川辺の『あの子』
[注意]
R-15、残酷な描写は保険です。
ぼくは てをのばす
きみのてをとりたい
ぼくは
きみを
すくいたいだけだったのに
どうして
てを
とろうとしないの
ぼくは
………ぼくは!
▪▪▪
「………ッ!?」
僕は目を覚ました。
時計を見ると、朝の午前6時。
今日は休みだから、もう少し遅く起きたかったのに。
「………んだよ、またあの夢か」
ベッドから起きながら、そう僕は呟く。
▪▪▪
あれは幼稚園の頃。
幼馴染みの女の子 (名前は思い出せない) と川で遊んでいた時の事。
その日は、前日からかなりの雨が降り注いでいた為か、増水していた。
『危険』なはずなんだけど、僕と彼女は川辺で石拾いを始めたんだ。
彼女は、足を滑らせて川へ落ちた。
そして、僕は彼女を救おうとした――
その後の記憶は無い。
その子が亡くなったのは、後々になってから知った。
(僕は近所のおじさんに助けて貰ったらしい)
で、『夢』の話だが……
ここ最近、その時の記憶が夢となって現れる。
週に2~3回、酷ければ1週間毎日連続で見ることもある。
▫▫▫
(……あの夢って、なんかの暗示かよ)
そう思いながら、出掛ける支度をする。
今日は本を買いに行く。
支度を済ませ、玄関へ向かう。
「気を付けるのよ」
母がそう言った。
「うん。……行ってくる」
▪▪▪
外へ出た。
昨日の雨が、嘘のように晴れている。
(今日は近道をしよう)
そう思って、路地を抜けていく。
大きな川がある道沿いに出た。
(ここって、確か……)
例の事故があって、夢で出てくる川だ。
雨のせいか、やや増水している。
何だか、嫌な感じがする。
急ぎ足で行こう――
と、思った時。
園児用の服を着た女の子が、ぼうっと見える。
(あの、特徴的なお下げ……もしかして)
あの『女の子』だ。
こっちを見ている。不気味な眼が、何かを訴えて……
(に、逃げよう!)
本能的に逃げようと、反対方向に向いて走ろうとした。
(………ッ!?)
足元に、『女の子』が居る。
『あのとき たすけなかった』
そう、女の子が言う。
「違う!助けようとしたよ!」
そう言った時、川の方へ身体が引っ張られる感じがした。
『たすけなかった たすけなかった たすけなかった……!』
(………くそ、身体………動いてくれ!)
その時、近くに男性が通った。
「た、助けてください!」
と、僕は手を出した。
……が、その男性は僕が見えない様な素振りで、去っていく。
(落ち……る……!)
川の中に、身体が入った。
水面が目線から遠退いて、息が続かな―――
▪▪▪
あの川って、雨の日や雨上がりに近付いちゃいけない話って知ってる?
川の増水で呑まれて死んだ園児の地縛霊が、川へ引き込むらしいよ。
読んで頂き、ありがとうございました。




