EP146:清丸の事件簿「至極色の光彩(しごくいろのこうさい)」 その4
『はぁ~~~?!』
予想外の事態に驚き、一瞬気が緩んだ直後のより増した不安と焦りがぶり返して
「えぇ~~~~、どーしよーーー!」
思わず泣きそうな声がでた。
目にも涙がにじんできて誰かに縋りつきたくなって竹丸を探して周りを見渡しても姿が見えず、路の真ん中に立ち止まった私はボンヤリしてると人の波に押されてどこかへ流されそうになった。
通行の邪魔にならないように路の端によって人々の群れを眺めて竹丸を探してると、前を通り過ぎる人の中に表(上側)は黄色、裏(下側)は紅色の『裏山吹』の重ねの色目の狩衣を着た二十代半ばぐらいに見える男性と一瞬目が合った。
柴売りの男性が言ってた人かしら?
チラッと頭をよぎったけど『まさかね』と思い直した。
「姫~~~っ!」
どこかから弱々しい声が聞こえるので声の方向を振り返ると路の端の排水のための溝がある、壁際に竹丸がしゃがみ込んでいて
「・・・・気分が悪いです。頭がズキズキと痛くなりました。さっきの菓子に毒でも入ってたんですかぁ?」
縁起の悪い事を言うので
「そんなことないわっ!忠平様からもらったのよ!まさか、あり得ないと思うけど・・・」
と不安になった。
私に症状はでてないし私より後に食べた竹丸に症状が出てるなら全部に毒が入ってたわけではなく、たまたま竹丸にあたったのかしら?
もしかして忠平様は実は私を恨んで毒を入れたの?
そんなに残酷な人には見えなかったけど・・・。
「竹丸、一人で大丈夫?もう帰ってくれていいわ!ありがとう今まで!悪いけど急がなくちゃいけないの!馬は市の入り口に置いてきてたわよね?一人で乗って帰れる?」
一応心配して話しかけると竹丸は口元を抑えて青ざめながらも
「大丈夫です。この症状は一度なったことがあります。アレだと思うので帰ってしばらく休めば多分元に戻ります。姫は急ぐなら行ってください。っうっっ」
吐き気を抑えているようだった。
「本当に大丈夫?お白湯を持ってきましょうか?」
ちょっと真剣に心配になりつつ話しかけると竹丸は指で丸をつくり
「大丈夫です。では帰らせてもらいます。」
ゆっくりと立ち上がりフラフラと帰っていった。
いよいよ一人で謎を解いて兄さまを守らねば!と気合を入れもう一度和歌を詠み返した。
「寺よりも 西にかかりて さく藤の 天の原より 降る石ぞ思ふ」
さっきのように意味を無視して文字だけを見て単純に考えれば次の行き先はきっと・・・・
割とここから近い・・・・
ここね!
と大体の場所は何となくわかったけど、細かい場所はピンとこなかった。
けど歩いていかなきゃいけないし『このままじゃ時間がなくなる!行ってみれば何かわかるかも』と焦ってとりあえずその場所へ向かって駆けだした。
(その5へつづく)