EP142:清丸の事件簿「失踪の技師(しっそうのわざからくりし)」 追記
「失踪の技師(しっそうのわざからくりし)」のストーリーは『その6』で完結しており、以下は付け足しです。
R15?R18?でしょうか?ご不快な場合は、無視していただけますと幸いです。
話が済んで影男さんが
「それでは私は帰ります。」
と立ち上がり出ていこうとするので私も感謝を示そうと立ち上がってついて行き門まで送ろうとすると、兄さまが背中あたりの衣を摘まんで引っ張り引き留めると、いきなり後ろから腕を回して抱きしめた。
背中に兄さまの温もりとフワッと匂いを感じてドキドキしてると影男さんの背中に向かって
「伴影男、待て」
と鋭く言い影男さんが振り返った。
と同時に私の頬を持ってグイと横を向かせ頭を傾けて私の唇に唇を重ねた。
『は?影男さんが見てるのに何してるの?』
と一瞬イラっとしたけど、兄さまの舌の動きや胸の前にまわされた腕で抱きしめられた感覚や匂いや体温にすぐにぼぉっと夢見心地になり気が付くと振り返って首に腕を絡めて夢中で口づけをかわしてた。
兄さまが不意に唇を放して影男さんを睨み付け
「分かっただろ?伊予は私の女子だ。無駄な懸想はやめろ」
と静かに言い放つと私は背中に冷水を入れられたように急に現実に引き戻され、平気で恥ずかしいところを影男さんに見せたことにショックで顔が熱くなった。
人前で我を忘れて夢中で恥ずかしいことをできる自分のバカさ加減が嫌で過去最大の自己嫌悪に陥った。
ますますバカにされてるかも?と恐る恐る影男さんを振り返ると、影男さんはいつもの『世の中に面白いことは一つもない』ような冷酷そうな三白眼で無表情にこっちを見てるので、取り合えず『より』軽蔑されてることはないのかな?とホッとした。
影男さんが眉一つ動かさずに
「大納言様に何か誤解させたようなら申し訳ありません。しかし私は伊予殿に懸想などしておりません。」
とボソボソと言うので、何だか恥ずかしくなって
「そうよ!兄さま!影男さんは私を守ってくれるように誰かが派遣してくれたのよ!そんなのありえないしどちらかというとバカにされてるし・・・・」
「では別のヤツに交代しろっ!お前は退けっ!」
と兄さまが鋭く言い捨てると影男さんが一瞬驚いたように目を見開き黒目が大きくなる焦りの表情を浮かべるとすぐ元に戻り呆れたようにため息をつき
「大納言様、せっかく伊予殿も慣れてきたご様子ですし、嫉妬が過ぎるのでは?それにハッキリ言わせてもらえばあなたが思うほどいい女子ではありませんよ。顔だけでその他は普通以下、色気に至っては皆無。」
ハイッ余計な悪口~~~~っ!
やっぱりストレートにバカにされてた~~~~~!
兄さまが口の端だけで皮肉気に笑い
「似たようなことを言っておきながらすぐに態度をガラリと逆転させた男を一人知ってるんだがな。」
・・・・多分あの人のことね。
影男さんは鼻の横に皺をよせて侮蔑の表情を浮かべ
「どう思われても構いませんが、伊予殿にそんな気は今後も決して起きません。もしそうなったらその時は大人しく身を引きます。では失礼します。」
と素早く踵をかえして立ち去った。
私は兄さまに向かって
「どうしてあんな事を言うの?買いかぶりすぎよ!『あばたもえくぼ』なのに恥ずかしくないの?!」
兄さまは当たり前だというように
「浄見の近くにいて惚れない男などいない」
と言うので嬉しいような照れくさいようないたたまれない気持ちになって
「それよりも、人前であんなことしないで!あんなことするなら兄さまとは少し距離を置くわ!」
とさっきの恥ずかしさを思い出して恨めしそうに睨み付けると兄さまはムッとして
「影男が好きになったのか?だからイヤなのか?」
「違うわっ!」
触れられるだけで思考力が奪われて我を忘れて夢中になるから・・・なんて言えない。
赤くなって黙り込んでるのを見て両手で頬をはさみ
「それ以外ならダメだ。放さない。」
と言った後、目を見つめ何かに気づき楽しそうにニヤリと笑って
「触れるだけで恋しくて苦しい?でも浄見はせいぜい半年だろ?私が何年耐えてると思ってる?」
と言った後、私たちはもう一度、長い長い口づけを交わした。