表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見と時平の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
139/505

EP139:清丸の事件簿「失踪の技師(しっそうのわざからくりし)」 その4

ニキビ(ヅラ)顔長男(かおながおとこ)に向かって

剣理徳清(けんりとくきよ)からの文では取引相手は決まったとあったんだろ?それが帝ってことか?」

顔長男(かおながおとこ)が頷き

「そうだ。だからもう一度剣理徳清(けんりとくきよ)と交渉しようと今朝、大山崎(おおやまざき)離宮八幡宮(りきゅうはちまんぐう)までわざわざ馬を飛ばしたら宮司が剣理徳清(けんりとくきよ)は今朝から行方不明だと言ってただろう。」

ニキビ(ヅラ)が困った表情で

「そうだよな。困り果てていたら上皇侍従が後からやってきて神官から話を聞きどこかへ向かったからそれについていったんだよな。そしたらこの女を(さら)ったから何か知ってるとハズだと思って銭を払ってゴロツキに一芝居打たせたのに当てが外れたなぁ。」

とため息をついた。

その時小屋の入り口から

「おいっ!どうするっ!凄い数の検非違使(けびいし)が都中をうろついて車をいちいち止めて尋問して誰かを捜してるぞっ!今その女を連れて動けば見つかるぞっ!ここに捨てていくかっ?どうせ何も知らないなら役に立たないぞっ!」

と少し前から見張りに出ていたもう一人の(ぞく)が小屋に入ってきて叫んだ。

ニキビ(ヅラ)が私の前にしゃがみ込みイヤらしいニヤニヤ顔で舌なめずりして顎をつかみ

上玉(じょうだま)じゃねえか。どうせならヤッちまってから捨てていこうぜっ!いっつも稚児ばかりじゃ物足りねーと思ってたところだ。都で芸人女を買うよりは安上がりだぜぇ~。」

(くさ)い息を吐きかけるので、

『やっぱりどこかの寺の生臭(なまぐさ)坊主ねっ!私に手出ししたらどこにでも噛みついてかみちぎってやるから覚悟しなっ!』

と決心した。

顔長男(かおながおとこ)がバカにしたように鼻で笑い

「何を言ってる!さっさと剣理徳清(けんりとくきよ)を探すぞっ!ホラっ早く行くぞ!そんな女ほっとけ!」

(きびす)を返して立ち去ると、見張り男もついていったが、ニキビ(ヅラ)はあきらめるどころか袴の紐をほどいて下半身を出そうとするので私は身をよじって両手を(ほど)こうとし、なかなか(ほど)けないので焦ってまずは立ち上がって逃げ出そうとすると足で肩を蹴り飛ばされて仰向けに寝転ばされた。

近づいてきたら男を蹴り飛ばそうと身構えながら大声で

「助けてっーーーーーー!乱暴者よーーーーっ!誰かぁーーーーっ!」

と今度こそ喉が裂けそうなくらい大声で叫んだ。

ニキビ(ヅラ)が慌てて汚い手で口を押えてくるので噛みつくと

「痛っ!何すんだっ!このアマっ!」

と馬乗りにのしかかってきたので

『くそっっ!頑張ったけどここまでかぁっ!でも大人しくしてると思ったら大間違いよっ!いいタイミングで蹴ってやるっ!絶~~~っ対あきらめないからねっ!』

と思ってるとどこからか腕が伸びニキビ(ヅラ)の首を絞めると白目をむいて横に崩れ落ちた。

崩れ落ちた身体の後ろから影男(かげお)さんの姿が現れた。

やっと見慣れた人の顔を見れた安堵で思わずポロポロと涙をこぼしながらモゾモゾと何とかして上半身を起こし

「やっと来たぁ~~~~も~~~~守るって言ったくせに全然来ないんだもん~~~~~ふぇ~~~ん」

と泣きながら愚痴(ぐち)ると影男(かげお)さんは刀子(とうす)で手の縄を切ってくれながら

「すいません。助ける時機(タイミング)見計(みはか)らいすぎたようですね。上皇侍従殿の屋敷では下人が多く、ここにいた坊主どもは武力に()けてないと見くびっていましたから。」

私は怖い思いと痛い思いから解放されて安心してすっかり気が緩んで

「ふぇ~~~~~ん怖かった~~~~!」

と泣きながら影男(かげお)さんの胸に顔を押し当てて思う存分泣いてしまった。

しばらくそうしてると影男(かげお)さんが恐る恐る髪をなでてくれた。

さあ帰りましょうと立ち上がった時、水干の胸のあたりが私の涙とヨダレと鼻水でグチャグチャに濡れてるのを影男(かげお)さんがすご~~~く嫌そ~~~な顔で見てたけど気のせい?

 大納言邸にやっと帰りつくと兄さまも竹丸もいなくてガッカリしたけど、とりあえず私は自分の(たい)()で汚れた衣を着替えて顔を洗い、それが終わると話を聞こうと侍所(さむらいどころ)から影男(かげお)さんを自分の(たい)()に呼び出して対面して座らせた。

影男(かげお)さんにも着替えを用意しますと言ったけど断られたので私の体液で汚れた水干そのままの姿で向かい合って座り、私はモヤモヤと頭に渦巻いている疑問を一つずつぶつけることにした。

「ええと、まずあの生臭(なまぐさ)坊主たちは一体どこの誰なの?」

(その5へつづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ