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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)

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EP211:伊予の事件簿「取り替えの春霞(とりかえのはるがすみ)」 その4

う~~ん・・・と困惑して

「そんないいものじゃないの!

私は上皇に恩があるから、見つかって戻れと言われれば大人しく戻るしかなくて、そうすれば大納言様とはどうなるかもわからなくて、・・・・」


ここまで考えて、確かに父さまは私が『命をかけてでも兄さまと結婚したい!』と言えば、渋々でも最終的には諦めて許してくれると思う。

それに、再び私に会ったからって、妃にしたいとまだ思ってるかどうかもわからない。

案外興味を()くしてて『あっそう。じゃあ結婚すれば?』って言われるかもしれない。


でも、兄さまの話じゃ私を探してるってことで、まだ連れ戻したいと思ってるってことよね。

未来を夢見る力(予言能力)のため?

とはいっても自分でどうにかできるわけじゃないのに!

この頃ぜ~~~んぜん予知夢なんて見ないのに!


予言能力(そのちから)のためなら、兄さまと結婚しても問題ないわよね?

イチかバチか会ってみるのもアリ?

考え込んでいると、茶々(ちゃちゃ)が明るい声で

「まぁいいわ!わかったわ!じゃあ二日後、xx刻に朱雀門(すざくもん)前に迎えに来てくれるのよね!

わ~~い!大納言様とお出かけっ!何着て行こうかな~~~!」

すっかり浮かれて逢引き(デート)気分?


う~~~ん、

このまま事がうまく運んで

父さまが茶々(ちゃちゃ)を伊予だと思ってくれれば全て解決するのよね?

私はぜ~~~~ったい行かないほうがいいのよね?

宮中でじっと待ってる方が安全!

・・・・でもっっ!!

父さまがなぜ私を連れ戻そうとしてるのか?とか

兄さまとの仲はどうなったのか?とか

もしかしたら私と兄さまの結婚を認めてくれるつもりかもしれない?とか

色々考えて

『行って話を聞いてみたい!!!』

気持ちがどんどん強くなっていった。


 当日、(もみじ)更衣に休暇をお願いして許可してもらった。

さっそく水干(すいかん)(くく)(ばかま)を着て、角髪(みずら)を結った少年風侍従姿に着替えて内裏(だいり)を出た。

宇多上皇(とうさま)の別邸までの道は知ってる。

大内裏(だいだいり)からでも十里(じゅうり)(5.5km)ぐらいはある。

歩くと私の足では半刻(はんこく)四半時(しはんどき)(一時間半)ぐらいかかる。

覚悟して二条大路を西へ向かって歩き始めた。


道のりの半分ぐらいまで来たとき後ろからパカパカと馬の蹄の音が聞こえた。

ゆっくり歩かせてる感じ。

少し(かす)れた聞き覚えのある声で

「まだ距離があるなら乗せましょうか?」


振り返って馬上の影男(かげお)さんに

「今日はいいわ!ありがとう。一人で大丈夫です。影男(かげお)さんは帰って下さい!」

強がりじゃなく、大丈夫だと思ったから。

すぐに人を頼るところが悪い癖なのよねっ!

兄さまが怒ったのもそこが原因。

反省して改めなきゃっ!!


黙って歩き続ける。

「大納言のせいですか?

私に近づくなと言われたんですか?」


まぁ・・・それもあるけど、

「今日は危ない目に()う事は無いと思う。だからありがとうございます、一人で大丈夫です。」


「私はあなたを守るためにいます。

それにその足取りでは目的地に着いた時には疲れ果てているでしょう。

そんなことで目的を果たせますか?

任務を完璧に遂行(すいこう)するためには、周囲の利用できるものは全て利用すべきです。

私を利用してください。

それとも達成の成否はどうでもいい目的なんですか?」


・・・・目的達成?っていうほどのものでもないけど。

盗み聞き?かな、()えて言えば。

でも影男(かげお)さんの言う通り、疲れ果ててれば見張りの下人とかにすぐ見つかりそう。

考え直して立ち止まり


「じゃあお願いします。」


ペコリと頭を下げ、すぐに決心が折れて馬に乗せてもらった。

軟弱な意志?

いいえっ!!

柔軟な思考!!と言ってほしいわ!


そうこうしてるうちに、十四の歳までそこで育った、懐かしい我が家、『宇多上皇の別邸』に到着した。

(その5へつづく)

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