第三百二十九話 追加のトーナメント参加者
今日は、先日施設見学に来たイルゼ達がやってくる。
入園希望者は、新しい友達に皆ワクワクして待っていた。
でも、ちゃんと訓練はやりましょう。
「とー」
「ちょっ、やりづらい」
ブレットさんの訓練も、徐々に実戦的になってきた。
剣を持ったエステルと対峙したり、バトルハンマーを持ったミケと対戦している。
そんな中、大苦戦しているのがレイアとの組み手。
レイアは前世でいう太極拳とか拳法というか、力よりも技やテクニックで対峙している。
どうもブレットさんは力対力の勝負が得意で、レイアみたいなタイプだと上手く力を発揮できない様だ。
「ハアハアハア、まさかレイア執務官がこんなにも強いとは」
「ぶい」
相性の悪さもあったが、ブレットさんはレイアに完敗だった。
ブレットさんは大の字に倒れていて、かなり悔しそうだ。
「うーん、ブレットちゃんは目に頼っているね」
「少し感覚を鍛えたほうが良いな」
「センスはあるから、直ぐにものにできますよ」
声をかけてきたのは、いつの間にかうちにきていた龍王妃様達だった。
少し前から、ブレットさんとレイアの組み手を見ていたらしい。
因みにイルゼ達は、待ち構えていた皆に早速もみくちゃにされている。
暫くの間、熱烈な歓迎を味わってもらおう。
「実は俺もちょっと思っていたんです。ブレットさんは動体視力が良いので、逆にハンデになる事があると」
「レイアちゃんも、そのあたりをうまくついていましたね」
「元々レイアは相手の裏をかく戦術が得意なので、ぴったりはまった感じはしますけど」
緑龍王妃様と話をするが、相手の裏をかくレイアの戦いははまると結構な威力を発揮するからな。
俺なんかは動体視力なんて全くないから、いつの間にか感覚に頼った戦いになった。
とにかく色んな情報を集めて分析して戦っているし。
「ブレットちゃん、少し訓練してみましょうか」
「はい」
緑龍王妃様がブレットさんに声をかけると、他の龍王妃様も近づいていく。
これから特訓を行うと思ったら、瞑想を始めていた。
「ブレットちゃんは強くなろうと少し焦っているので、リラックスしてみましょうか」
「焦って怪我でもしたら大変だ」
「気持ちをコントロールするのも、優れた戦士の必須条件ですよ」
ここで怪我なんてしたら大変だから、王妃様達が少し気持ちを落ち着かせている。
レイアにも負けて凹んでいそうだったし、ここは龍王妃様達に任せておこう。
「マリリさん、龍王妃様達がきたから宜しく」
「はい、もうお部屋は用意出来てますし、イルゼさん達のお部屋も大丈夫ですよ」
タオルと飲み物を持ってきたマリリさんに伝えると、既に出迎えの準備は完璧だという。
この辺は、マリリさんとフローレンスにお任せしよう。
「今日は歓迎会だな」
「あ、そっか。間違いなくスラタロウとかが準備してそうだ」
「パーティー楽しみ」
うちにイルゼ達がきたと伝えたら、宰相から当たり前の様にパーティーが開かれるだろうと言われた。
多くの人が来るだろうが、もう気にしないことにしておこう。
「人神教国での捜索結果が入ってきた」
今日は、閣僚が集まっての会議もある。
というか、今まで当たり前の様に俺とルキアは閣僚会議に参加しているのだが、良いのだろうかと疑問に思ったが気にしないことにしよう。
「調査は、帝国と公国とも共同で行っている。サトーが押収した資料や薬なども解析しているが、これは少し時間がかかる」
軍務卿が説明するが、資料と薬は結構な数があったからこれはしょうがない。
「結論から言うと、人神教や闇ギルドは滅んでいない。どうも、隠れ支部の様な物が存在しているらしい」
「支部の場所は掴めているのか?」
「いえ、そこまでは」
「どのくらいの規模かも分からんか。引き続き調査だな」
人神教と闇ギルドが生き残っている。
閣僚も予想はしていたのか、大きな驚きはなかった。
存在しているという事だけでも分かれば、今後の対策も立てやすいと思っている様だ。
「今までと特に対策は変わらん。国境そして街の巡回を継続し、不審者の洗い出しを行う」
「帝国と公国との連絡も、今まで以上に緊密に行います」
今まで散々人神教国とやりあってきたから、今後の対策も対して変わらない。
俺達も普通に巡回すればいいし、何かあれば動けばいいだけだ。
各領地にも通達すると言うことだが、後で収穫祭が開かれるブルーノ侯爵領に行ってこよう。
「サトー、ブルーノ侯爵領に行くのか?」
「はい、早めに伝えようと」
「なら、儂らは先にサトーの屋敷に行っているぞ」
会議が終わって、直ぐに陛下に声をかけられた。
もう皆さん宴会モードだな。
陛下も閣僚も、顔がさっさと飲みたいと訴えている。
もうそろそろ終業だし、気持ちが何処かに飛んでいる。
という事で、帰る支度をしてレイアと共にブルーノ侯爵領へ向かった。
「祭りも近いので、できるだけ巡回を増やします」
「今は構成員も少ないから、ゲリラには注意だな」
流石はルキアさんとアルス様。
直ぐに対策してくれるという。
と、ここでルキアさんからとある提案があった。
「実は、トーナメントにビューティーさんが参加する事になったんです」
「え? ビューティーさんが?」
「ああ、期限ギリギリになって申し込んでな。他の参加者のレベルをみたら、とてもじゃないがビューティーの相手になりそうもない」
「ですよね……」
「今回はランドルフ領の人も見に来るので、シルク様に参加頂きたいんです」
「その理由なら、シルク様も大丈夫かと。うちに帰ったら聞いてみます」
「パパ、レイアも参加したい」
「辞めなさい。他の参加者が可愛そうだ」
「えー」
ビューティーさんが参加するとなると、生半端な相手じゃ駄目だろう。
シルク様も、参加を拒否する事はしないだろう。
そしてレイアよ、お前も参加したいと手を上げるな。
せめてエキシビションに参加するくらいにしなさい。
「そういう理由でしたら、喜んで参加させて頂きます」
「いきなりで申し訳ありません。宜しくお願いします」
結局ルキアさんとアルス様も歓迎会に参加する事になったので、皆でシルク様に話をしてオッケーを貰った。
ちなみに、俺達が来る前に当たり前の様にパーティーは始まっていた。
そしていつの間にか、ドラコやルシアの母親も他の龍王妃様達とお酒を飲んでいた。
偉い人達も、ガハガハ笑いながらお酒をガバガバ飲んでいる。
明日が休みだから、遠慮なくいっているぞ。
子ども達は、大人から離れた安全地帯に避難して料理を食べている。
イルゼ達も、安全地帯で食事をしていた。
結局パーティーは、いつもの無礼講で終わっていった。




