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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
194/505

EP194:伊予の事件簿「決裂の偶像(けつれつのぐうぞう)」 その8

 最後に訪れたのは、都にあるとは思えない異国情緒溢れる屋敷だった。

建築材料が瓦や木なのは同じだけど、家屋どうしをつなぐ廊下がなかったり、家屋の壁の色が真っ赤だったり、四角く切った石を敷き詰めて石畳にしてあるところや、石を積んで高くした床に漆喰が塗られているところ、背もたれの付いた長い椅子、土足で中に入るところ、屋敷の周囲を囲む壁の色まで赤くしてあるところが『外国に来たみたい!』とテンションが上がった。

案内されたそこは大勢の人が会合する集会場?らしく、大神(おおみわ)己生(みき)という貿易商人の(おさ)の屋敷の一室だった。

大神(おおみわ)己生(みき)(たもと)の短い袖に足首までの長さの丈の、衿に縁どりのある単衣(ひとえ)を腰の高い位置で帯を締めた唐服のような服を着て、萎え烏帽子を被るというチグハグな恰好だった。

歳は五十すぎのたくわえた顎髭(あごひげ)の白くて長い、仙人と言われて思い浮かぶような風貌。

大神(おおみわ)己生(みき)の周りにはお付きの従者?と思われる取り巻きが何人もついていて、兄さまの一挙手一投足に目を光らせていた。

兄さまが大神(おおみわ)己生(みき)と話し込んでいる間、窓の格子の繊細な唐花模様や水をはじく油紙の薄さに感心したり、壁に飾られている掛け軸の虎の絵を面白くながめたりしてた。

入り口にかけてある帷から光が差し込み、そちらに目をむけると、中年の唐服を着た男性が入ってきたのに続いて、同じく唐服を着た中年男性が入ってきた。

二人とも烏帽子を被っておらず髪型が異国風で、細かく何本もの束を作ってそれをまとめている見たこともない髪型だった。

一人は髪飾りとして(?)金鎖に玉を連ねたものや金・銀で複雑な文様を模った細工をくっつけ、その金鎖を頭の周囲に巡らせて高級感が半端(ハンパ)ない。

もっと驚いたのは、後から入ってきたその男性に対して大神(おおみわ)己生(みき)やお付きの従者たちが、いきなり膝をついて両手を前にそろえて上げ、異国の言葉で話しかけたこと。

話しかけられた男性は手を下から上に上げる仕草をし、立ち上がるように指示したみたい。

異国の習慣をこの目で見れて感動!

ワクワクした。


兄さまはそれを見て

「・・・・なるほど、そういう事か。」

何かを納得したように呟いた。




兄さまが今日の全ての訪問は終わったというので、帰途についた。

新しい、珍しいものをたくさん見られた楽しさで気まずい雰囲気を忘れ、ウキウキ興奮して


「さっき訪れた中に異国からの逃亡犯がいたの?」

何気なく訊くと

「目星はついてるが、裏付けをとってから検非違使(けびいし)と踏み込む。」


今は教えてくれないの?

残念!

「でもわが国で悪事をしてないのに捕まえるの?」


「密入国だし、その国との関係もあるし、捕らえて送り返すことになるだろう。」

ふう~~~ん。


兄さまの口調が一日中ずっと素っ気無いのと誤解されたままの気まずさを思い出し二人とも黙り込んだ。


貝のように口をつぐんだまま大納言邸についた。


これ以上のモヤモヤに堪えられず思い切って

「今夜は私の対の屋に来てね!話したいことがあるから。」

キッパリと言い放った。


兄さまの(まぶた)と頬に痙攣(けいれん)が走ったように見えた。

(その9へつづく)

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