EP172:伊予の事件簿「鎮魂の花祭(たましずめのはなまつり)」 その3
私は困り果て
「だってぇ~~!北の方や若君や姫君と仲良く家族の団らんしてるところに、どのツラ下げてノコノコ割り込めるってゆーのぉ?」
口をとがらせる。
少し遅れて
「えっ?疫病神って何?陰陽師がそういったの?」
ヤバッ!危なっっ!!
聞き捨てならないことを聞き逃すところだった!
竹丸は他人事なので楽しげなのを隠さず
「そうです!若殿が突然夜中に目を覚まし、『黒い人影が自分の寝ている周囲をぐるぐると歩き回っている』と廉子様に告げたので、心配なさって知り合いの陰陽師に相談されたんですよ!で、若殿を見せてその診断が『疫病神が憑いてる!』ですって!」
二日前の発作もあるし心配になり
「お祓いしてもらった?それっていつのこと?まだ疫病神が憑いてるってこと?だからxxx寺へ参拝に行ってお祓いしてもらうの?それで治るの?疫病って何の病?症状は?薬師に薬をもらったほうがいいんじゃないの?」
早口でまくし立てる。
腕を組んで、したり顔で頷き
「ハイハイ。陰陽師にお祓いは、してもらいました。でもまだ具合は悪そうです。病と言っても熱や咳がでるとかどこかが腫れてるではなく、時々、眩暈と頭痛・吐き気があるそうです。
目がチカチカしたり変なものが見えるとも言ってました。
薬師はな~~~~~んにもわからないそうです。
他人に感染する疫病ではなさそうです。
xxx寺へは祈祷も目的の一つです。」
次々と質問を熟した。
心配のあまり黙って考え込んでいると
「心配なら一緒に行けばいいのに!若殿はそのつもりですよ!」
気軽に言う。
「だって、廉子様はきっと不愉快なハズ!せっかくの家族旅行を邪魔されれば!
ただでさえ気にくわないだろうし。
もし私が廉子様の立場なら許せいないし!」
そう!それよっ!!
将来、兄さまに別の恋人ができて私たち(子がいる想定ね!)が蔑ろにされて目の前でイチャつかれでもしたら!!
考えただけでもゾッとする。
怒りでフツフツと鳥肌が立つっ!
でもその怒りを今、廉子様は私に向けてると思うと、怖いなぁと思う反面、申し訳ないなぁといたたまれなくなった。
「やっぱり行かないっ!上手くやれる自信がないしっ!怒りの火に油を注ぐだけな気がするしっ!」
下手したら食べ物に毒でも盛られかねない。
うん。やっぱり行かないのが正解。
竹丸は不思議そうに
「姫の勘違いですよぉ!なぜ廉子様が嫉妬深いと思ったんですか?そんな人じゃ全然ありませんよぉ!
若殿の宮中の恋人たちには櫛や白粉の贈り物まで用意して若殿に持たせたくらいです!」
それは、えぇ~~とぉ~~~、身につけるもの・・・は『特に』怖い。
竹丸を諭すように
「嫉妬深くない女性なんていないのよっ!兄さまを愛していないならあり得るけど、そんなはずないでしょ?」
今度はう~~んと竹丸が考え始め
「そうですねぇ。
廉子様は若殿が眩暈の発作を起こしたという話を侍女から聞いたとき
『殿はご自分では意識してらっしゃらないけど、大勢の女性を弄ぶことに対して罪悪感に苛まれてらっしゃるのよ!
そのせいであの発作が起きるの。
わたくしが注意してさし上げたのだけど、お分かりになったかしら。
きっと女遊びをおやめになれば発作は治まるでしょうねぇ。
それにしても、近頃の女房は針仕事もろくにできないようね!
惨めな御針の小袖を殿に着せて!
刺繍だって一体何の花かも分からないぐらい粗末な出来だったわ!』
と言ってました。
どういう意味でしょう?
若殿が実は無意識に女遊びを後悔してて、その罪悪感が病を引き起こしてるとでも言いたいんでしょうか?」
う~~ん。あの桃の花を刺繍した小袖を廉子様が見たのね。
仕立てに関してはぐうの音もでない。
・・・・みすぼらしい小袖を着せてゴメンナサイ。ちょっと反省。
でも、兄さまが私と付き合う事に罪悪感を持ってるのが病の原因?って本当?!
(その4へつづく)




