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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
242/505

EP242:伊予の事件簿「糸毛車の女(いとげぐるまのおんな)」 その6

中に入った途端、上機嫌でニコニコし

「兄上は今夜は来ないのか?あの噂で喧嘩したのか?もしかして別れたとか?」


「ええ。そうなの。」


そーゆーことになってたから

意気消沈のフリ。


グッ!

私の手を握り顔を寄せ

「兄上と違って私は噂など信じない!伊予がそんなことをする女子(おなご)だとは思えないっ!だから安心してくれっ!」


ハイハイ。

瞳がキラキラして活き活きとしてる。

そのまま顔をよせ口づけしようとするので


「待って!」

唇を手で押さえた。


えぇ~~~っとぉ、どうやって逃れよう?

グルグル考えながら

「あの、私、実は、結婚するまでそういうことはしないつもりなの。」


眉をひそめ

「口づけも?この前したじゃないか!」


あれは不意打ちでしょっ??!!

こっちがぼんやりしてるスキに勝手にしたんでしょっ!!

イラっとしながら

「あれは、もののはずみでしょ?私が嫌がることをしないというなら我慢してください。」


忠平(ただひら)様が苛立ち口早(くちばや)

「じゃあ、これから三日間通って、三日後に露顕(ところあらわし)をしよう!晴れて結婚すればいい!」


ヤバッ!!

嘘でしょっ!!

「あのっ!まだ結婚する気分じゃないのっ!!もうちょっと独身でいたいってゆーかっ!!」


忠平(ただひら)様は明らかに肩を落としガックリした顔で黙り込んだ。


「じゃあ今日はもうお帰りになる?」


ソレが目的ならさっさと帰りたいでしょう?

って気を使ったつもりなのに


忠平(ただひら)様はプッと頬を膨らませたように見える可愛らしい()ね方で

「イヤだ!帰らない!今夜は伊予と過ごす!双六でも貝合わせでもいいからしよう!」


双六や貝合わせをしながら、忠平(ただひら)様は赴任先の備後(びんご)国で起きた面白い話やハラハラするような体験をたくさん話してくれた。

この前の温羅(うら)の子孫を名乗る山賊に誘拐されたとき、どうやって山賊を説得したかとか。

その後の『たたら炉』製造の進捗(しんちょく)状況とか、作り方とか鉄鉱石の見分け方とか。

話題が豊富で偏った(マニアックな)知識を好きな人にはウケそうだけど、普通の女子(おなご)にはついていけなさそう。


双六の勝敗に一喜一憂するような子供っぽさも見せたり、兄さま似の美男子(イケメン)な風貌と豊富な知識、有り余るほどの行動力、荒くれ者にひるまない勇気と男らしさ。

客観的に評価すると兄さまよりいい男?な気もするけど、やっぱりさほど惹かれない。

なぜ?

まぁ恋愛(こういうの)は考えてどうにかなるものでもないし。

はやく忠平(ただひら)様の美点を高く評価してくれる女子(おなご)に乗り換えてくれるといいな。

他の女子(おなご)が計算ずくで好きになったとしても、私と無駄に過ごすよりは忠平(ただひら)様にとって有意義。


忠平(ただひら)様の無邪気な笑顔を見てると

『はやく兄さまに会いたいなぁ~~~』

と恋しくなった。

もう『牛車の女子(おなご)』を捕まえた?

本人が(たくら)んだの?

私とは全く無関係?

それとも裏で糸を引く誰かの仕業?


夜が明けそうなころ『帰る』と言ってくれて正直ホッとした。

やっと眠れる~~~!!

遣戸(やりど)を開けて見送る。

フッと寂しそうに笑い

「伊予、知ってると思うが、お前のことが好きだ。」


不意打ちの告白に

胸がギュッと苦しくなった。

答えてあげられない

罪悪感?

申し訳ない気持ち?


『こんな私でよければ』

ってつい言いたくなる。

ダメダメっ!!

思い直して笑顔を返す。


「ありがとうございます。でも、私はまだ兄さまが好きです。」


「あぁ。そうだな。じゃぁまた来る。文を送るよ。」


歩いていく背中が寂しそうで『少し』愛おしくなった。


私ってちょっと心が動くと何かしてあげたくなるのね?

単純?

母性本能?

同情?


でもそれは恋愛じゃない。

多分。

(その7へつづく)

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