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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
164/505

EP164:伊予の事件簿「吉備津彦の桃(きびつひこのもも)」 その3

忠平(ただひら)様が備後(びんご)国へ出発した二週間後、兄さまのもとに

『・・・・視察中、入った山中で上皇侍従様が従者ともども行方不明になり二日になります。安否が確認できず大納言様のご指示を仰ぎたく思い・・・・』

という文が備後(びんご)国介(こくのすけ)から届いた。


兄さまは苦い顔をして

「上皇の密命なら国介(すけ)に知らせてから動くだろうから、本当に何かの事故にあったか、山賊に襲われたか、誰かに命を狙われたか。想定外の出来事に巻き込まれていることは確かだな。さて、どうするか・・・・。」

考え込んでいる。


私は最後の面会を思い出し

上皇(とうさま)の命令で荒っぽい集団と交渉すると言ってたわ!その人たちに何かされたのかもっ!」


兄さまは眉をひそめ

備後(びんご)国で荒っぽい連中と言えばあの集団か。上皇は私的にアレを作ろうとしているのか?その交渉でもめて四郎が脅され監禁、もしくはすでに殺されている・・・?」

心配そうにつぶやいた。


普段はあまり仲が良さそうじゃないけど『いざ命の危険!』となるとお互い心配になる間柄って、兄弟姉妹の絆ってわかるようでわからないなぁ。

肉親の情って恋人や友人とは違うものなのかも。


それから数日後、また兄さまに文が届いた。


それを読み険しい顔つきで

「明日、京を立ち備後(びんご)国に向かう事にする。」

キッパリ言うのでビックリして

「どうしたの?忠平(ただひら)様に何かあったの?」


何も言わず渡してくれたその文を読んでみると


『私は上皇侍従様の従者・月代(つきしろ)と申します。

xx山の山中に視察に出かけたおり、山賊が現れ私ともども上皇侍従様は捕らわれました。

我々は奴らの隠れ家の一つである洞窟に監禁され水しか与えられずにおりました。

奴らが寝静まった夜中、上皇侍従様が隠し持っていた石で縄を切り逃げ出したのですが、賊に気づかれ上皇侍従様は再びとらえられてしまいました。

国府に帰り着くと拉致された日から三日が過ぎていたことを知りました。

国介(すけ)にxx山に住む山賊について尋ねると、温羅(うら)の子孫で悪事ばかりはたらき、朝廷への調庸・封物の強奪に加え地域住民を襲い悩ませるゴロツキ連中との事でした。

大納言様、どうか朝廷の兵を率い、山賊を成敗していただきたい。

私もともに戦い、一網打尽にしてやりたいと存じます。

どうか、朝廷より兵士を派遣していただくか、「追捕官符(ついぶかんふ)」を交付していただき健児(こんでい)(地方軍事力として整備された軍団)の動員を許していただきたい。

一刻も早く上皇侍従様を助けねば命の保証はございません。

大納言様、素早いご決断をお願い致します。

兵が動員できしだい、鬼畜の所業を重ねる山賊を温羅(うら)どものように皆殺しにし、奴らの集めた金銀財宝を手にいれ山分けするとしましょう。

お返事をお待ちしております。』


う~~~ん。『皆殺し』とか物騒だけど悪い奴らだから仕方がないの?

鬼畜の所業って『皆殺し』も『財宝を山分け』もそうじゃないの?


心配すぎて泣きそうな声で

「兄さまが行く必要あるの?人を()って助ければいいんじゃないの?」

クイクイと袖を引っ張った。


兄さまはまだ険しい表情で

「いや。上皇が四郎に命じたなら、私でなければできない決断もあるだろう。」


長い指が頬に触れ、熱をおびた瞳で私を見つめながら

「もしものことがあれば、私のことは忘れるんだよ」

キッパリと告げた。

(その4へつづく)

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