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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
244/505

EP244:伊予の事件簿「虎斑竹の花(とらふだけのはな)」 その1

【あらすじ:友人の女房・茶々がナンパされて一目ぼれした貴族はイケメンだけど胡散臭そうな遊び人だと判明。そのイケメン貴族が一癖ありそうな姫の屋敷で刺し殺されたというから大変!奪われるだけの人にはなりたくないけど、与えられるだけの人でいるのも罪悪感。時平様を忘れる決意をした私は今日も頑なに拒否る!】

今は、899年、時の帝は醍醐天皇。

私・浄見と『兄さま』こと大納言・藤原時平(ふじわらときひら)様との関係はというと、詳しく話せば長くなるけど、時平様は私にとって幼いころから面倒を見てもらってる優しい兄さまであり、初恋の人。

私が十六歳になった今の二人の関係は、いい感じだけど完全に恋人関係とは言えない。

何せ兄さまの色好みが甚だしいことは宮中でも有名なので、告白されたぐらいでは本気度は疑わしい。

『兄さまには、もう二度と会わない』


決めた日以降、宮中に戻ってもできるだけ兄さまを避けることにした。


『恋愛しても誰も傷つけない人と恋愛したい』


漠然と考えながら。


物心(ものごころ)ついた時から、

ずっと好きで、

いつか結ばれることを夢見てた。


宇多上皇(とうさま)の元から逃げ出してからは

ひたすら

『私を見て欲しい』

と願った。


妻にしてほしいとか、

一番愛してほしいとか

じゃなく

もっと親しい関係になりたかっただけ。

見つめてほしかっただけ。


他の女性(ひと)を死ぬほど追い詰める

なんて

思ってもみなかった。


着るものや食べ物は何不自由なく育てられたけど、

気ままに外出したり

同年代の友人と遊んだり、文を交わすことすらできなかった。


乳母(うばや)や竹丸が遊んでくれたから

寂しいとは思わなかったけど


『世間からは見えない存在・いないはずの人間』


として扱われてるのが分かる年齢になると

他の人(兄さま以外の人)に

ハッキリと自分の意見すら言えなくなった。


『こんな私が誰かを傷つけていいわけない!』


『できるだけ迷惑をかけないようにしなくちゃ!』


って、全てのことに自信が持てない。


やっぱり廉子(やすこ)様に迷惑をかけちゃいけない。

年子様にも。

他の恋人たちにも。


私さえあきらめれば済む話だし。


兄さまの気持ち?


私と付き合う前だって、

兄さまは平気だった。

たくさんの恋人や妻たちと上手くやってた。


『私を忘れるために多くの女性と付き合った』


って言ってたけど、私がいないときのほうが全員と上手くいってたならその状態に戻すべき。

うん!

正しい!

これが正解!!

きっと。


私は間違ってない。


周囲の多くの人を傷つけてまで

一緒にいたいと思えるほど


兄さまのことを好きじゃない。


だけど、

それくらい好きになれる人に

また、出会いたい!


一生出会えないかもしれない?

いいえ、きっと出会えるわ!


信じるしかない。


考え込んでると影男(かげお)さんが文を届けてくれた。


開くと

『今夜、逢いにいく 時平』


慌てて影男(かげお)さんを引き留め

「待って!返事を書くから!」


サラサラと書き付けて差し出した。


影男(かげお)さんが無表情な三白眼でジッと見つめ

「断りの文ですか?」


なぜっ??

見てないのに分かるのっ???


驚いたのが顔に出てたみたいで、影男(かげお)さんの口元がほころび

「断りでなければ、返事を書かないでしょう?」


「『待ってます!』って書くかもしれないじゃない!」


「それ以前に、先日の里帰り以来、ずっと落ち込んでるじゃないですか。『牛車の女子(おなご)』が誰かわかったんですか?そのせいで落ち込んでるんですか?」

(その2へつづく)

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