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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
245/505

EP245:伊予の事件簿「虎斑竹の花(とらふだけのはな)」 その2

う~~~ん。

何て言おう?

『牛車の女子(おなご)』が廉子(やすこ)様だったってことは言わないほうがいいよね?


「うん。それで、もう、大納言様とは、いいかなって。」


影男(かげお)さんの三白眼の黒目が大きくなり、眉が上がり、明らかに驚いた表情で

「本当に別れたんですか?なぜ?大納言は了承してるんですか?それともあなたのなかで一方的に嫌になったんですか?」


嫌になった?

まぁ、そうかな・・・・

ついモゴモゴしてしまい

「ええと、嫌とかじゃなく、他に、もっと夢中になれる人がいないかなぁ~~~って。恋人や妻のいない人で。」


影男(かげお)さんがムッとし

「あなたの周りには『いい男』がいないとでも?」


上目遣いで首を(かし)

影男(かげお)さんが『イイ男』だって言いたいの?」


真っ赤になって照れながら

「いいえっ!!そんなっ!!そんなこと言ってませんっ!!もういいですっ!文を渡してきますっ!!」

手からもぎ取って慌てて立ち去った。


 次の日、帝のお伴で兄さまが廊下を渡ってくるのがちらっと見えたので(もみじ)更衣に

「ええと、桐壺にお使いに行ってきますわ!!先日お借りした琴の教本をお返ししに行きますわねっっ!」


「あぁ!伊予っ!それはまだ使ってるのよっ!!」


背中に(もみじ)更衣の声を聞きながら、慌てて教本を掴んで渡ってくる兄さまたちと別の廊下に飛び出し、小走りで逃げ出した。


桐壺に渡ると、茶々(ちゃちゃ)を呼び出し

「ちょっとここで時間をつぶしてもいい?雷鳴壺から大納言様がいなくなるまで」


茶々(ちゃちゃ)が面長でほっそりとした顔に扁桃(アーモンド)形の生気のある目を細め、快活そうに口角を上げ

「何ぃ~~~?何の遊び?宮中で出会わないようにして、夜の逢瀬を盛り上げるとかぁ~~?」


変な勘繰りが(はなは)だしい!!


そういえば、『牛車の女子(おなご)』騒ぎで大納言は公式には伊予と別れたことになってたよね?

盗み聞き(アレ)ってだれの間者(スパイ)だったの?

泉丸(せんまる)かな?

でもそれを利用させてもらおう!


「違うの!『牛車の女子(おなご)』を私だと思った大納言様が別れたいって!行きずりの男と次々寝るような女は願い下げだって!」


茶々(ちゃちゃ)が眉をひそめ怒り心頭の顔つきで

「何て男なのっ!!伊予っ!ちゃんと違うって言ったんでしょっ!それなのにアバズレ扱いしたのっ?!!あなたを信じなかったの??!!そんな男だとは思わなかった!別れて正解よっっ!!」


湯気が出そうなほど怒ってくれた。


・・・まぁ、それは、嘘なんだけど。

心苦しい。


「もう忘れなさいっっ!!終わったことはっ!!新しい人を探しましょっ!!そうそう!聞いてぇ~~~~!この前、東市でぇ、ナンパされたんだけど、これがイケメンだったのぉ~~~!桐壺の女房をしてるって言ったら、住所と名前を教えてくれてぇ、オレも文をだすから、君も出してくれって言われたのぉ~~!」


私の手を握りしめブンブン振りながら頬を赤らめてまくしたてた。


「身元が分かってるならちゃんとした人ね?誰?」


淡竹(あわたけ)という貴族で、擬文章生(ぎもんじょうしょう)(大学寮で詩文や歴史を学び、寮試に及第した者を指す)で身分はまだちょっと物足りないけど、とにかく背が高くて顔がイケメンなの!!身なりもお洒落で高そうな狩衣だったわぁ~~~!学生なのになぜあんないいモノを身につけられるのかしら?と思うぐらい!」


「で、恋文は?出したの?きたの?まさか、もう通わせてる!なんてことはないわよねっ!!」

ひゃ~~~!!

テンションが上がりすぎるっっ!!


「やぁだ~~~~!それはさすがにまだないってぇ~~!内裏には入ってこれないわよ~~!!」

私の肩をバンバン叩く力が強い。


急に真顔になり口に指を当てふと考えこみ

「でも、文を二三回やり取りしただけで、今度の里帰りのときには(よる)()いに行くって言ってたのよ!早くない?こんなもんなの?」


つられて口に指を当て考え込む。

「う~~~ん。私もわからないけど、二人の親密度が充分ならおかしくない気もする。けど、グイグイ来られすぎても怖いわねぇ~~!茶々(ちゃちゃ)が嫌なら断ればいいじゃない?!」


茶々(ちゃちゃ)が腕を組んで真剣に考えこみ

「せっかくの機会(チャンス)を!逃したくはないわ!でもぉ、ねぇ!彼の評判を確かめる方法はない?大納言様に訊いてみてくれない?」


ちょっとイラっとしたけど


「そうね!竹丸に聞いてみる!顔が広いから!影男(かげお)さんにも聞いてみるわ!」


目を丸くして

「竹丸って大納言様の従者の?大納言様じゃなく?」


ニッコリと口だけで笑いながら

「だから、大納言様とは別れたからっ!!ね?」


茶々(ちゃちゃ)がひきつった愛想笑いを浮かべ

「あぁ!ゴメンナサイ!そうね、じゃあ誰でもいいから、淡竹(あわたけ)さんがどんな人かを訊いてみてねっ!!私も調べるけど。」


 次の日、さっそく(もみじ)更衣に里帰りのお許しをお願いして大納言邸に帰った。

モチロン兄さまには知らせず。

多分、廉子(やすこ)様のために毎日、堀河邸に帰ってるはず。

竹丸に会いに来てくれるように文を出して自分の対の屋で待つ。


「姫~~~!話って何ですかぁ~?」

(その3へつづく)

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