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叔父上にお願い。

読んでいただいてありがとうございます。更新が遅くなりました。ちょっとずつでも更新していきたいのでよろしくお願いします。

「おはようございます、シキ。よく眠れましたか?」


 カイレオールとの朝食の為にシキが食事の用意された部屋に入ると、すでに来ていたカイレオールが朝から爽やかな笑顔で出迎えてくれた。

 シキ的には全然違和感などないが、今までこんな笑顔を見た事が無かった侍女や侍従たちが一瞬、驚いた顔をしたが、さすがに訓練されているのですぐに何事もないような振る舞いをしていた。が、隠さずに驚いた顔をしていたのは、カイレオールの隣に座っていたおじ様の方だった。


「…驚きましたよ、陛下。陛下でもそのような顔をなさるのですね」


 イケおじ様は声までイケてる。年齢は45歳を超えたくらいだろうか。絶妙に渋い美おじ様具合に特にそっち系の趣味でもないシキでも感動してしまったくらいだ。

 うわー、ユキが大喜びしそう。ひょっとしてユキの言っていた宰相様ってこの人のことかな?

 帝国の宰相閣下に夢中になっている妹の顔を思い浮かべたが、ものすごく良い笑顔しか思い浮かばない。そりゃこんな美おじ様が推しメンならおバカな側妃に夢中な国王なんて目じゃないはずだ。


「叔父上、叔父上も番に出会えば分かりますよ」

「そういうものですか?陛下でさえそのような顔をなさるのですから、我々などそれこそデレデレになるかもしれませんね」


 そうおっしゃって微笑む美おじ様はとてもかっこ良い。


「シキ、この人は私の叔父で帝国の宰相を務めているルフィオン叔父上です」

「初めまして、陛下の番のお嬢さん。ルフィオンと申します」


 美おじ様と美少年の戯れを内心興奮しながら眺め、妹のことを思い出していたシキに美少年の方がそう言って美おじ様を紹介してくれた。


「初めまして、ルフィオン様。隣国で巫女見習いをしていますシキと申します」

「ほう、なるほど。陛下の大切な方は隣国の神殿にいらしたのですね」

「ええ、そうです、叔父上。シキの今後のこともあるので、さくっとやっちゃってきて下さい」

「了解いたしました。早速、彼の国の王妃の元に行って参ります」


 僅かな会話で隣国の運命が決まった。さくっとやられるらしい。というか、この方が隣国に行くとなると一番喜ぶのは妹だ。推しメン見放題、もうそれは異世界に1人放り投げられて頑張ってきたユキに対するご褒美でしかない。その上、ダメな国王をどうにかしてくれるのならば万々歳だ。実権有りの名ばかり王妃であるユキは、同時に第一等級の聖女でもあるので出来ればこっちの国に来て欲しい。そして余生と称して好きなだけ推しメンを眺めて暮らせばいい。


「王妃とはずっと手紙でのやり取りはしておりましたので、彼の国を制圧するのは簡単です。何でしたら議会もすでに我が国の一部となることを了承しているくらいなので無血も良い処でしょう。問題は王族ですが…まあ、無能なだけで王族で無くなれば害も無さそうですし、伯爵くらいの地位と王国内から適当な領地を与えておけば問題ないでしょう」


 本来なら血生臭い戦争になってもおかしくないのだが、いかんせん相手の国王が無能すぎる。有能な王妃と貴族はすでにこちらの味方なので王の周りに集まっている輩は似たり寄ったりの無能な者ばかりだ。国王は無能なりに良い篝火となってくれて害虫を引き寄せてくれた。その功績に免じて生かしておいてやろう。これからも無駄にチリチリ燃えて害虫を引き寄せて欲しいものだ。バラバラだと見つけるのも面倒な仕事になるので、一つにまとまったところで一網打尽にしたい。


「あ、一つお願いがあるのですが」


 シキが手を上げて言うと、カイレオールが優しく微笑んだ。


「シキが望むのなら何でも叶えますよ」

「そ、そこまでのことではないんだけど…神殿の聖女たちは保護して欲しいんです」

「それはもちろんかまいません。聖女たちには聖霊が付いていますから下手に怒らせたくはありませんし」

「本物の聖女たちはちゃんとしてるので大丈夫ですよ。巫女たちはちょっと違うのが混じってますけど」


 ちゃんとした巫女たちや見習いたちもいるので一緒くたにされるのはさすがに可哀想だ。

 こっちの神殿でもいいのでまともな扱いをしてくれる場所に移してあげてほしい。


「その辺りはうちの国の神殿に任せますので大丈夫ですよ。教皇が張り切って選別してくれるんじゃないかと。前々から隣国の神殿の有り様を嘆いていましたから」


 帝国の神殿を仕切っている女教皇は神殿をすっきりさせてくれた張本人なので信頼がおける。シキのことも教皇にだけは話ておきたい。さすがに原初の聖霊2体と契約している規格外の聖女のことを知らせないわけにはいかない。いかないが、シキを神殿に引きこもらせるつもりもない。大聖女だろうが何だろうがシキは大切なカイレオールの番だ。シキを神殿に盗られたら力尽くでも取り返す気満々だ。もっともあの教皇ならばそんな心配はないが。


「では叔父上、今日中に出発して下さい」

「はい、陛下。後のことはお任せ下さい」


 隣国のことは叔父に任せて今日はシキと何をしようかな、とカイレオールはのんきに考えていたのだった。

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