EP229:竹丸と伊予の事件日記「仲立ちの比翼連理(なかだちのひよくれんり)」 その3
*****【伊予の事件簿】*****
やっぱり見てたの?!!
なのに
何も言わなかったの!!
忠平様と口づけしたことを今更ながら後悔した。
見た時にすぐ責めず、今になって意地悪な事を言う兄さまにも腹が立った。
「どうしてすぐに言わないの?怒ってるならそういえばいいでしょっ!!」
眉をひそめ
「怒ってどうなる?愛情が重いんだろ?四郎とも影男とも好きなだけすればいい!」
「違うっ!したくなんてないっ!」
兄さまじゃなければ
何も感じないのに!
あなたでなければ
何もしたくないのに!
わからないの?!!
涙をこぼしながらただ見つめてた。
兄さまは苛立った声で
「今夜は浄見と過ごせない。大事な仕事が入った。
・・・・あっと、じゃなくて、仕事が終わっても、他の女子のところへ行くから
浄見は待っていなくていい。」
冷たい声で言い放って、出ていった。
バカな私!!
こんなことになるって分からなかったの?
『尻軽な浮気女』を愛し続けられる人じゃなかった。
捨てられても
仕方ないことを
したんだって
気づいたけど、
もうあとには引き返せなかった。
*****【竹丸の日記】*****
朝、内裏へ出仕するときはご機嫌だった若殿が昼頃、堀河邸に帰ってきて
「急な仕事が入った。検非違使と捜査に出かけるぞ!ついてこいっ!」
とまたまた不機嫌そう。
宿直で姫と過ごす予定はどうなったの?
またサボり?
それとも土壇場中止?
どちらにしてもまた宇多帝の姫ともめた感じ?
大納言だし検非違使別当でもないし捜査する必要はないのになぜ?
弾正台の役人だった巌谷が今は衛門大尉兼、検非違使大尉になったのでその付き合い?
都の大路を並んで馬を歩かせながら
「何の捜査ですか?」
「今朝の朝議に奏上された『連続婦女暴行事件』の捜査だ。
被害件数が多いのと、ついに昨夜、被害者女性の屋敷で、殺人まで起きた。
早急に解決せよと帝の御達しでな。」
「えぇーーーーっっ!!女性が暴行されたうえに殺されたんですか?」
若殿が眉根を寄せ深刻な顔で首を横に振った。
「いや。以前暴行を受けたことがある被害者の屋敷で、今朝、見知らぬ男が殺されて見つかった。」
(その4へつづく)