表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
254/505

EP254:竹丸と伊予の事件日記「鞍替えの群盗(くらがえのぐんとう)」 その3

*****【竹丸の日記】*****


ブゥォ~~~~~!!

ヴゥゥォォ~~~~~~!!


法螺(ほら)貝が鳴り響いた。

見通しの良い田園地帯を抜け、ちょうど林に差し掛かった辺りだった。


馬を歩かせていた我々は、若殿(わかとの)

「行くぞっ!!」

の声で一斉に馬を駆けさせた。


砂埃(すなぼころ)を上げ、法螺(ほら)貝の音が聞こえた場所へ駆けつけると、布で口から下を覆った男たちが、()が曲がった刀を構え荷を積んだ馬にジリジリと近づいていた。

馬を御す人夫(にんぷ)や守る警備の雑色を蹴散らそうと


「大人しく荷をよこせっ!切り殺すぞっ!」

怒鳴りつけた。


そばには馬上から様子を見守る一味の首領らしき者もいて、我々が駆けつけたのに気づくとその首領が

「おいっ!国検非違使(くにけびいし)だっ!逃げろっ!」


叫ぶと群盗は散り散りに逃げ始めた。


対する我々は、藤原利仁(ふじわらとしひと)殿やその従者たち、平良兼(たいらよしかね)殿とその従者たちと、健児(こんでい)(国内の郡司・富豪百姓のうち弓馬に通じた武勇輩、帰順して全国各地に移住させられた蝦夷(えみし)の後裔たる俘囚(ふしゅう))たちと私と若殿(わかとの)綿(わた)丸の総勢十二人の朝廷軍である。


群盗を一人でも多く捕えようと襲い掛かった。

逃げた群盗を馬上から次々と弓で射たり、反撃する群盗と切り結んだりの大乱闘。

私は腕っぷしに自信がなかったので、みんなの乗り捨てた馬を木につないだり、荷を運ぶ人夫(にんぷ)たちを集めて、刀を構えて一応(いちおー)守ってるふりをしたりで場を取り繕ってた。


若殿(わかとの)藤原利仁(ふじわらとしひと)殿は早々に馬を駆って逃げた群盗の首領を追いかけて捕まえたらしく、縄で上半身をぐるぐる巻きにされ後ろ手を縛られた首領が引っ立てられて帰ってきた。


藤原利仁(ふじわらとしひと)殿の従者たちが二人捕まえ、平良兼(たいらよしかね)殿たちも二人捕まえたが、国内で招集した健児(こんでい)たち三人は地元民で有利なハズなのに一人も群盗を捕えなかった。

・・・・まぁ私も綿(わた)丸も誰も捕まえてないから他人(ひと)のことは言えないけど。

怖いしっ!!反撃されたらどーするのっ!


ここは、上野国(こうずけのくに)から京へ官物を運ぶ東山道(とうさんどう)の道中。

これから捕まえた群盗を上野国国府(こうずけのくにこくふ)に連行する。


 十年ほど前(889年ごろ)から坂東において、中央へ進納する官物を強奪するといった「群盗蜂起」が頻発した(僦馬(しゅうば)の党・寛平・延喜東国の乱)。朝廷はこれに対処するため、群盗を積極的に鎮圧しようとする「追捕(ついぶ)官符」を発出し、国内の武勇者を追捕(ついぶ)使の指揮下に入ることを義務づけた。

今回、上野国(こうずけのくに)周辺の官物強奪を繰り返す群盗を討伐するため、朝廷は「追捕(ついぶ)官符」を発出し国司の中から追捕使(ついぶし)を任命し、国内の武勇者を招集し軍隊をつくって討伐するように命じた。

若殿(わかとの)はもちろん中央官人で大納言だから、身をやつして上野国(こうずけのくに)国司(こくし)追捕使(ついぶし)藤原平次(ふじわらへいじ)と名乗ることにし、ついでに京の武官・藤原利仁(ふじわらとしひと)殿を招集して一緒に東国へ下った。

東国へ到着すると各国へお触れを出し、坂東で武勇の名高い健児(こんでい)や腕に覚えのある在地豪族などを集めた。

(その4へつづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ