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EP28:番外編:ねやのひまさえ②

浄見は

『兄さまは口では私を好きだというけど、やっぱり本心では丹後のような豊満な女らしい身体の人が好きなんだ。』

と悔しくなった。

『私と恋人関係になる前、付き合っていた女房は全部、成熟した色気のある女性だったというもの!やっぱり・・・やっぱり男の人はみんな浮気者だし、胸とお尻が大きい人が好きなんだ。』

と絶望し、座り込んで泣き出した。

どう頑張っても変えられない体の特徴のことで時平に拒絶されたように感じ、劣等感や絶望でこれ以上耐えられないと思った。

気が付くと時平が浄見の目の前にいて、いつものように、顔を両手で包み親指で涙をぬぐった。

浄見の顔を上にむかせ、目を見つめて

「どうして泣くの?伊予」

「兄さまこそどうして?どうして私なの?私で本当にいいの?今までの恋人は私と正反対の人ばかりだったのでしょ?本当は丹後のような人が好きなんでしょう?」

時平は今日一番、困った顔をした。

「私が本当に好きなのは、伊予だけだよ。」

とゆっくり、一言一言をかみしめるように答えた。

「じゃあどうして前の恋人はみんな・・・ああいう人なの?」

(浄見には屈辱的すぎて、豊満なとか胸の大きいとかは言えない)

時平はこちらも歯切れが急に悪くなり、しどろもどろになった。

「だから・・・前にも言ったように、伊予と正反対の女性をわざと選んで付き合っていたんだ。」

と言った後、浄見の耳元で

「浄見はまだ子供で、愛していても、何もできないし、自分が偏った趣味の人間ではないと自分に証明する必要があった。」

と囁いた。

浄見は、あまり意味が分からずキョトンとしたが、とりあえず涙は止まった。

時平は

『あの時は本当に浄見のことをあきらめようとしていた』

と考えたが浄見には何も言わなかった。

今でも思い出すだけであの時の胸の痛みは甦るし、本当に浄見をあきらめていたら今の自分は抜け殻だっただろうと思った。

あんな砂を噛むような毎日に、生きる意味が一体どこにあるのだろうと。


 時平は、今の自分の幸せを思い出し、浄見を胸に抱きしめた。

浄見は時平が、幼いころの浄見に対する気持ちを恥ずべきとする態度を不思議に思っていた。

浄見は幼いころから、いや、物心ついたころからずっと時平が好きだった。

夢は時平の北の方になることだった。

時平も同じ気持ちでずっといたなら、それは浄見には嬉しいこと以外の何物でもないのに、どうして時平はそれを恥じているのだろう?

そんなことを考えながら、時平に抱きしめられていると、浄見はうっとりした幸せな気持ちになった。


 その二人をそばで見ていた丹後は嫉妬で怒り狂った。

「仲がいいのを見せつけるのはそちらの勝手ですけどもねぇ。時平様?あなたがつれなくしている数多の女はみんな伊予を恨んでいるんですよ。

伊予さえいなければ、前のようにわたくし達も愛してくださると思ってね。」

時平は浄見を胸から離し、丹後の方を向いて

「君たちには悪いことをしたと思っているが・・・」

丹後は言葉を遮って早口で

「今更何を言ってるの?覚悟するといいわ!嫉妬に狂った女がどれだけ怖いか!見ていなさい!その女が苛め抜かれて、傷つけられて、ボロくずのように捨てられるところを!いい気味よ!」

とまくしたて、高笑いした。

浄見はカッとして

「何よ!負けないからね!私だってやり返してやる!」

と言い返したが、腕力でも迫力でも丹後が上なのは一目瞭然だった。

時平は真剣なまなざしで丹後を見つめスッと立ち上がると丹後の腕をとって引き寄せ、丹後に口づけた。

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