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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
158/505

EP158:伊予の事件簿「不承の富貴栄華(ふしょうのふうきえいが)」 その6

萄子更衣(どうここうい)に会わせないなら犯行について何も話さない!」

と言う蒲子(かばこ)を後ろ手に縛ったまま宣耀殿(せんようでん)へ向かった。


つくと御簾越しに

「雷鳴壺の伊予と申します。萄子更衣(どうここうい)に面会を願い出ている者がいるのですが。蒲子(かばこ)という女儒(めのわらわ)です。」

取次の女房に話しかけた。


御簾の中から

「伊予か?私が出ていく」

少し焦ったような硬くて低い声が聞こえた。


『何日間ここにいるのよっ!?中で何してるのっ?本当に萄子更衣(どうここうい)は恋人なのっ?』

瞬間的に頭に血がのぼる。


怒りで叫びだしそうだったけどグッとこらえて

「はい。」

答えてじっと待ってる。


御簾の端が少し持ち上がり中から濃紫の直衣(のうし)姿で背筋がピンとして(なめ)らかに素早い身のこなしの公達が(かぐわ)しい薫物(たきもの)の匂いを漂わせてでてきた。


細面(ほそおもて)精悍(せいかん)な顎、筆で引いたような切れ長な目と眉・・・には疲れがにじみ出ていた。


直衣の下の着やせする胸板(むないた)(たくま)しい腕、筋肉の浮きでたお腹を思い浮かべて顔が赤くなりそうだったけど久しぶりに見かけた姿はやっぱりウットリするほど素敵だった。


・・・・ハァ~~~。

女房達の憧れの的だしなぁ。

浮気されててもあきらめないとダメ?

とちょっと(へこ)む。


後ろから蒲子(かばこ)のドスの利いた声で

「おぉ!大納言どの!二人だけで話がしたい。それとも他人がいてもいいのか?都合が悪いのはそっちだろう?」

(すご)む。


兄さまが蒲子(かばこ)をチラッと見て何かに気づいたあと影男(かげお)さんに向かって

「どういう事だ?何があって蒲子(かばこ)を捕まえた?」


私が口をはさみ

(もみじ)更衣から下賜(かし)された小袖(こそで)や、桐壺更衣の小袖(こそで)を盗んだ犯人なの!萄子更衣(どうここうい)と話がしたいというので連れてきたの!」


兄さまが私の目を初めてちゃんと見て少し動揺したように瞬きしたあと

「ああそうか。では私が預かるとしよう。ご苦労だった戻ってくれ。」

蒲子(かばこ)の手首の紐をほどこうとする。


ビックリして

「何?大納言様は蒲子(かばこ)が女装して内裏に潜伏してたのを知ってたの?なぜ黙ってたの?泥棒よ!なぜ検非違使(けびいし)に突き出さないのっ!?」


焦って袖にしがみつこうかと思ったけど人目があるしとグッと我慢した。


影男(かげお)さんが

「そうです。蒲子(かばこ)の目的を大納言様はご存じなんですか?無罪放免していいんですか?」


兄さまが苦々しそうに眉をひそめ

「今はな。・・・・他にどうしようもないんだ。」


その時、庭に大舎人(おおとねり)が現れ兄さまに黙って頷くと兄さまは廊下にしゃがみこみ耳を貸した。


大舎人(おおとねり)がヒソヒソと何かを耳打ちすると兄さまはスクッと立ち上がり

蒲子(かばこ)を捕らえて検非違使(けびいし)庁へ引っ立てろっ!窃盗と女装して内裏へ侵入した罪で厳しく取り調べろっ!」


その大舎人(おおとねり)に命じた。


はぁ?なぜ豹変っっ?!

とますます五里霧中。

(その7へつづく)

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