EP180:伊予の事件簿「疆界の三稜鏡(きょうかいのさんりょうきょう)」 その2
文にある通り、廊下に出て白い紙を引き、太陽光を水晶に通して紙に映るようにしてみた。
自分の手の影と水晶の縁の影が映り、部分的には水晶の中を通った光が白く集まったように見えた。
『それが現れる場所に立つものとは?』
って何?何のこと?白い光?
サッパリ意味が分からない。
こんなときは・・・・!
ちょっと考えて辺りを探し回り、庭で雑草取りをしてる姿を見つけた。
「影男さんっ!!ちょっと来てっ!」
手招きして呼び寄せる。
いつもの無表情の三白眼に
「この文を読んでみて!で、これの意味わかる?」
水晶を手渡し丸投げする。
文にサッと目を通し、水晶を手に取りクルクルと回して
「三角柱の横面を太陽光と垂直になるようにすると・・・」
白い紙に影男さんの手の影とその中に水晶を通った光が虹色になって落ちた。
「へぇ~~~!そーゆーこと?この水晶に光を通すと虹が見られるのね!凄ーーーーい!!」
感嘆の声を上げた。
「これは三稜鏡(プリズム)です。水晶でも透明度が高いものを使用しないと作れない、貴重なものですね。」
自分でもやってみようと三稜鏡を返してもらい、角度を調節して白い紙に虹ができるのを確かめる。
凄ーーーーーい!楽し~~~っっ!
太陽の光の中に虹の色が全部混じってるのねっ!
茶々にも見せてあげなきゃっ!
「兄弟そろって虜にしている気分はどうですか?」
不機嫌そうに影男さんが呟く。
『は?』と顔を上げると
「そんな貴重なものを簡単に贈り、熱烈な求愛の文を送り続けてるんでしょう?その文を他の男に読ませるなんて上皇侍従が気の毒だな。」
三白眼の目の端を吊り上げ、眉をひそめる。
いつもより不機嫌さが倍増してツンケンしてる。
ん~~~~、まぁ、そうかもしれない・・・けど、
「だって、やましいところはないんだもの。忠平様と浮気するつもりなら誰にも見せないわ!でしょ?」
「大納言以外の男の心は弄んでもいいと?」
ギロっと睨みつける。
ムムッ!でもっ!
気を引いた覚えは一切ないしっ!
勝手に言い寄られてるだけっ!
正直迷惑だしっっ!
・・・とか言い返そうとしたけど、影男さんのいう事も一理あるなぁと思いなおし
「そうね。二度としないわ。私の文を兄さまが廉子様に見せてると思うと嫌だものね。」
反省した。
気持ちを切り替え『そうだ!』と本題に戻り
「で、じゃあ『虹』が出る場所に立つものって何?知ってる?」
期待を込めてワクワクと答えを待つ。
(その3へつづく)