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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
251/505

EP251:伊予の事件簿「虎斑竹の花(とらふだけのはな)」 その8

幼いころからずっと、

兄さまと

結ばれることを夢見てた。


こんな風に?


違う!!!


・・・・けど、

開き直った私は、立ち上がり、さっさと(うちぎ)(ひとえ)を脱ぎ、袴を脱ぎ捨てた。


小袖の紐をほどき、前をはだけ、衣を肩から滑り落した。

戸惑ったように手を止めこちらを見てボンヤリと立ちすくむ兄さまと

全裸になった私は

向かい合い、にらみ合った。


キッ!

睨み付け

「さあどうぞ!これで心置きなくあなたのことを忘れられるっ!尼にでも何でもなれるわっ!!」


怒りか興奮か、瞳をギラつかせ腰を引き寄せ唇に噛みついた。


素肌の胸が(はだ)けた硬い胸に触れ快感を引き起こした。

腰をなでる手やお腹の脇を掴む指が動くたびに喘ぎ声を漏らした。


しゃがみこみ、胸の先端を舌で舐められた後、吸われると

感じたことのない快感が全身を貫いた。

思わず、うなじや耳を掴みグッと指に力が入った。


長い指で下腹部を刺激され、胸を口で刺激されながら、

何度も快感の絶頂に上り詰めようとした。


そのたびに寸前で動きが止まる。


何度目かのとき、我慢しきれずに

荒い呼吸のまま喘ぎ

「なぜ、入ってくれないの?最後までしてくれないの?」

呟いた。


全力疾走した後のように息を切らせ

「ダメだ。最後までしたら、逃げてしまうつもりだろう?

それなら絶対にしない。

浄見を手放さない。

忘れさせない。させるものかっ!」


動きが激しさを増し、恍惚が花開き、痺れと、やるせなさを、あとに残して果てた。


何度も引き起こされた快感の渦が、体中から蜜のような液体を溢れさせた。


敷いていた衣がぐっしょり濡れているのや、体中に染みついた兄さまの匂いに幸福感と恥ずかしさを覚えた。


おずおずと小袖をまとい、下紐を結んだ。


背を向けて寝転んでいる兄さまに

「時平様。あなたのことがずっと好きです。

この先も、きっと忘れられません。

ですが、もうお会いしたくありません。」


仰向(あおむ)けに寝がえり

「妻たちと離縁する。浄見を失うなら、未来なんていらない。全て壊しても構わない。」


「脅しですか?」


「本気だ。浄見のいない世界に生きてる価値はない。」


フフフと可笑しくなって

「私がいなくても、平気だったでしょ?左中将(さちゅうじょう)様と結婚させようとしてたでしょ?今更そんなの信じないわ。」


上半身を起こし

「それならそのまま放っておいてくれればよかったんだ!甘い夢を味わせておいて取り上げるぐらいならっ!」

怒鳴った。


(せつ)なげな苦痛の表情を浮かべ

手を伸ばした。


頬に触り、親指で涙をぬぐいながら

「竹がなぜ一斉に花咲くか知ってる?」


ウウンと首を振る。


「地下では根がつながっているから、別々に見えて、花が咲く竹は全て一つの生き物なんだ。

私たちみたいだろ?」


「・・・・・離れていても、心はつながってるってこと?」


兄さまは少し微笑んだ。


「皆には別れたと言っておこう。廉子(やすこ)にはもちろん、周囲の目がある場所ではお互い無関心でいよう。たまに、こうして見つめ合うだけでもいい。何もしなくてもいいんだ。あの頃みたいに。黙って見つめ合うだけでいい。」


あの頃のように?

見つめ合うだけで幸せだった?


苦しみも喜びも

もっと単純だったころ。


その頃に戻れるなら・・・・



ボンヤリと頭が痺れ

何も考えられなかった。

ただ、無意識に、

うんと頷いていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

虎斑竹(トラフダケ)は虎斑菌という菌類に寄生されて特徴的な黒い斑紋を呈するようになったものらしいですから、花は咲かないのでしょうねぇ。

珍重され伐採規制され大事にされているけど、病に侵され花は咲かない、という悲劇的な側面に感慨深(かんがいぶか)いものがあります。

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