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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
160/505

EP160:伊予の事件簿「不承の富貴栄華(ふしょうのふうきえいが)」 その8

萄子更衣(どうここうい)入内(じゅだい)を強く要望なさったのは皇太后(こうたいごう)だ。

宇多上皇の御母君・班子女王(はんしじょおう)様。

皇太后(こうたいごう)卜占(ぼくせん)に凝ってらっしゃるのは知ってるだろう?

心酔されている宿曜師(すくようし)によるとxx寺へ参られる日に、孫君にあたる帝と相性が最高になる星宿を持つ女子(おなご)がxx寺に現れるという予言を信じられてxx寺へお出かけになった。

その日たまたま訪れた萄子更衣(どうここうい)を見かけ捕まえて星宿を調べると奇跡的に一致したから宿曜師(すくようし)の言葉をまるっきり信じ込まれた。

私にどうしても萄子更衣(どうここうい)入内(じゅだい)させよとお命じになった。

私に断る選択肢はなかったよ。」

兄さまが呆れたように言った。


萄子更衣(どうここうい)が申し訳なさそうに

「でも、どうしても入内(じゅだい)するのが恐ろしかったんです。父の身分は低く皇太后(こうたいごう)(めい)と言われても教養も礼儀も知らない下賤(げせん)のものよと(さげす)まれることが。文字も読めず琴だって触ったことがありませんのに!それに、兄はゴロツキまがいの仕事しかしたことがありませんし、将来盗みなどの悪行に手を染める気がしましたの。そんなわたくしが後宮になど入ってもうまくいきませんわ!」

と悲観的な事を言った。


入水するぐらいの根性があるなら何だって楽勝よ!多分。


でも現にその素行の悪い兄は小袖(こそで)窃盗に手を染めたのね。


そうだ!とまだそこにいた蒲子(かばこ)

「使用済み小袖(こそで)をどうするの?高値で転売?」


蒲子(かばこ)白粉(おしろい)が汗でところどころ()げ落ち、色黒の肌が(まだら)に露出し、(べに)が唇からはみ出した、超美人という最初の印象のカケラもない無様(ぶざま)な姿で


「ハハハッ!銭ならこの先、妹からいくらでも引っ張れるさ!純粋な自分の楽しみのためだ!あの小袖(こそで)はお前の使用済みではなかったと女儒(めのわらわ)の噂で知り、お前の小袖(こそで)を盗み直したのに影男(かげお)の筋肉バカに捕まったんだ!運が悪いぜっ!」


・・・美形の付きまとい(ストーカー)に狙われがち。


でも私の衣装箱には使用済みは置いてないはず。


洗濯した新しい小袖(こそで)だけどよかったの?


思ったけど使い道がわからないので何も言わないことにした。


兄さまは鼻の横に皺を寄せた侮蔑(ぶべつ)の表情で蒲子(かばこ)を見つめ

「この先一度でも萄子更衣(どうここうい)強請(ゆす)るような行為をすればお前を死んだことにして縁を切らせる。戸籍も抹消する。帝の妃に犯罪人の兄は容認できないからな。脅しじゃないぞ。連れていけ!少し痛い目に合わせろ!」


命じると蒲子(かばこ)項垂(うなだ)大舎人(おおとねり)影男(かげお)さんに両腕を掴まれ引っ立てられていった。


 萄子更衣(どうここうい)とわかれ雷鳴壺に帰る途中、前を歩く兄さまに

入内(じゅだい)って死にたくなるほど怖くて辛いものかしら?」


「どんな富貴栄華(ふうきえいが)だって自分が望んだものじゃなければ自由の方が輝いて見えるものさ」


入内は『鳥籠(とりかご)にいれられるようなもの』と言うけど


『自由の空』の厳しさを知らずに想像し怯えるだけの私は


できれば大樹の枝で安楽に


一生を過ごしたいな・・・と願った。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

自分だけの富貴栄華(ふうきえいが)じゃなく家族のために何らかの鳥籠を我慢してる人々は今もたくさんいるでしょうねぇ。

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