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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見と時平の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
131/505

EP131:清丸の事件簿「希求の呪文(ききゅうのまじない)」 その4

影男(かげお)さんが手を伸ばして上半身を支えてくれなければもっと(ひど)(ひね)って足首が折れてたかもしれないっ!というぐらい痛かった。

「痛い~~~~っ!!でもありがとうーーー!何度も!」

と腕にしがみついてふと顔を見上げると、眉根を寄せ苛立ったような心配そうな表情で、三白眼の黒目が大きくなってて一気に人間味を感じて『この人って焦ると感情が表に出て何だか可愛らしい』と思った。

たびたび危ないところを助けられてるのでバカだと思われてる上に『どんくさい』という評価も付け足されてる多分。

「歩けますか?」

と足元を見ながら言うので少しひねった足に体重を乗せてみたけど、ズキンッ!と痛みが走ったので思わず

「痛っっ!」

と声に出してしまった。

影男(かげお)さんがまたいつもの無表情の三白眼で私を見つめ

「背負いましょう。ヒョウタンは一つにまとめて持っていてください。」

とヒョウタンの紐を集めて(くく)り私に渡すと、自分はしゃがんで背中に乗るよう指示した。

えぇっっ?!とビックリしたけど、ジッとしゃがんで待たれているので恐る恐る

「すいません。重かったら自分で歩きますからいつでも降ろしてください。」

と小声で恐縮しながらエイヤっ!と背中に覆いかぶさった。

影男(かげお)さんが立ち上がり歩き始めると、衣に焚き染めた香や汗の匂いを感じたけどやっぱり兄さまとは違うなぁとしみじみ感じ、結構歩きにくい山道をスイスイとこの重荷(わたし)を背負って歩ける体力スゴイ!と感心し情けない私!とちょっと(へこ)んだ。

「あのぉ~~重かったらすぐに降りますので・・・・」

とちょいちょい断りを入れ申し訳なさを誤魔化(ゴマカ)しているとやっと宿坊が木陰から見えてきた。

宿坊の前に狩衣姿の人影が見えたのでドキッとして

「あのっ!もう降ろしてくださいっ!そのっ!大納言様に見つかると大変っ!」

と兄さまだった時のことを考えて影男(かげお)さんの背中から降りようとモジモジすると

「ムリしないでください。まだ距離がありますから。」

と降ろしてくれず、とうとう狩衣姿の男性がこちらを振り向き

「伊予かっ!どこへ行ってたんだっ!はぁっっ?おいっ!お前っ!何をしてるっ!」

と小走りで走ってくるので顔がチラッと見えヤッパリ!と焦って

影男(かげお)さんっ!本当に降ろしてください!ありがとうございましたっ!誤解されたくないのでっ!お願いっ!」

と必死で頼んでやっと背中から降ろしてもらったと同時に狩衣の男性が近づき顔がはっきり見えたら忠平(ただひら)様だった。

なんだぁ~~~っビックリしたぁ~~!似てるから遠目で見分けるのは無理なんだよねぇ~~。とガッカリして影男(かげお)さんに

「あの、もう一回背負ってもらえます?」

と小声で聞くとこれ以上ないというくらい冷たい、背筋まで凍りそうな視線で睨み付けられ無視された。

忠平(ただひら)様が怒鳴りつけるように

「お前っ!伊予に何してたっ!一体何者だっ!」

とつばを飛ばすので私が

「ええと、雷鳴壺で舎人(とねり)をしてくれている伴影男(とものかげお)さんです。え~~こちらは大納言様の弟君、上皇侍従の忠平(ただひら)様です」

とお互いを紹介した。

忠平(ただひら)様はそれを聞いてないのか影男(かげお)さんの胸ぐらをつかみ

「お前っ!伊予に何してたっ!背負ってたよな?どーゆーことだっ!」

私が忠平(ただひら)様の腕を抑えながら

「私が足首をひねって痛くて歩けないから背負ってもらってたんです。暴力はやめてください。」

それにあなたに怒ってもらう必要はない。と心の中で呟く。

忠平(ただひら)様が驚いたように私の足をみて

「大丈夫かっ?痛むか?歩けないのか?」

と言い私が返事をする前に体がフワッと浮いたかと思うと、横抱きに抱き上げられていた。

「宿坊まで運んでやる。」

と軽々と持ち上げられ歩くので抵抗もせず、宿坊前で驚いてアングリ口を開ける桜の前に差し掛かるとヒョウタンを渡し

「あぁっ!このヒョウタンを(もみじ)更衣に飲ませてね?!足を(ひね)って歩けないの!」

と言いながら何だか私って意志を無視して勝手に運ばれるよね~~と思いながらまぁいいかっ!楽だしっ!と気にしないことにした。

これが兄さまならよかったのに・・・・とまた思った。

宿坊の(もみじ)更衣の寝床が衝立(ついたて)と几帳を置いて区切ってあるその横にゆっくりと降ろされた私は

「ありがとうございました。こんなに丁寧な扱いを受けるとは夢にも思いませんでした。」

とゆっくりとお辞儀をして皮肉交じりに礼を述べた。

忠平(ただひら)様が上気した嬉しそうな顔で

「座って待ってろっ!捻挫(ねんざ)なら水で冷やして、薬草をつけて布で巻いて足を固定しておけばいいっ!」

とどこかへ取りに行ってその通り手当てをしてくれた。

素足に布を巻きつけながら

「唐の国では女は足を『夫』にしか見せないらしいな」

とチラッと上目遣いで探るように私を見る。

(その5へつづく)

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