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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
286/505

EP286:竹丸と伊予の事件日記「断絶の夢路(だんぜつのゆめじ)」 その7

*****【伊予の事件簿】*****


あっ!説明するのを忘れてたっ!!

「違うのっ!!一年前まで、付き合うまでは兄さまとは何もしてないわっ!!当たり前でしょっ!!時平様は立派な、良識のある方よっ!!子供にそんなことする人じゃないわっ!!誤解しないでっ!!」


キッパリと強く主張したけど、微妙にひきつった笑顔を返された。


まぁね~~。

誤解されても仕方ないかぁ。

私は別に構わないけど、兄さまは気にしてるし。

倫理的に、とか道徳的に、とか。


はぁ~~~~。

でも兄さまが気にして、弱気になって、また私を拒絶したらどーしよーーー???!!!

心配。


兄さまと馬に乗りながら、忠平(ただひら)様が『呪物の競売』会場から長櫃(ながびつ)ごと私を北の対の塗籠(ぬりごめ)へ運んでくれたことを話した。


塗籠(ぬりごめ)にいるとき、泉丸(せんまる)と兄さまの会話も聞こえたから、浄見という名前も忠平(ただひら)様に知られたし、幼いころから宇多上皇(とうさま)の別邸で兄さまに育てられたってことも知られてしまったの。」


揺れるたびに、私の背中に狩衣の胸が当たる。

男らしい体温と汗の匂いを感じると、

勝手に鼓動が速くなる。


内裏の門につくと、兄さまが先に馬を降り、腰を支えて降ろしてくれた。


首を傾げ、鼻にかかった声で

「次の宿直(とのい)はいつ?いつ一緒に過ごせる?」


目を輝かせて、ジッと兄さまの目を見つめる。


憂鬱そうに薄墨色の目元をひそめた。


「しばらく、行けない。逢瀬は無理だ。」


ビックリして焦って問い詰めた。

泉丸(せんまる)に言われたから?子供のうちに手を出してたとか!?そんなの嘘だし、やましいことは何もないんだから気にすることないじゃないっ!!」


ますます苦しそうに眉と口元をゆがめ

「いや、やっぱり、ダメだ。不適切だと思う。我慢しよう。もう少し浄見が大人になるまで。」


イラっとして

「は?もう大人よっ!!今ダメならいつになればいいって言うのよっ!!」


叫びながら、胸に飛び込み、両手で兄さまの頬を挟んで引き寄せた。


汗ばんだ冷たい頬。

鋭い、硬い顎の感触を皮膚の下に感じた。


唇に、親指で触れる。

薄い、柔らかい、湿った

肉体の一部。


温かくて

愛おしい


指先に奥の親密な部分を予感し

甘美な興奮が溢れる。


人さし指でも触れ、奥の感触を確かめる。

指に唾液がまとわりつく。


口づけしたい

飲み込みたい


陶酔の予感で震える。


きっと、私は物欲しそうな目をしている。

誘惑しようと必死の。

獲物を狙う狩人のような。


グッ!


背伸びして、ゆっくり

唇を近づけ


唇を吸った。


ビクッと身を震わせ、兄さまが素早く顔を横に逸らし

唇を離した。


ズキンッ!


あからさまな拒絶に

ショックで胸が締め付けられた。


汚いものに触れたかのような

過剰な反応に傷ついた。


兄さまは何も言わず背中を向け、馬にひらりと飛び乗ると

「気持ちの整理ができるまで。もう少し考えさせてくれ。・・・・文を出すから。」


言い終えると、馬の腹を蹴り、走り去った。


イヤな予感がする。

付き合う前みたいに、私を拒絶するつもり?!


ムカムカ・イライラしながら宮中で女房の仕事をしつつ数日が経った。

あの日以来、初めて兄さまが文を送ってきた。


(ゆめ)にたに (かよ)ひし(みち)も ()ててなむ ()しやその()の 白菊(しらぎく)(はな)

 時平』

(夢で何度も通った道さえも、今は朽ち果てて無くなって欲しいと願う。あの夜に見た白菊の花も忘れたい。)


はぁ?

本気で私を突き放そうとしてるっ?!

そうはさせないからっ!!


すぐに文を書いて送り返した。

(わす)られぬ 白菊の花 (おも)()に (かよ)ひし(ひと)は (ゆめ)()えつつ

 伊予』

(忘れられない白菊の花を、思い出しながら寝ています。何度も通ってきた人を夢に見ながら。)


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

呪物コレクターの人って、呪われて死んでも悔いはないんでしょうかね?

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