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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
232/505

EP232:竹丸と伊予の事件日記「仲立ちの比翼連理(なかだちのひよくれんり)」 その6

*****【伊予の事件簿】*****


「他の女子(おなご)のところへ行く」


兄さまにハッキリ言われたのでこれっぽっちも期待せず、自分の(へや)で早々に寝支度をして寝所に横になった。

枕に頭をつけてもすぐには眠れず寝返りを繰り返した。


自分が悪いんでしょ?

お互い大勢の恋人の一人でいましょう?

ってバカなことを宣言したから。


モヤモヤとどうしようもないことを考え続ける。


桜が

「伊予?大納言様がお見えよ?通す?」


えっ??

驚いて飛び起き

「通して頂戴!!」

言った後、急いで(あか)りをつけ、一応、小袖(こそで)の着崩れを直した。

(ひとえ)をはおるほど他人行儀じゃなくてもいいかしら?

悩んでるうちに兄さまが夜露の匂いを身にまとって入ってきた。


喧嘩の続きはしたくないので、丁寧に、できるだけ柔らかい口調で

「あの、今日は来ないって(おっしゃ)ってたでしょ?だから横になってたの。」


兄さまはどこか上の空で

「いや、浄見のことが心配だったから。様子を見に来た。

洛中で物騒な事件が続いていたからね。

昼間はそれを捜査してたんだ。」


「どんな事件?」


「連続して女性が強姦され、その被害者の一人の屋敷には、今朝、首を切り落された男の遺体が転がっていた。」


「えぇっっ?ヤバッ!!怖いっ!」

思ったより凄惨(せいさん)な事件の様子を想像してゾッと寒気を感じた。


でも好奇心も抑えきれずつい

「で、犯人はわかったの?なぜ首を切り落としたの?連続強姦は関係があるの?

あっ!そうか!

強姦犯人に腹を立てて復讐に被害者や家族が殺したとか?!」


当てずっぽうだったのに兄さまはウンと頷き

「被害者の姫が犯人だった。首を切り落とすのは恨みがつのったあまりだったが、彼女自身も少し異常なところもあったようだ。

豪勢な蒔絵螺鈿(まきえらでん)の手箱に頭を入れてとっておき、時々眺めて楽しむつもりだったらしいから。

宝物扱いだな」

う~~~んと腕を組み唸った。


「でも被害者の気持ちもわかるわ!無理やり強姦なんて嫌な事をされたら私も殺してやりたくなると思うっ!!」


兄さまはギョッとして顔を上げ

「わ、私は・・・・大丈夫かな?」

心配そうに呟く。


夜に二人きり!の状況に

すっかり大胆になって兄さまに近づき胸に抱きつく。


「昼間はあんなに怒ってたのに、心配してくれたのね?

兄さまになら何をされても平気!殺されても構わないわ!」


私の頬を触り親指で唇をなぞり見つめながら

「くだらないことでケンカ別れして、浄見が誰かに襲われたりしたら後悔しきれないと思って。

知らない男に強姦されるぐらいなら、四郎や影男(かげお)にそばについててもらった方がマシだ。

奴らなら浄見に無理強いしないだろうし。」


唇が触れる距離まで顔がゆっくりと近づく。

ウットリと目を閉じて待っているとピタリと止まった。


「ん?何だこれは?どうしたんだっ?」


兄さまが何かを見て叫んだ。


ん?

ボンヤリしながらも身体を起こして兄さまの(つか)む手元を見ると、昼間届けられた文の束だった。


「ああ、それ?この頃知らない人から恋文がたくさん届くの。

気持ち悪いから返事もせず無視してるんだけど、文を返したほうがいいかしら?

そのほうが届かなくなる?

めずらしいことに名前と住所がはっきり書いてあるの。

普通は知り合い同士でやり取りするから名前ぐらいでしょ?」


兄さまが文をパラパラとめくり全てに目を通した。

中には忠平(ただひら)様からの恋文もあったけど。


「裏に筆の試し書きでもしてから捨てようと思ったんだけど。」

怒ってないか恐る恐る様子を探る。


「わかったぞ。こういうことか。」


「何?何が分かったの?」


「連続暴行事件がどうやって起こったのかが!でも黒幕がまだわからないな。

まあでも住所と名前が分かっているからあとは簡単だ!

一応、そうだな、浄見、今度妙な手紙が届いたら文使いを捕まえるよう影男(かげお)に指示してくれ!」


「わかったわ!」

ウンと頷いて、キラキラ瞳を輝かせてる兄さまをジッと見つめるけどソワソワしたまま今にもどこかへ行ってしまいそうなぐらい浮足立ってた。

一刻も早く事件を解決したい!って感じ?


膝立ちしてもう一度目線を合わせた。

兄さまの顔を両手で挟み込み見つめ合った。

「事件の捜査は明日でいいでしょ?」


薄い唇を人差し指でなぞり

そっと唇で吸う。

腕が腰に回され抱きしめられ

手が背中を這いまわる。

ゾクゾクとした快感を感じながら

兄さまの中にありったけの愛情を注ぎこんだ。

(その7へつづく)

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