌(うた)って、寛平(かんぴょうの)御時后宮歌合(おんとききさいのみやうたあわせ)(寛平初年:889年)の際に、大江千里が詠んだ

『やとりせし 花橘(はなたちばな)も かれなくに なとほとときす こゑたえぬらむ』

(ほととぎすが宿っていた花橘(はなたちばな)が枯れたのなら仕方ないが、そうでもないのにほととぎすの声が聞こえなくなったのは、どうしてだろうか)

和歌(うた)に似てますね?

大殿(おおとの)の方は『ほととぎすが宿っていた花橘(はなたちばな)が枯れてしまったので、ほととぎすの声が途絶えてしまったんだろう。』って意味ですけど、書いてある日付を信用すれば、大江千里の詠む一年前ってことで、大殿(おおとの)の方が先に詠んだんですかねぇ。意味も真逆ですし。何か関係あるんでしょうか?」


私の質問にガン無視の若殿(わかとの)が突然


「明日にでも泉丸(せんまる)に会う必要があるな。」


ボソリと呟いた。

(その4へつづく)

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