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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
153/505

EP153:伊予の事件簿「不承の富貴栄華(ふしょうのふうきえいが)」 その1

【あらすじ:入内したばかりのある更衣の父親代わりの後見人という名目で彼女の殿舎に入り浸りの時平様に業を煮やすけど、嫉妬してばかりでは嫌われるし必死だと思われるもの嫌。使用済み下着って盗んだ人は何に使うの?目的が具体的にはよくわからない。私は今日もヤセ我慢して大人ぶる!】

今は、899年、時の帝は醍醐天皇。

私・浄見と『兄さま』こと藤原時平様との関係はというと、詳しく話せば長くなるけど、時平様は私にとって幼いころから面倒を見てもらってる優しい兄さまであり、初恋の人。

私が十六歳になった今の二人の関係は、いい感じだけど完全に恋人関係とは言えない。

何せ兄さまの色好みが甚だしいことは宮中でも有名なので、告白されたぐらいでは本気度は疑わしい。

 春の嵐が冷たい雨とともに木々を(もてあそ)んで(なぶ)る。


その暴虐(ぼうぎゃく)を周囲に見せつけたかと思ったら一転、黒雲の隙間から軽やかな空色と淡い白雲を(のぞ)かせた。


まるで異国の暴君が狂乱の間隙(かんげき)にみせる穏やかな微笑みのような天候に心を奪われていた私は雷鳴壺で(もみじ)更衣に借りた物語を書き写しながらふと、昨日の(にぎ)やかな入内(じゅだい)行列を思い出した。


昨日、入内(じゅだい)した萄子更衣(どうここうい)の行列には物見高(ものみだか)い女房や女官、大舎人(おおとねり)といった宮中の使用人たちが自分の持ち場を離れ宣耀殿(せんようでん)へ向かう萄子更衣(どうここうい)を一目見ようと各々から一番近い廊下や庭へ詰めかけた。


かくいう私も華やかな女房装束の列を『どれが萄子更衣(どうここうい)なの?』と野次馬の隙間から(のぞ)き見してたけど萄子更衣(どうここうい)のお姿はよく見えなかった。


聞くところによると萄子更衣(どうここうい)は大納言・藤原時平(ふじわらときひら)様の親戚の貴族の娘で父君の身分が低いので大納言様が親代わりとなって入内(じゅだい)の準備を取り仕切ったらしい。


なぜそんなに面倒な手順で身分の低い姫をワザワザ入内(じゅだい)させたのか?という疑問は、後宮のアチコチで噂される今一番熱い(ホットな)話題(トピック)で、様々な憶測(おくそく)が飛び交っている。


一番正解に近いと推測されてるのは

『帝が熱心に所望したから』

という熱愛説。


確かに帝が一目惚(ひとめぼ)れなされたのが身分の低い女性なら入内(じゅだい)させるにはそれなりの手間がかかる。

でも帝はまだ御年十四歳の少年帝で一目惚(ひとめぼ)れしたとしても大納言を引っ張り出してまで入内(じゅだい)させるかしら?

今は大好き!でも配偶者にすると将来それなりにめんどくさいと思うけどなぁ~~~帝と言えど。


それより大納言(兄さま)の考えそうなことといえば『一夜限りの遊び』として目一杯楽しめる場所を用意(セッティング)すること。

・・・それって不埒(ふらち)だけど。

女を遊び道具にするなんて!って。


でも表向きは呂不韋(りょふい)みたいに功利主義者で魑魅(すだま)みたいに冷徹な兄さまにとって自分が親代わりしてまでその姫を入内(じゅだい)させるってよっぽどの事情か利益(メリット)があるのね。

ふむ・・・一体何の事情?

気になりつつ女房の仕事に戻り物語を書き写してると同僚の女房・(さくら)が文を届けてくれた。


開いて読んでみると


『大事件発生!昨日萄子更衣(どうここうい)夜御殿(よるのおとど)(清涼殿の天皇の寝所)に上がらず宣耀殿(せんようでん)に籠りきりだったらしいわ!

それはいいとして、明け方、宣耀殿(せんようでん)から大納言様が出てきたのを炭を取りに行った杉葉(すぎよ)さんが見かけたらしいの!

ほら宣耀殿(せんようでん)ウチ(桐壺)のとなりでしょ?だから廊下から丸見えなのよ! 

                                茶々(ちゃちゃ)


桐壺の女房で友達の茶々(ちゃちゃ)が聞き捨てならないことを言ってきた。

(その2へつづく)

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