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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見と時平の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)

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135/526

EP135:清丸の事件簿「希求の呪文(ききゅうのまじない)」 追記

「希求の呪文(ききゅうのまじない)」のストーリーは『その7』で完結しており、以下は付け足しです。

R15?R18?でしょうか?ご不快な場合は、無視していただけますと幸いです。

 私の看病にきてくれた日から五日後、大納言様が高熱に倒れたという知らせを受け私は急いで大納言邸に帰った。


竹丸の話では東国の僦馬の党(しゅうばのとう)による群盗行為は足柄峠・碓氷峠に関を設置するという対策案が出て議論が一旦落ち着いたらしいので、年子様や太政官たちにそれほど恨まれることはなさそう。


年子様は嫌な顔をしたけど


「私のせいなので看病させてください!」


と必死にお願いして兄さまの病床へ駆け付けた。


熱さましの布を取り換えようと手を伸ばすと気づいた兄さまが


「浄見?」


と重そうな(まぶた)をゆっくりと開けて私を見ると嬉しそうにニヤけて


「寒いんだけど。」


「もう少し単衣(ひとえ)をかけましょうか?重くなるけど。」


と探そうと立ち上がろうとすると腕をつかまれて


「浄見が一緒に寝てくれれば大丈夫」


と無邪気にほほ笑むので腕をほどこうとしながら


「安静にしなくちゃだめよ!早く治さないと。大納言様がいないと皆困るわ!」


兄さまはムッとして


「責任を感じるなら温めてくれ」


と上にかけてる衣をめくって促すので仕方なく横に寝転ぶと熱い腕でギュッと抱きしめられ久しぶりの兄さまの匂いにドキドキしたけど、身体中が高熱で熱いのが心配になった。


影男(かげお)と四郎と何があった?」


と不機嫌そうに囁くので


「ええと、xx寺で足首を(ひね)って影男(かげお)さんに背負ってもらったのとそれを忠平(ただひら)様に見つかって横抱きにされて運ばれた後、足首を手当てしてもらったの。

私は断ろうとしたんだけどね!そんなことお構いなしに助けてくれたからっ!それに甘えたっていうか・・・そのままにしたっていうか・・・」


と字面だけ聞くと何だか自分が尻軽な浮気女のような気がして自己嫌悪に陥った。


高熱の病人を怒らせるようなことを言ってあきれられて嫌われたらどうしよう?と心配になったけど、忠平(ただひら)様からバレたらもっと悪いことになりそうなので自分の口から白状しておいた。


兄さまの焦点の合わない虚ろな目と発熱した赤い顔を様子をうかがいながらじっと見てると


「ふ~~~ん。」


と眉根を寄せ苛立ったように口をとがらせたかと思うとグイッと体を起こし私の上に覆いかぶさるようにして口づけた。


こんなことして大丈夫なの?とハラハラしたけど乾燥してカラカラの唇やネバネバした唾液やビックリするくらい熱い舌を口中に感じて、ぐっしょりと汗に濡れた衣や明らかに高熱に浮かされた人の熱すぎる体温に心配になりすぎて口づけどころじゃない!としか考えられなくなって思わず兄さまを押しのけ


「ちゃんと寝てなくちゃ!ひどくなったらどうするのっ!?」


と体を起こしてそこから出て兄さまに衣をかけ直した。


兄さまは苦しそうな呼吸で憮然(ぶぜん)として目をつぶりながら


「浄見。熱に浮かされた戯言(たわごと)だと思ってもいいが約束してくれ。

せめて・・・・せめて浄見からは、他の男に話しかけないこと、見つめないこと、微笑まないこと、触れないこと・・・そして・・・・」


と途切れ途切れに言いながら眠りに落ちたように寝息を立てはじめた。


静かな寝顔を見つめながら小さな声で


「あなたのいない世界なんて私だって生きていけないわ」


と呟き


『兄さまが私より長生きしますように』


(ねが)い求める呪文のように心の中で何回も唱えると、なぜか悲しみが唐突に胸に押し寄せた。


泣いてしまえばその悲しみが現実になりそうな気がして


唇をグッとかみしめて涙がこぼれそうになるのをこらえた。



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