EP231:竹丸と伊予の事件日記「仲立ちの比翼連理(なかだちのひよくれんり)」 その5
*****【竹丸の日記】*****
清華がヒステリックな声で
「でね、昨日またあいつが無断で私の対の屋に入ってきたから、父さまからもらって準備してた痺れ薬を飲ませたの。
動けなくなって、涎をダラダラたらしながらのたうち回ってたあいつを縛って刀子でゆっくりと首を切ってやった!
血がたくさん出て興奮したわ~~~!!
切り取った頭を母さまに見せてあげたのよね?ね?いい気味でしょ?私にあんなことをした罰よっ!!」
怖っっ!!
罪に対して罰が重すぎるっっ!!
強姦に対して首切りっっ??!!
若殿が感情を押し殺した声で
「で、切り落とした頭は手箱の一つにしまったんですね?手箱の中身が周囲に散らかってました。」
あの豪華な蒔絵螺鈿の手箱に人の頭が入ってたのっ?
切り落とした頭が大事な宝物?
想像するだけで背筋がゾ~~~っと寒くなった。
「ッヒッ!!フフフッ!あら、もうわかったの?これから時々取り出しては眺めて楽しもうと思ったのに、取り上げてしまうの?残念だわっ!!」
「うっうっうっ・・・・・」
むせび泣く女性の声が聞こえ
「どうか、獄ではできるだけ、なるべく、優しくしてやってください。お願いします。可哀想な子なんです。私たち夫婦が甘やかしすぎたせいかもしれません。・・・・うっうっう」
犯人は明らかに清華だし、痺れ薬を用意しそれを結果的に手伝った父親で医師の楊も共犯の可能性があるとの事で、牛車に乗せて検非違使庁まで連行された。
すっかり日が暮れ、辺りは夜の湿気を含んだ冷たい空気に変わった。
涼しい風に癒され清々しい気持ちで
「これにて一件落着!!ですねぇ」
伸びをしながらスッキリした気分で
「いや~~~!簡単でしたよねぇ~~!動機も証拠もハッキリしてましたしぃ~~!」
若殿は険しい表情のまま
「首切り殺人は解決したが、連続婦女暴行事件はまだ解決していない。
そもそも連続婦女暴行事件が起きなければ、この殺人は起きなかったかもしれない。
・・・・少し気になることがある。
お前は帰っていいぞ!」
ポツリと呟き、急いでどこかへ走り去った。
(その6へつづく)