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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見と時平の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
145/505

EP145:清丸の事件簿「至極色の光彩(しごくいろのこうさい)」 その3

確信はないけどとりあえず『思い当たるある場所』へ行ってみることにして、動きやすいよう久しぶりに水干(すいかん)(くく)(ばかま)を着て、角髪(みずら)を結った少年風侍従姿に着替え、大納言邸の東門で竹丸と合流すると竹丸はめんどくさがって馬の鞍から降りようともせず

「どうぞ~~後ろに乗ってください。そうそう、(あぶみ)をしっかり踏んで!勢いをつけて登ってくださいっ!もぉ~~~(どん)くさいなぁ~~。ハイッもう一回頑張ってっ!」

と口だけでゴチャゴチャ言い、私は必死の思いで何度も挑戦(チャレンジ)してやっと竹丸の後ろによじ登り座ることができた。

すでに手足がダルくなるぐらい疲れた。ふぅ~~~。


馬を並足でかけさせながらブツブツと

若殿(わかとの)から姫には影男(かげお)?とか言う身辺警護(ボディガード)がついてるって聞きましたけど、その者じゃダメなんですかぁ?」

私は先日の兄さまの反応を思い返し

「ダメよっ!影男(かげお)さんと親しくすると兄さまが不機嫌になるから!」

「そういえば確かに何だかスネてましたねぇ。『どーせ私はずっとそばにはついていられないし、浄見は近くにいるヤツにすぐ懐くからなぁ。つまらんっ!』って愚痴(ぐち)ってました。」


 そうこうするうちにやっと目的の場所に到着し、私は竹丸に

「そう!『東市』よっ!花か柴を売ってる場所を見つけてちょーだいっ!」

と告げ、人混みをかき分けながらキョロキョロし、花か(しば)を売ってる場所を探した。


『たれかへと 雪の花さく 市柴に 春をうるまの 冬の宮人』


という和歌の意味をあまり考えず、使われた文字通りなら『市』で売られてる『柴』か『花』と考え、あとは西か東かを特定するために『東』宮という手掛かり(ヒント)があると考えた。

だから『東市』に来たってワケ。


路の両端に並ぶ商品を行き交う人々の隙間からチラチラと確認しながら進み、やっと水瓶(みずがめ)にたくさんの水仙や百合の切り花を挿した花売り場を見つけたので『やった!』とテンションが上がりすぐに花売りの女性に向かって

「あのぉ・・・!」

話しかけたものの何と言っていいのか思いつかずに戸惑い、次が続かず固まって(フリーズして)しまった。

気を取り直してさっきの和歌を思い出し

「あのっ『たれかへと 雪の花さく』から始まる和歌を知ってますか?」

と聞くと『さぁ?』と首を傾げられたので『いいえ、何でもないですよ~~~』と愛想(あいそ)(にが)笑いでその場を離れた。


そばで竹丸が

「あっちに(しば)(雑木の小枝)を売ってる場所がありますよ!」

そこへ行ってみると、数十本の木の枝を束ねて一抱えの大きさに作った(たきぎ)の束が何段にも積み重ねて売ってある場所があった。

そこの売り主に

「あのぉつかぬ事をお聞きしますが・・・『たれかへと 雪の花さく』から始まる和歌を知ってますか?」

目をじっと見て反応を待つと、人のよさそうな中年男性の売り主が

「ああ、あんたか、これを渡してくれと言われたよ」

(たもと)から結ばれた紙を取り出して渡してくれた。

「ありがとう!」

受け取ってすぐに開いてみようとしたけど『そうだ!』と気が付いて

「この文を渡すようにあなたに頼んだのはどんな人ですか?」

売り主は肩をすくめ

「さぁ?普通の貴族さまじゃないかな?よくわかんねぇよ。若い色男(いろおとこ)だったかな?」

男性だと分かっただけでも収穫。

(ひつじ)三つ(14時)に鳴る鐘の音も聞こえないので間に合ったし。

でもまぁこれで兄さまが殺されることはなくなった!とホッとして紙を解いてみるとそこには


(さる)一つ(15時)までに以下の歌が示す場所に来なければ大納言を殺す。


「寺よりも 西にかかりて さく藤の 天の原より 降る石ぞ思ふ

(*私の解釈:寺から西にかけて咲く藤の花が天の原から落ちてくる石の事を思う)』


とまた謎の和歌(うた)が書いてあった。

(その4へつづく)

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