EP149:清丸の事件簿「至極色の光彩(しごくいろのこうさい)」 その7
『洞院の おわす東の 高き蔵 三条の門を すぎる姉かな』
が指し示す場所が分からずかれこれ四半時(30分)はすぎた気がする。
一体あとどれくらい時間が残されているのか?もわからないまま、文を見つめたまま西寺の北門でじっと考えていると突然ハッとひらめき
『私の知ってる三条は三条大路しかない!でも三条の門って何?でもすべての文字が路を示しているとすると・・・』
『高き蔵』・・・・は『高蔵小路!』
『東の洞院』・・・・は『東洞院大路!』
『姉』・・・・は『姉小路!』
『三条の門』・・・・は門は無視して『三条大路!』
で囲まれた場所に行ってみましょう!とりあえず時間がないし!と決心して歩き始めた。
でも・・・・・西寺からそこまで何里あるの?三・四里(4.8~5.4km)ぐらいあるんじゃないの?もしかして一時(2時間)以上かかるんじゃないの?馬でもないと申二つ(16時)なんて無理!そもそも私一人の女の細足でどーやってこんなに長い距離を移動できると思ってるの?牛車?でもムリムリムリ!歩くのと速さ変わらないし、馬に一人で乗ってけって?私を女間者だとでも?誰よっ!一体こんな無理ゲー押し付けたの!兄さまを人質にして!と急にムカつきがおさまらなくなった。
『そいつが待ってたら絶対殴ってやる!ってゆーかまだ次の謎和歌があるかもしれないの?いつ終わるの?』
イライラしながらドシドシ足音を立てて朱雀大路を北に向かって歩いて六条大路あたりに差し掛かると後ろからパカパカと蹄の音が聞こえ
「まだ歩きますか?それとも乗りますか?」
と上から声がした。
ムッとしたので振り返りもせず
「どーしてもっと早く来てくれないの?クタクタになるまで歩いたじゃないの!ずっと見てたんでしょ?」
つっけんどんに愚痴った後、振り返り
「はじめっからついてきてたんでしょ?もしかしてあなたの役目は私を守ることじゃなくて監視すること?どこかの頭のおかしいこの文の差出人みたいにっ!」
影男さんに向かって怒鳴った。
私と目を合わせることもなく平然と影男さんは馬から飛び降り何も言わず私の腰を持って馬上に持ち上げようとするので
「ちょっと待って放してっ!自分で乗れるから!」
『気安く触らないでっ!』
喉から出かかった言葉をグッと飲み込んだ。
手を振り切って鞍を持ち鐙を踏ん張ってやっとこさで馬の背によじ登った。
ふん!私だってやればできるしっ!と鼻息を荒げる。
影男さんが私の後ろに軽々と乗り手綱を持って馬を走らせた。
しゃべると舌を噛むのでずっと黙って馬の背に揺られてたけどすぐに単調な揺れに眠くなってコクリコクリと舟を漕いでいると
「着きましたよ。ヨダレを拭いてください」
という声で目が覚めた。
言われた通りヨダレを袖で拭きヨイショッと飛び降りう~~んと背伸びをした後
「よしっ!ここが最後かもっ!」
気合を入れなおし謎の和歌が示した場所にある大きなお屋敷の門をくぐった。
(その8へつづく)