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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
213/505

EP213:伊予の事件簿「取り替えの春霞(とりかえのはるがすみ)」 その6

今思えば一番正しい対処法は、塗籠(ぬりごめ)を調べに来た忠平(ただひら)様に『内緒にして!』とお願いすることだった。

けど!!

パニックになった私は影男(かげお)さんにヒソヒソと素早く

「東側の妻戸(つまど)から出てっっ!早くっっ!」

手をヒラヒラさせて出ていくよう促した。


急に明るい光が西側の妻戸(つまど)から差し込み、

「誰だっ!!そこにいるのはっっ!!」

開いた妻戸(つまど)から聞こえる忠平(ただひら)様の叫び声に、ビクッと身体を震わせつつ影男(かげお)さんを追い立て東側の妻戸(つまど)から逃げ出した。


外の明るい陽射しに目をショボショボさせ辺りを見回す。


「主殿の東側に曲者だっっ!捕まえろっ」


忠平(ただひら)様の命じる大声に急かされる。


廊下を北へ向かうと、北の対の屋へ続く廊下の庭に警備の下人が太刀(たち)を手に現れた。

下人が縁に登ろうとすると、どこからかもう一人やってきた。

影男(かげお)さんが

「私が引き留めます。逃げてくださいっ!」


丸腰なのに大丈夫っっ??!!

心配したけど逃げる方が先決っっ!!


慌てて影男(かげお)さんの後ろをすり抜け北の対の屋の御簾を押して中に入った。


「誰っっ?!!曲者なのっっ?!」


忠平(ただひら)様のご正室、宇多上皇(とうさま)の娘である源順子(みなもとのぶこ)様と思われる女性の声が几帳の奥から聞こえた。


「伊予ですっ!すぐにここを去りますっ!!」


対の屋を横切り、すぐに北側の御簾を押して廊下に出た。


「あっ!!」

と思う間もなく

廊下の東側に待っていたかのような警備の下人が素早く私に近づき、腕を後ろに()じり上げた。


「痛っっーーーーー!!痛いっ!!て!もぅっっ!!」


終わったーーー!!

連れ戻されるーーーっっ!!


(へこ)んで一気に力が抜け大人しく後ろ手に縛られた。


「上皇侍従様!(ぞく)を捕まえましたっ!!」


「よし、引き渡せ。ご苦労、下がっていいぞ」


声をかけて私の顔を見た忠平(ただひら)様がビックリしたように目を丸くした。


「伊予か?!ここで何してる?」


忠平(ただひら)様が私を逃がしてくれたあと、何があったか?を私なりに整理してみると次のような感じかな。


**************


忠平(ただひら)様は父さまのいる主殿に、捕まえた影男(かげお)さんを連れて行き

(ぞく)()らえました。どう処分いたしましょう?」


父さまは影男(かげお)さんを一瞥(いちべつ)

「誰の命でここへ(ひそ)んだのだ、何が目的だ?」


貝のように口をつぐんだ影男(かげお)さんの様子を見て

「すぐには吐くまいな。忠平(ただひら)、お前がよく調べろ。」


その時、警備の下人が

「侍従様っ!!もう一人の(ぞく)()らえました!!」

水干(すいかん)(くく)(ばかま)を着て、角髪(みずら)を結った少年風侍従姿の細身の男を連れてきた。


侍従姿の細身の男の全身をジロジロと観察し、

『清丸』のことを思い出した父さまが身じろぎした。


「何じゃ?・・・女子(おなご)か?

まさか!

おいっ!!早く!

顔をっ!!顔をよく見せてみろっっ!!」

(その7へつづく)

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