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第三百六話 夜勤後の睡魔との戦い

「眠いよ……」


 結局、部屋の外に出しても子ども達が夜警に連れて行ってくれなかったとブーブー騒いでいたので、貴重な睡眠時間が削られてしまった。

 眠い頭をなんとか覚醒させて、レイアとともに王城に向かった。


「昨晩は、大活躍だった様だな」

「頑張ったのは、馬とスラタロウとホワイトですけどね」

「サトー達も犯罪組織を潰したというし、結果的に上出来だろう」


 上機嫌の宰相に迎えられて、仕事を開始する。

 売人を確保した上に、結果的に王都に巣食う悪を一網打尽にできたのだから。

 日中の巡回では、この辺までは分からない所だからな。


 さてさて、仕事を開始する。

 最初は頑張っていたけど、段々と数字の羅列をみると催眠術にかかってくる様だ。

 ヤバいぞ、このままじゃ落ちる……

 ぐー。


「パパ寝ない」

「いってー!」


 夜警に連れて行ってくれなくてとっても不機嫌なレイアが、寝落ちしそうな俺の尻に何かを突き刺した。

 よく見ると、風魔法で指に鋭利な爪を作っていた。

 なんてもので、お尻を刺すんだよ!

 慌てて、聖魔法でお尻を治療する。


「ハハハ。レイアよ、サトーは心配してくれていたのだ。そこは理解するのだな」

「むう」


 子どもっぽい反応するレイアを、宰相がたしなめていた。

 他の職員も、思わずクスクスと笑っている。

 流石に目は覚めたけど、こういう起こし方は勘弁してほしい。


「流石にサトーは眠そうだな。そしてレイアはふくれっ面か」

「ふふふ、子どもっぽくてかわいいですな」


 未だにほっぺを膨らませているレイアも参加しての会議が始まった。


「いやあ、この数は凄いな。三人の売人を捕まえるだけなのに、犯罪者を百人以上捕まえて、浮浪児を十人保護したか」

「あの、八割は馬とスラタロウとホワイトの活躍ですよ」

「謙遜するな。従魔も含めて主の活躍だ」

「むう」


 夜警の成果に、陛下はホクホク顔だ。

 対して、レイアは未だにふくれっ面だけど。

 馬とスラタロウとホワイトがいれば、犯罪者は逃げられないだろうな。


「尋問の結果、人神教国は王国を再び混乱させようとしていたという。あと、やはり人神教国は経済が滞ってきたようだ」

「それで、新たなビジネスを考えたのか。その結果が薬物売買か」

「強くなる薬といって売りさばいていた様だな。更に売人もスカウトしていたか」


 色々なビジネスを考えるよな。

 まともにやれば、普通に儲かりそうな気がするけど。


「現在、人神教国に向けて抗議文を送っている。期限を決めて報告しなければ、こちらから乗り込むとしてある」

「期限は十日後だ。勿論、帝国と公国にも伝えてある。なので、サトー達はいつでも乗り込める準備をしてほしい」

「分かりました。王都と国境も人を出します。それと、ドラコとルシアの母親も是非参加したいと」

「人数は多いほうが良いだろう。報酬はスラタロウの料理だと思うし、問題ない」


 ドラコとルシアの母親は、合法的に暴れる機会を狙っているからな。

 白龍王やドラコとシラユキの祖父母にも、念の為に伝えておこう。


「ミケに絡んだ冒険者は、薬の売買に加えて依頼先での窃盗もあった。被害金額は計算中だが、貴金属も含まれるので相当年数の強制労働になる」

「初心者の冒険者が陥りそうな罠とはいえ、これは仕方ないですね」

「サトーが保護した三人も、登録チームのメンバーという関係で処罰対象になる。まあ、二ヶ月の冒険者ライセンス停止が妥当だな」

「止められなかった責任が付きますね。俺から伝えます。暫くは、うちで修行兼ねて色々とやって貰いましょう」

「レイアが養ってあげるの」


 ある程度どうなるかは伝えているが、当分は冒険者についてもう一度しっかりと教えてあげよう。

 あの三人なら、問題はなさそうだ。


 その後もなんとか気力で仕事を乗り切り、ふらふらの状態で帰宅する。

 仕事終わりに冒険者ギルドから三人に対する通達がきたけど、予想通りにライセンス停止二ヶ月でランクはそのままだ。

 ちなみに犯罪をやった彼は、冒険者ギルドからの追放と被害金額の賠償。

 ギルドが被害金額の肩代わりをして、その分を強制労働から徴収するという。

 幸いにも宝石類はまだ持っていたので、直ぐに被害者に返還された。

 というか、被害受けたのが農商務卿のところなので、後で菓子折り持っていかないと。


 帰宅して、未だに抗議をしている子ども達を後にして、三人に今後の事を話した。


「何となく、ライセンス停止は想像はできていました」

「明日にも、被害者の所に謝罪に行かせてください」

「逆にサトーさんに色々とご迷惑をかけて、申し訳ないです」


 しゅんとしてしまった三人だが、冒険者を続ける事ができるのは素直に喜んでいた。

 ここからは、一歩一歩進んでいかないと。


 今後の事を含めて皆に話さないといけないので、パーティールームに集まって貰った。


「先ず最初に、この三人は二ヶ月の冒険者ライセンス停止になりました。保護観察も兼ねてうちで働く事になります」

「マックスです。冒険者の時は戦士型でした。宜しくお願いします」

「ヒューゴです。シーフをやっています。お願いします」

「パメラです。魔法使いとアーチャーをしています。ご迷惑をおかけしますが、宜しくお願いします」

「「「わー!」」」


 子ども達は、三人を歓迎している。

 マックスは濃い青色の短髪で、筋肉質の如何にも戦士って感じだ。

 ヒューゴは緑色のくせ毛で、少し痩せ型。

 うちでシーフっていうと、クロエが該当するくらいしかいないから、ある意味貴重な存在。

 パメラは、暗めの金髪ボブカットでオーソドックスな魔法使いとアーチャー。

 うちで弓を使うのは、レイアしかいないな。

 

「そして、これからが本題になる。今回の件を受けて、人神教国に抗議文を送った。返事がない場合、もしくは謝罪になっていない場合は、人神教国に乗り込むことになる」


 おい、何で皆はキラキラした目になっているんだ?

 やっと人神教国と全面対決になることを、そこまで待ち遠しく思っていたのかよ。


「人神教国に乗り込む本隊、王都の守備隊、国境守備隊に分けることになる。どこも厳しい戦いが予想される」

「人員分けは後ほど行うけど、戦いが早まる可能性もあるので、直ぐに動けるように準備するように」

「「「「おー!」」」」

「マックス達も、暫くは戦闘訓練だな。すまんが非常時には出てもらうぞ」

「「「はい!」」」


 さて、連絡事項はこんなものかな。

 と、ここでミケが手を上げてきた。


「お兄ちゃん、歓迎会は?」

「今日はちょっと無理かな。やるなら明日だよ」

「でも、あそこに王様がいるよ!」

「はっ?」


 ミケの指さした方を見ると、もう定位置となっているテーブルに座っている偉い人が、パーティーまだなのって顔をしていた。

 そして続々と入ってくる、追加の偉い人達。


「スラタロウ、今から準備できる?」


 スラタロウに聞くと、既に準備万端だという。

 最初から、歓迎会をやる気満々だったな。

 ということで、歓迎会が開催されることに。

 農商務卿もきていたので、三人は土下座をして謝罪していた。

 何とか三人を起こして、明日改めて伺うという事で落ち着いた。

 その後は子ども達に囲まれながら、楽しそうにしていた。

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