表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見と時平の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
109/505

EP109:清丸の事件簿「後宮の万葉(こうきゅうのまんよう)」 その1

【あらすじ:友達になったばかりの女房が勤める桐壺で主の更衣様が様々な心霊現象に襲われているという。お節介で帝に心霊現象の解決をお願いして首尾よく大納言様と調査することになった私は、怖いものは得意じゃないけど原因が分からない方がもっと不安。なので幽霊に会ったら近づいて触ってやる覚悟!毒も薬も好きも嫌いも裏も表もよろずの葉!】

今は、899年、時の帝は醍醐天皇。

私・浄見と『兄さま』こと藤原時平様との関係はというと、詳しく話せば長くなるけど、時平様は私にとって幼いころから面倒を見てもらってる優しい兄さまであり、初恋の人。

私が十六歳になった今の二人の関係は、いい感じだけど完全に恋人関係とは言えない。

何せ兄さまの色好みが甚だしいことは宮中でも有名なので、告白されたぐらいでは本気度は疑わしい。

 ある日、大納言である兄さまが帝のお伴をして(もみじ)更衣のいる雷鳴壺を訪れた。

(もみじ)更衣は私が先ほどお願いしていた通り

主上(おかみ)、実は伊予からお願いがあるとこのことで、少し話を聞いてやっていただけませんか?」

と仰ってくださると、帝はまだ十四歳の少年ながら頼りにされることが誇らしいらしくゴホンと咳払いをした後、顎をグイッとあげ胸を反らし

「あ~~、伊予、朕に何か頼みがあるなら目の前に出てきて申すがよい。」

私は『ハイ』と小さく返事をし几帳の陰から帝の御前にでた。

「実は、桐壺更衣様に仕える女房から聞いたのですが、近頃、桐壺で立て続けに怪異が起こっており、桐壺更衣様がご心配のあまり夜もゆっくりお休みになれないと伺いました。」

帝はまだあどけなさの残る端正な目を丸くして

「朕が桐壺へ行った折には何も申しておらなんだぞ!どういうことだ?」

「はい、それは、もし桐壺更衣様がお告げになったら、主上(おかみ)の御渡りが途絶えることを憂慮されたのだと思います。私も桐壺更衣様に申し付かったわけではなく、友人の女房がよもやま話に話していたのをお節介から主上(おかみ)にお伝えいたしたく思っただけでございます。主上(おかみ)なら何か解決策を下さるかと思いまして。」

帝は扇で口元を隠しう~~~んと唸ったかと思うとそばに控える兄さまに

「時平、どう思う?お前がやってくれるか?」

と丸投げすると兄さまは(かしこ)まって頭を下げ

「ははっ。では、伊予を連れてお話を聞きに桐壺へ参ってもよろしいでしょうか?」

「うんっ!頼んだぞ!」

と肩の荷を下ろしたことに安堵したように帝が頷いた。

 私が桐壺の怪異の話を聞いたのは茶々(ちゃちゃ)からで、それは一緒にxx寺へ行った後、宮中に帰った私が気まずさを解消しようと茶々(ちゃちゃ)に文を書き一緒に雷鳴壺でお菓子でも食べましょうとなった時だった。

雷鳴壺の隣の梅壺では茶々(ちゃちゃ)みたいにせっかちな一・二輪の梅が小さな白い花を咲かせている。

私の(あるじ)(もみじ)更衣は例えるなら最後にやっと蕾を(ほころ)ばせる梅花のようにいつもゆったりしていてほのぼのとした空気で周囲の人を癒してくれ、正反対だけどどちらも大好きなお友達。

茶々(ちゃちゃ)のようにせっかちな梅の花は水瓶の水を凍らせる夜の冷たさに耐え、まだ固い他の(つぼみ)たちのなかで誇らしげに自分の美しさを見せつけているが、その枝にモフモフに毛羽立った『毛糸玉に尻尾が生えた』みたいな小鳥がとまっているのを見ると『いいもの見たなぁ~』と一日中幸せになる。

私の(へや)茶々(ちゃちゃ)が来てくれたので、菓子の蜜柑(みかん)と白湯をだしどうやって切り出そう?と考えながら

「あのぉ~~、実は・・・・」

ともじもじしてると茶々(ちゃちゃ)が大きな口をザックリと開けて手を横に振って笑いながら

「いいのいいのっ!ぜ~~んぜん気にしてないわ!それにしてもあのイケメン雑色が大納言様とはねぇ~~~!平次さんですって?ああやって身をやつしていろんなところに二人で出かけているのぉ?っか~~~っ!!羨ましい~~っ!!でも意外ねぇ~~~!大納言様が寵愛する女房が雷鳴壺にいるって聞いた時はもっと色気駄々洩(いろけだだも)れの肉食女(にくしょくおんな)かと思ったのに、伊予ってはっきり言ってアレでしょ?!可愛らしいけど艶っぽくはないしまだ裳着(もぎ)前って言ってもおかしくないくらいの見た目でしょ?」

とズケズケと言われる。

「初めに会った時にちゃんと本当のこと言わなくてごめんなさい。・・・せっかくできたお友達を失いたくなかったの。」

というと茶々(ちゃちゃ)はアハハハハっ!と笑って

「だから別にいいってばぁ~~あやまらなくて!そんなの言わなくったってラブラブの恋人同士の間に割り込めるわけないし、あの時私キッパリフラれてたじゃん!ってゆーか私も大納言様との繋がりがあれば今後ミスった時とかもみ消してくれたり何かと便利でしょ?だから友達でいましょ!」

私が良かったぁ~~とホッとしていると、茶々(ちゃちゃ)は目を細めながら口角を上げニヤリと笑い

「それに・・・伊予だっていつまでも大納言様の恋人でいられる保証はないでしょう?次の恋人の座は私に回ってくるかもしれないし・・・ヒッヒッヒ!」

(たくら)み口調で言うので、私はプッと頬を膨らませ指で茶々(ちゃちゃ)をつつき

「ムゥ~~~~っ!させてたまるかっ!」

とじゃれながら、ズケズケ言い合える間柄(あいだがら)超楽し~~~~~~っ!って思った。

(その2へつづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ