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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
280/505

EP280:竹丸と伊予の事件日記「断絶の夢路(だんぜつのゆめじ)」 その1

【あらすじ:東市で買い物している最中、後ろから誰かに襲われたと思ったら気を失ってた。気が付くと真っ暗い場所に連れてこられてたけど、ここはどこ?相変わらず無防備な私は、時平様の心変わりを今日も必死で食い止める!】

*****【伊予の事件簿】*****

今は、899年、時の帝は醍醐天皇。

私・浄見と『兄さま』こと大納言・藤原時平(ふじわらときひら)様との関係はというと、詳しく話せば長くなるけど、時平様は私にとって幼いころから面倒を見てもらってる優しい兄さまであり、初恋の人。

私が十六歳になった今の二人の関係は、いい感じだけど完全に恋人関係とは言えない。

何せ兄さまの色好みが甚だしいことは宮中でも有名なので、告白されたぐらいでは本気度は疑わしい。


*****【竹丸の日記】*****

私の名前は竹丸(たけまる)

歳は十九になったばかりだ。

平安の現在、醍醐天皇の御代、政権首位(トップ)の座につく(いち)大臣(おとど)と言えばこの人!大納言(だいなごん)藤原時平(ふじわらときひら)様に仕える侍従である。

 私の(あるじ)若殿(わかとの)・時平様はというと、何やら、六歳ぐらいの小さな姫に夢中・・・・だったのは過去のこと。

現在は十六歳の妙齢の女性に成長した宇多帝の姫とイイ感じになったと思ったのも(つか)の間、宇多帝の姫が『複数の恋人を持つ』宣言をしたからさぁ大変!

何やら不穏な空気が漂い、張り詰めた空気(ピリピリムード)に満ちる時平様の剣幕という雷はいつどこに落ちても不思議じゃない!

*****【竹丸の日記】*****


ある日、宿直(とのい)のハズの若殿(わかとの)が夕方ごろ堀河邸に帰ってきた。

私は侍所(さむらいどころ)で待機して、夜は屋敷内外を見回りしたり、来客や文使いに対応したりする役目だったが、暑くてダルくてゴロゴロしてた。

寝っ転がってる私を見て

「出かけるぞ!ついてこいっ!」


いつの間にか宿直衣(とのいぎぬ)狩衣(かりぎぬ)に着替えた若殿(わかとの)が鋭く命じた。


馬を並んで歩かせながら

「どこへ行くんですかぁ?急ぎの用件ですか?」


夕餉前なので力が出ない!のでボソボソ話しかける。


若殿(わかとの)は真剣な顔で声に緊張を含み

「浄見が昼頃、東市へ買い物に出かけたまま、内裏へ帰っていないそうだ。どこにも寄らずまっすぐ宮中へ帰る予定だったのに。」


雷鳴壺でイチャつこうとしたらいなかったのね!

納得。


「四郎様の枇杷(びわ)屋敷じゃないんですか?たしか四郎様も宇多帝の姫の恋人の一人ですよねぇ。」


若殿(わかとの)の傷ついた半泣きの顔が見たくてワザと嫌な事を言ってみたのに、顔色一つ変えず


「違う!今日は宿直(とのい)だと伝えてあるから雷鳴壺で待っているはずだった。」


あゥッ!!!

なんかこの頃、姫に対してやけに強気な態度に戻ったなぁ。

つい先日まで、ちょっとした冗談に泣きべそかいてたのに!

残念っ!

楽しかったのになぁ~~!

(いじ)めるの!


「で、これからどこへ行くんですか?当てはあるんですか?」


「お前は泉丸(せんまる)が営業する『比翼連理(ひよくれんり)』の場所を知っているだろ?まずはそこへ行ってみる。案内してくれ。」


はぁ?

なぜ?

今さら恋人探し?

「いいですけど、営業時間は終わってるんじゃないですか?」


背筋が凍り付きそうな冷たい目で睨み付け

泉丸(せんまる)が浄見を誘拐したかもしれんっ!あいつは私と浄見を引き離そうとしていると浄見が言ってたんだ。」


う~~ん。

確かに、群盗討伐から帰ってきた泉丸(せんまる)に、宇多帝の姫を牛車に呼び出してくれと頼まれ、その通りにしたとき、牛車の中から怒鳴り声が聞こえたなぁ。

姫は『泉丸(せんまる)を信用するな』と言ってたから、あのとき何かあったのかな?

泉丸(せんまる)についてすべてを知ってるわけじゃないけど、宇多帝の姫を傷つけるようなことするとは未だに考えられない。

何かよっぽどの理由があるの?

姫を嫌ってるとか?


わがままで内弁慶(うちべんけい)的に気が強くて他人に依存的、と欠点を数え上げればキリがないくらいダメダメ女子(おなご)だけど、純粋で単純で善良だという点ではいい人。

見栄(みば)えのいい外見と大人しそうな第一印象に(だま)されて、男はつい扱いやすそうだと錯覚して口説きにかかるけど、実は嫉妬深いし、卑屈なところもあるからめんどくさい。

若殿(わかとの)は出会った時に無条件に刷り込まれて『宇多帝の姫を好き』だと思い込んでるけど、冷静に見ると、もっといい女子(おなご)はこの世にたくさんいる。


とりあえず、さっさと姫を見つけるべく馬を駆けさせ、京の北西に位置する『比翼連理(ひよくれんり)の仲介』業を営む、泉丸(せんまる)の屋敷に到着した。


二人で侍所(さむらいどころ)を訪ね、私が声をかけようとすると若殿(わかとの)がグッと腕を掴み引き留めた。


対応してくれた警備の下人に向かって

「ええと、(あるじ)に荷物を移動するよう命じられたんだが、今どこにあるんだ?」


ワケの分からないことを()く。

(その2へつづく)

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