表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見と時平の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
128/505

EP128:清丸の事件簿「希求の呪文(ききゅうのまじない)」 その1

【あらすじ:真夜中に聞こえる誰かの声ってどうしてあんなに不気味なの?警戒心で気が張りつめてゆっくり眠れないので何とかしてほしいけど、主の更衣様ほど怯えるのも過剰反応で心配。東国の群盗対策で忙しい兄さまにも会えず不安が絶えない私だけど、とりあえず頑張ってれば何とかなるとお気楽に構えて対処する!】

今は、899年、時の帝は醍醐天皇。

私・浄見と『兄さま』こと藤原時平様との関係はというと、詳しく話せば長くなるけど、時平様は私にとって幼いころから面倒を見てもらってる優しい兄さまであり、初恋の人。

私が十六歳になった今の二人の関係は、いい感じだけど完全に恋人関係とは言えない。

何せ兄さまの色好みが甚だしいことは宮中でも有名なので、告白されたぐらいでは本気度は疑わしい。

 私の勤める雷鳴壺の隣にある梅壺では、異常な暖かさで全ての蕾が花開いた梅がすまし顔で咲き誇っているけど、冷たい雨の後に戻った寒気にはまだ雪の兆しがあった。

宮中では雪が降り積もれば雪を見ながらお酒を飲んだり管弦を演奏したり和歌(うた)を読んだりする『雪見の宴』が催されると話には聞いたけどまだ体験したことは無い。

それに向けて琴や琵琶でも練習しなくちゃいけないのかしら?もう(ツメ)(バチ)もどこへいったのかもわからないけど。

そんなある日、桐壺の茶々(ちゃちゃ)(へや)でお菓子を食べながらおしゃべりしていると茶々(ちゃちゃ)

「雷鳴壺では夜中にあの声が聞こえる?」

と言うので、興味をひかれて

「夜中に何の声がするの?何も聞こえないけど。桐壺で『また』怪異があったの?」

茶々(ちゃちゃ)は自分の妹が騒動の原因だったのを思い出したのか困惑した表情で口だけで微笑み

「違うわよ!桐壺(うち)が原因じゃなくて、南にある昭陽舎(梨壺)の方から夜中にボソボソと読経のような、祝詞(のりと)のような、異国語のような、話声のような音がとぎれとぎれに聞こえるの。」

「夜中ずっと?警備の舎人(とねり)はどうしたの?」

茶々(ちゃちゃ)は不可解だという表情で

「それが~~~、桐壺更衣も怯えてらっしゃって警備の舎人(とねり)に声の方向に見に行かせたんだけど、誰もいなかったと言ってたわ。音も朝までずっと聞こえるというわけじゃなく一刻(2時間)ぐらいで静かになるんだけどね。」

私は初耳だったので

「へぇ~~~。雷鳴壺(うち)は誰も聞いたことないわ!どんな声なの?」

茶々(ちゃちゃ)はええと~~と少し考え

「昨日の声は女性?子供?のような話声だったと思うの。読経するのはダミ声の僧侶という先入観があるから、一定の調子(リズム)でずっとボソボソと話し続けるような声と言うだけで不気味だったわ!それに声が聞こえたのは昨日だけではなく、ここ一週間で三・四回ほどあったと思うわ!ときどき老人男性の声が聞こえたこともあったと思うの。」

私はもっと詳しく訊けばわかるんじゃないかと質問攻めにしてみた。

「大きい声で人がしゃべってる声?おなじ調子(リズム)で長い時間話し続けてるの?会話してる感じ?他の人にも聞こえてる?」

茶々(ちゃちゃ)は頷きながら

「大きい声ではないわ。おなじ単調な調子(リズム)で続いてるわね。会話ではなく一人で話し続けてる感じ。(桐壺)更衣様だけではなく同僚の女房も聞いてるわ。でも更衣様以外は害がないなら別に気にしなくていいんじゃない?と雑な感じで、今のところ呪詛(じゅそ)されてたとしても誰にも何の異変も起きてないわ!」

呪詛(じゅそ)っ!?明らかに誰かに恨まれるようなことをして罪悪感を持ってる人なら怯えて体調を崩すかもしれないってヤツよね?けどそうでなければ標的(ターゲット)に『あなたを恨んでますよ~~』という一報(おしらせ)(?)のない呪詛(じゅそ)は無意味よね?私は今のところ人に恨まれるようなことはしてない・・・ハズ。

ちょっと気にかかったので(もみじ)更衣にその話をすると(もみじ)更衣は

「怖いわね!」

と少し怯えた表情をした。

(その2へつづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ