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第三十一話 残された命

 さて、ビアンカ殿下とフランソワとスラタロウのトリプルサンダーで容疑者は無力化出来たが、こちらは体がまだ動かない。相当強力なエリアスタンだったみたいだ。


「フランソワ、念のためにあやつを糸で縛っておけ」


 ビアンカ殿下はまだ周りが動けないとわかっている様で、念のために容疑者を縛るようフランソワに言っていた。

 しかし、今回はビアンカ殿下大活躍だったな。

 こっちも今後はスタン対策を考えないと行けない。


「お父様? さっきの大きな音は……。ええ! みなさん大丈夫ですか?」


 さっきのトリプルサンダーの音にびっくりしたのでしょう。

 サリー様がお屋敷から裏庭に顔を出し、そしてこの惨状にびっくりしています。


「おお、サリーか。尋問でちと色々あってな。皆は痺れているだけだから大丈夫じゃ」

「そうなんですね。あの魔物は……」

「あやつのことは大丈夫じゃ。拘束もしているので問題はないぞ」

「そうですか。よかった」


 ビアンカ殿下がサリーに状況を説明している。

 うん、初見ではあの容疑者を見ると、とても人間とは思えないよね。

 人型の何かとしか見えないし。

 ふとサリー様は、シルの近くにいた操られていた雛鳥に気がついたみたいだ。


「あれシルちゃん。この鳥さんは?」

「この鳥は犯人に操られていたんだぞ。無理やり動かされてこの状態だぞ」

「えー? 誰か鳥さん直せないの?」

「もう普通の回復魔法では無理だぞ。我でもどうしようもないぞ」

「そんな……。鳥さんがかわいそう……」


 サリー様は息も絶え絶えの雛鳥を胸に抱き締めて泣いている。

 でもあれだけの強力なエリアスタンを無理やりやらされ、もう体力も残っていなさそうだ。


「サリーよ、この鳥も被害者じゃ。でも妾でもどうにもならん」

「ビアンカ殿下でも……。鳥さん、なんとか助かって!」

「うむ? これはなんじゃ!?」


 ビアンカ殿下も鳥を抱きしめるサリー様を慰めようとするが、サリー様はなんとか雛鳥を助けようとしている。

 すると、突然サリー様の体が黄金色に光出し、流石にビアンカ殿下もびっくりしている。


「お願い、鳥さん助かって!」


 サリー様が目を瞑って祈り出すと、光はお屋敷の敷地ギリギリまで広がっていく。

 時間にして十秒位だろうか。

 その間辺りは眩しく神々しい位に光っていた。

 徐々に光は収まっていき、光が収まると同時にサリー様も目を開けた。


「チチチ」

「わあ! 鳥さん元気になった!」

「おお、なんということじゃ」


 ビアンカ殿下もびっくりしている。

 あの瀕死状態の雛鳥が全回復しているのだ。

 羽も全て綺麗になっていて、あの焦げた状態はまるで分からない。

 雛鳥はサリー様が治してくれたのがわかっているのか、顔を寄せたサリー様に寄り添っている。


「あれ? 体が動くぞ!」

「本当だ!」


 さらに治ったのは雛鳥だけでなかった。

 エリアスタンで痺れていた全員が回復していた。

 勿論俺も回復している。


「サリーお姉ちゃん!」

「わあ。ミケちゃん大丈夫?」

「うん、サリーお姉ちゃんが治してくれたから。鳥さんも元気になったんだね!」

「そうだね! とても元気だね!」


 ミケがサリー様に抱きついていった。

 痺れが治って元気いっぱいだ。


「でも今回ミケは何も出来なかったよ……。ビアンカお姉ちゃんを守れなかった」

「ミケよ、しょうがないのじゃ。妾とて運がよかっただけじゃ」

「うん……」

 

 今回ばっかりは何も出来ないのは俺たちも一緒だな。

 結果ビアンカ殿下を危険に晒してしまったわけだし。

 ミケがしょんぼりするのもしょうがない。


「ふう、やれやれ。想定外の事態でしたなアルス殿下」

「全くだ。これからはこういう事態に備えないと行けないな」

「はい。今回はビアンカ殿下に助けられました」

「そうだな。それに卿の娘のお陰で、ビアンカの手を汚さないで済みそうだ」


 バルガス様とアルス王子が話していたが、今回助かったのは俺らだけではなかった。


「うぅぅ……」


 バルガス様とアルス王子の視線の先には容疑者の姿が。

 サリー様の回復魔法でなんと魔物の姿から元の人間の姿に戻り、トリプルサンダーで受けた傷も全回復していた。

 まだ意識は戻っていないが、命は大丈夫だろう。

 これで容疑者が死んでしまったら、ビアンカ殿下が直接手を下した事になる。

 いくら王族とはいえ、まだ八歳の女の子だ。

 心に傷を負ってしまった可能性もある。

 それを防げた事に、バルガス様とアルス王子は安堵していた。


「サリーよ、よくやったぞ」

「あ、シルちゃん。急に魔法が使えたからびっくりしたよ」

「サリーは既に魔法を使えるだけの素養があったのだぞ。それがあの鳥を助けようと思ったことで使えるようになったのだぞ」

「助けようと思った事で?」

「前に話したが、聖属性は相手を思うことが必要だぞ。今回必死に助けようと思ったことで聖魔法が発動したんだぞ」

「そっか、教えてもらっていたね。シルちゃんありがとう!」

「立派な弟子で、我も嬉しいぞ」


 そういえば前にシルが言っていたな。聖魔法は思いも必要だって。

 それだけサリー様も真剣に助かってくれと思ったんだ。


「でもサリーよ。今回は大きな範囲で聖魔法が発動してしまったぞ。結果的にはよかったが、魔力の制御訓練は頑張るんだぞ」

「はい、頑張ります!」

「うむ。そのいきだぞ」


 何このイケメンオオカミ。弟子を褒めつつ改善点を指摘し、さらにやる気を出させている。

 俺には到底無理だ。


「さて、ひとまずは終わりだな。他のやつの尋問もあるし、暫くは忙しくなるぞ」

「「はい!」」

「街に残党が残っているかもしれない。暫くは警備を強化する。明日には別部隊も合流するだろう。容疑者の尋問が終わり次第、バルガス卿の騎士と合同で捜索に入る」


 アルス王子が部下の近衛兵に訓示し、明日以降の予定を伝えている。

 色々あったけど、これで一連の事件は一区切りだな。

 後は偉いお方にお任せだ。


 容疑者はバルガス様のお屋敷の牢に収容された。

 まだ意識は戻らないが、じきに起きるだろうとの事。

 牢の前は二十四時間体制で監視されるそうだ。


 そして俺たちは食堂に集まって夕食を頂いている。

 アルス王子もいるので豪華な作りだ。

 リンさんとビルゴさんも一緒に頂いている。

 元々貴族とその従士だったリンさん達はテーブルマナーもバッチリだったのだが、ビルゴさん達は慣れないテーブルマナーに悪戦苦闘。

 テーブルマナーはそこまで気にしないでと言われたのだが、そう言われると逆に気になってしまうのが人間の性。

 哀れビルゴさん達は、あまりくつろげない夕食だったみたいだ。


 リンさん達とビルゴさん達は夕食後にそれぞれの宿泊している所に帰っていった。

 お屋敷に泊まってはと言われたが、特にビルゴさん達が断っていた。

 まあ、豪華な部屋ではなかなか寝れないよね……


「ふああ、ねむねむ」


 今日は朝からイベントが一杯あった為か、とても疲労困憊。

 ミケもおねむのようだ。

 明日は取り調べがメインになるので、俺たちの出番は何もない予定。

 ……多分ないよね?

 もう普通に冒険者やりたいんです!

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