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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
246/505

EP246:伊予の事件簿「虎斑竹の花(とらふだけのはな)」 その3

間延(まの)びした声で御簾をめくって竹丸が入ってきた。

水干、括袴(くくりばかま)はただでさえダブダブでゆったりしてるから、そうは見えないけど、昔から竹丸はムチムチの『わがままボディ』。

大人になって声変わりし、低くてよく響くいい声になったけど、それ以外は子供の頃と同じ。

目がトロンとした二重で、頭が大きいところも同じ。

幼馴染と言ってもいいから、私にとっては兄さま、乳母やの次に一緒にいて安心できる人。


「そこに座って!」


円座を指さす。


竹丸がヨッコイショと座った途端

淡竹(あわたけ)って貴族の学生のこと知ってる?茶々(ちゃちゃ)が付き合うかどうか迷ってるの!」


欠伸(あくび)をしながら

「ふぅわ~~~ぁ!誰?聞いたことないですよ~~~そんな人の噂は。これで話は終わりですか?じゃあ帰ります。」

立ち上がろうとする。


「ちょっ!!ちょっと待ってよ!淡竹(あわたけ)がどんな人かを知りたいんだけど、何か方法を考えてっ!!」


う~~~んと腕を組んで目をつぶって考えてる。

フリ?

眠ってる?

しばらくしてハッと目を見開き

泉丸(せんまる)の営業する『比翼連理(ひよくれんり)』を訪ねて、淡竹(あわたけ)のことを聞いてみましょう!彼らは下調べしてるだろうから、色んな貴族や姫たちの情報を持ってるのでは?」


ナイスっ!!

確かにそーかもっ!!

でも、泉丸(せんまる)って、『牛車の女子(おなご)』を企んだ黒幕かもしれないし、胡散臭(うさんくさ)い。

けど、他に方法は無いし・・・・


「そうね!そうしましょっっ!」


いつものように、水干(すいかん)(くく)(ばかま)を着て、角髪(みずら)を結った少年風侍従姿で一緒に出掛けた。


比翼連理(ひよくれんり)仲立ちします 右京一条四坊九町 泉丸(せんまる)


って名刺をもらったから、住所はわかってるし!

竹丸ももらったらしいけど。


片道七里(4.6km)ぐらいの道のりを歩いた。


「最近、大内裏の竹林で竹の花が咲いたらしいですね。六十年とか百二十年に一度しか咲かないらしいです。竹林一帯が一斉にそろって咲くから不思議なんですってねぇ~~~」


「へぇ~~~!・・・・・」


相槌(あいづち)を打ちながら、『最近の兄さまはどうしてる?』


って聞きたかったけど、ためらっているうちに竹丸が自分から話してくれた。


兄さまは元気で、ちょっと不機嫌なことが多いけど、私が()けてることにハッキリとは気づいてないみたい。

毎日、廉子(やすこ)様の元へキチンと帰ってるって。

ホッとしたような、寂しいような。


泉丸(せんまる)の屋敷は立派な寝殿造りで、東門から侍所(さむらいどころ)へ行くと、その間に大勢の若い男女が並んで順番を待ってた。

竹丸が侍所(さむらいどころ)の縁から御簾のかかった母屋に向かって

「ごめんください~~!あのぉ~~!泉丸(せんまる)と知り合いなんですけどぉ~~!話がしたいんですけどぉ~~!」

大声で叫ぶと、御簾がかかった母屋から侍女がでてきて

「『比翼連理(ひよくれんり)』の仲立ちをお望みですか?それなら外で並んで順番をお待ちください」


「違います~~!泉丸(せんまる)の知り合いです~~!ついでに大納言様の大事な姫君も一緒ですからと伝えてください!」


侍女は不思議そうな顔をして奥へ下がった。

戻ってきた侍女が

「どうぞ」

と上がらせてくれ、私たちは侍女について主殿へ渡った。


侍所(さむらいどころ)の御簾の中を目を凝らしてみると、屏風と衝立と几帳で区切った空間がいくつかあり、それぞれで面接?が行われてるみたい。


主殿に入ると、泉丸(せんまる)がウロウロと歩きながら待ってて私たちを見ると

「よう!本当に来たんだな!恋人が欲しいのか?二人とも?」

手をヒラヒラさせて軽口をたたく。


今日は艶のある黒に金で唐花模様が刺繍されてる水干と(そろ)いの膝下丈(ひざしたたけ)括袴(くくりばかま)、銀と真珠の耳飾り、後れ毛を頬にたらし、さげみづらで両側に髪を束ねた女性的な装い。

見る度に睫毛の長さが伸びてる気がするのは私だけ?

それとも睫毛を長く見せるモノでもつけてるの?


隣でポカンと口を開けて見とれてる竹丸を肘でつつき、抜け出た魂を体に戻してあげた。


「違うの!淡竹(あわたけ)という貴族がどんな人かを教えて欲しいの!友達の女房がその人と付き合っていいかを悩んでるの。」


『座って!』と身振りされ、畳の敷いてある場所に座ると

「ちょっとそこで待ってて。釣書(つりがき)を持ってくる。」


屏風の裏に入り、ガサゴソと書類を持ってきて

淡竹(あわたけ)?あぁ、そいつはやめといたほうがいい!今まで文を届けた女性の数が五十は超えてる。よほどの遊び人だよ!」


その時、庭の方から

「おいっ!!『比翼連理(ひよくれんり)』の(あるじ)を出せっ!!」


「ここかっ!出てこいっっ!!責任者っ!!そこにいるんだろっ!」


「そうだっ!!出てこいっ!!お前のせいで(ひど)い目に遭ったんだぞっ!!」


口々に叫ぶ男性の声がした。

(その4へつづく)

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