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少女・浄見(しょうじょ・きよみ)  作者: RiePnyoNaro
浄見と時平の事件譚(推理・ミステリー・恋愛)
104/505

EP104:清丸の事件簿「揺動の心柱(ようどうのしんばしら)」 その2

私が茶々(ちゃちゃ)

「他に身元が分かる手掛かりは?」

と聞くと

「もう一人の同じような恰好の男性と一緒に来てたみたい。そばにいて何か話しながら帰っていったから。」

「ふうん。他には?何か特徴を覚えてない?例えば、衣の模様とか、持ち物とか、家紋とか。」

茶々(ちゃちゃ)はウ~~ンと考え

「ちょっと思いつかないわ。歳は三十前後だと思うんだけど・・・。」

私はハッと思いついて

「じゃあ一緒にお忍びでxx寺にいってみましょ!お寺の人に話を聞けば身元が分かるかも!従者の姿で行けば身軽に自由に動けるわよ!」

と提案。

茶々(ちゃちゃ)も面白そう!となって一緒に行くことになった。

か弱い女性二人では、いざというとき腕力が不安なので護衛人員(ボディガード)として竹丸にもつきあってもらうことにした。


 次の二人の休日、水干(すいかん)括袴(くくりばかま)を着て、角髪(みずら)を結った少年風侍従姿に変装した茶々(ちゃちゃ)と私は竹丸をお供に連れて宮中から歩いて・・・は体力に自信がない(きついししんどい)ので、茶々(ちゃちゃ)がしたように牛車でxx寺の参道前まで乗り付けてそこから歩くことにした。

落葉して(むくろ)のような枝を伸ばした木々や、針のような葉に緑を残す松や杉に囲まれた参道はいつ来ても澄んだ空気に神性な気配を宿し、薄荷(はっか)のようにピリッと精神を刺激し、その空気を吸い込んだ体内が浄化されるような気持がした。

「ここからここに落ちたの!」

と指さしながら茶々(ちゃちゃ)が説明してくれて石段が途切れて少し広くなった場所を確認しつつ境内まで石段を昇り切ると、生け垣として囲うように植えられている山茶花(さざんか)が、葉の数よりも多いくらいにびっしりと薄紅色の花を咲かせていた。

「ここで花びらをあつめればすぐにいっぱいになったのにねぇ」

と二人で顔を見合わせため息をついた。

ちなみに花びらは掃除されてほとんど下には落ちてない。

竹丸が退屈そうにあくびをしながら

「ふゎ~~~~~ぁ、早く寺の人に話を聞いて帰りましょう!宮中の内膳司(ないぜんし)特製の揚げ餅ごときでは私の半日の給金には少ないぐらいです。他の菓子もつけてもらわないとぉ・・・・。」

ちっ!と思いながらヒソヒソと

「おやつにとってある干し柿と蜜柑(みかん)と栗もつけるわっ!それと、確認だけど茶々(ちゃちゃ)がここへ来た日は、兄さまは『確かに』ここには来てなかったのね?雑色姿に変装してとか?」

というと竹丸はめんどくさそうに背中とか首を掻きながら

「はい。その日は出仕した後、昼からはずっと大納言邸にいましたよ。私も大納言邸にいましたし。もし出かけるなら私もついていったはずですし。」

とブツブツ言う。

万が一、茶々(ちゃちゃ)の憧れの人が兄さまだなんてことになれば気まずくてせっかくの友達を一人失うかもしれないしそれだけは避けたいっ!

寺の境内を見回し、拝観(はいかん)加持祈祷(かじきとう)の受付やお(ふだ)の販売をしてる政所(まんどころ)(寺務所)を見つけると、中の人に話しかけ

「あの~~一月x日にこのお寺にいらっしゃった方にお聞きしたいことがあるんですが・・・」

中の人は

「それなら五重塔の近くで掃除してる塔丸(とうまる)に話を聞いてください。」

と手で示された。

五重塔の周囲にある生け垣の山茶花(さざんか)の落ちた花びらを(ほうき)で集めていた三十代の坊主頭の裳付(もつけ)衣(僧侶の衣装)の塔丸(とうまる)を見つけると遠慮がちに

「あのぉ、一月x日に・・・」

と話し始めた私の横から茶々(ちゃちゃ)がスッと前にでて

「ねぇ!一月x日にうら若い壺装束(つぼしょうぞく)姿の、顔は私みたいな超絶美少女が石段から落ちてもう少しで可憐な命を落とすところだった事故を御存じでしょ?」

と自分を指さしながらハキハキと話しかけると塔丸(とうまる)が手をとめ茶々(ちゃちゃ)を見つめて首をかしげ

「はて?・・・あぁそんなことがありましたね。私も石段の上から彼らが話しているのを見かけましたが、確かその女性はどこか高貴なお方の侍女と思われるような品のある身なりでしたな。でも拝観してらしたときにお見かけした姿は『超絶美少女』ではなく『どちらかというとキレイかな』ぐらいの女性だったと思いますが・・・」

茶々(ちゃちゃ)はちょっと眉をピクつかせたがめげずに

「その時その美少女を助けた男性二人連れの身元を知りたいんです。何かご存じでしょうか?」

「ええと、男性二人連れの方達というと・・・覚えている限り三組いらしたと思いますが、どの方達ですかな?一組は(おり)烏帽子の二人連れ、もう一組は(なえ)烏帽子、あと一組は(たて)烏帽子でしたが。」

茶々(ちゃちゃ)は目をつぶり(あご)に指を添え『ええと・・』と呟くとハッと思い出したように

「覚えてないわっ!全く!でも衣装は薄い灰色の筒袖(つつそで)と紺色の括袴(くくりばかま)だった気がするけど。」

今度は塔丸(とうまる)が目をつぶり『それなら・・・』と考え始め、カッと目を開くと

「わかりませんなっ!誰だか!皆同じような色の衣だったでしょう?」

とどちらもいい加減な記憶力。

「まぁでもそれぞれの身元は知らないので思い出しても同じことです。せめて話していた内容だけでもおぼろげに記憶しているので教えてあげましょう。」

私と茶々(ちゃちゃ)は顔を見合わせ、まぁ仕方ないよねとウンと頷き

「ではお願いします。」

(その3へつづく)

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