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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
179/505

EP179:伊予の事件簿「疆界の三稜鏡(きょうかいのさんりょうきょう)」 その1

【あらすじ:いつも美味しいものや貴重なものを贈ってくれる忠平様から謎の文が届いた。その謎を解くと皆が欲しがる役に立つものをくれるというけどそんなものがあるならタダでくれればいいのに!他界と俗界の境界には、雨上がりに一瞬だけ現れる神秘的な現象が起きるという。私は今日も幽世(かくりよ)に一歩足を踏み入れる!】

今は、899年、時の帝は醍醐天皇。

私・浄見と『兄さま』こと大納言・藤原時平様との関係はというと、詳しく話せば長くなるけど、時平様は私にとって幼いころから面倒を見てもらってる優しい兄さまであり、初恋の人。

私が十六歳になった今の二人の関係は、いい感じだけど完全に恋人関係とは言えない。

何せ兄さまの色好みが甚だしいことは宮中でも有名なので、告白されたぐらいでは本気度は疑わしい。

 紋白蝶(モンシロチョウ)が二匹、螺旋(らせん)を描きながら舞い上がる。

二人だけの世界。

周囲の景色が無限に遠ざかり、音は掻き消え、互いの呼吸だけを聴き、一心不乱に昇っていく。


絶頂へ昇り詰めた個の生命は、次の生命への準備を始める。


雷鳴壺の自室で、文机に頬杖をついて、ぼんやりと御簾が巻き上げられた庭を眺めていた。

そんな曇り空の午後、同僚の桜が文を届けてくれた。


唐土(もろこし)の貿易船からいいものが手に入ったから伊予に贈る。

大宰府に貿易船が訪れた情報をいち早く入手し、商人に命じて買い付けた唐物(からもの)の一つだ。

大変貴重なものだが、それほど深刻に考える必要はない。

伊予が驚き、喜ぶ顔を想像するだけで楽しいんだ。


兄上にもある贈り物を用意したんだが、簡単に渡すわけにはいかない。

だが絶対に役に立つ皆が欲しがるものだ。

伊予が兄上のために以下の謎を解くなら与えよう。


一.伊予への贈り物の水晶に太陽光を通過させ、白い紙へ映す


一.それが現れる場所に立つものとは?その場所に贈り物を用意した。


ただし、それを狙う連中が荷運びの従者の後をつけている可能性があるから十分注意しろ。

もちろん、兄上に話せば贈り物は無しだ。


・・・』


ここまで読んで文箱の底をよく見てみると、


長さ二寸(6cm)、一辺が一寸(3cm)ぐらいの、透明な三角柱の水晶が入っていた。

今までに見たことのないぐらい純度の高く濁りのない水晶だった。

手に取りクルクル回していろんな角度から眺める。

景色を透かして見ると、斜め前に置いてある几帳が映ってた。


へぇーーーーーっ!!

凄いっ!

珍しい~~~~っっ!!!


と感心した後


いいのかなぁ~~?!

何だかメチャクチャ貴重なものっぽいし・・・。

忠平様が帰京したら返そうかな。

こんな貴重なものもらったら後が怖いなぁ。


と悩んだ。


文にはまだ続きがあった。


『早く伊予に会いたい。

なぜこんなに恋しい?

前世で添い遂げられずに終わった恋人同士かもしれない。


真剣に考えてみてほしい。

もし、兄上より先に出会っていれば、伊予は私を選んだんじゃないか?

私と彼の間にそれほどの差はないはず。

最初に出会う男が私だったらよかったのに。

それなら、他の男が近づく隙を与えない自信がある。

   忠平』


・・・・押しの強さは相変わらず。

お元気そうで何よりね!


何か勘違いをしてらっしゃるようだけど。


それにしてもこの水晶を通して紙に太陽光を映すと何が起こるというのかしら?

(その2へつづく)

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