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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
282/505

EP282:竹丸と伊予の事件日記「断絶の夢路(だんぜつのゆめじ)」 その3

*****【竹丸の日記】*****


泉丸(せんまる)は相変わらずの美貌で後れ毛と金と真珠の耳飾りが揺れて頬を隠し、口角の上がった美しい唇に笑みを(たたえ)えてる。

坊主に

「ではそのようにお願いいたします。」

にこやかに呟いた。


ウットリ見とれそうになったけど、『アレ?』とどこかに違和感を覚えた。

・・・・何だろう?


考えてるうちに若殿(わかとの)泉丸(せんまる)の前にスッと姿を現した。

泉丸(せんまる)どの。お話があるんですが。」


坊主と泉丸(せんまる)は突然、目の前に飛び出した若殿(わかとの)に驚いたように目を見開いた。


泉丸(せんまる)が気を取り直し、愛想笑いを浮かべ

「これは、大納言殿。突然のことで驚きましたな。では僧都(そうず)、ここで失礼して、大納言と話がありますので。」


ペコリと坊主に会釈し、坊主も会釈を返して東門の方へ廊下を渡っていった。

泉丸(せんまる)が北の対の屋へ御簾を押して入り、続いて若殿(わかとの)が入った。


う~~~~ん、どうしようかな・・・・。

中に入る方がいいか、ここで盗み聞きしてる方がいいか・・・。

考え込んで御簾の前の廊下でジッと座ってると、


トントン!


肩を叩かれビクッ!として振り向くと、四郎様が立ってた。


四郎様とは若殿(わかとの)の弟君・忠平(ただひら)様のこと。

若殿より九つ?ぐらい年下だけど、顔はそっくり。

色黒で健康そうなところと、八方美人で誰にでも愛想がいいところが若殿(わかとの)と似てない。

あとマメで気が利くところも若殿(わかとの)の上位互換。


「竹丸?ここで何してる?」


「四郎様こそっ!!」


宇多帝の姫が誘拐されたことを伝えようとしたけど、いや待てよ・・・・と考え直し

「ええとぉ、今日、伊予の姿をどこかで見かけましたか?例えばぁ、この屋敷内で、とか?」


四郎様はサッ!と顔が曇り

「伊予が行方不明なのか?この屋敷内でか?もしや無理やり拉致されたのか?」


あぁ~~~っっ!!

四郎様が誘拐犯人だった場合を考えて、曖昧に質問しようと思ったのに!

あっさりバレてしまった!!

やっちまった!!


私の様子を見て、四郎様は急いで主殿の方向へ引き返した。


ので、御簾の中の話を盗み聞きする仕事(タスク)に戻った。


御簾の中からボソボソ声がする。


「・・・・伊予?この屋敷に伊予を隠したと言いたいのか?」


泉丸(せんまる)の声。


「それなら好きなだけ探せばいい。どこに入っても構わないよ。」


ウンザリして肩をすくめた泉丸(せんまる)の姿が頭に浮かんだ。


若殿(わかとの)が苛立たし気に御簾を跳ね上げてドシドシと足音を立てて出てきた。

(くりや)と物置も探すぞ。」


「何なら井戸の中や縁の下も探さないとですねぇ。」


怒りで青筋を立てた顔でギロっと睨まれた。


時間をかけてじっくり、(くりや)や物置、井戸の中から縁の下と隅々まで探し回ったが、宇多帝の姫は見つからなかった。


「やっぱり泉丸(せんまる)が誘拐したんじゃなかったんですよぉ~~きっとぉ~~~!」


若殿(わかとの)が顎に指を添えて少し考え

「残る場所は一つだな」


スタスタと主殿に歩いていった。


えぇっっ???!!

主殿??!!

今も『呪物の競売』やってる最中ですよ!!

どこをどーやって探すんですか?!!

たくさん人がいるのに、誘拐した人をわざわざそんなところに隠すかねぇ・・・。


若殿(わかとの)(とばり)を押して主殿に入り、人々の間を縫って歩いて、呪物を持って説明してる司会の黒水干(くろすいかん)男のところまでサッサと行き着いた。


「おいっ!!何だお前は!!何をするつもりだっっ!」


黒水干(くろすいかん)男がそれ以上進むのを引き留めようとするのを無視して、一番奥の龍が描かれてる屏風の後ろを覗きこんだ。


あぁっ!!

なるほどっっ!!

まさか大勢の人が見てるところに、大事なもの(誘拐した人)を隠すとは考えにくいよね~~~!!

死角?盲点?

よく考えたなぁ~~~!

へぇ~~~~!

感心した。


なのに、若殿(わかとの)はガッカリした顔でウウンと首を横に振りながら戻ってきた。


はぁ?

推理が空振り?

若殿(わかとの)にしては珍しいっ!


「いなかったんですか?じゃあやっぱり姫はここにいないんですよぉ~~~!誘拐されたわけじゃなく、今ごろ内裏に戻ってるかもしれないですよ!」


若殿(わかとの)はまだ諦めきれないといった風に

「もう一度、泉丸(せんまる)と話してみる。」


北の対の屋へ向かった。

(その4へつづく)

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