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第二百九十九話 公国王の謝罪

 議場を退出すると、俺は騎士団長と共に行政府内にある王族専用の控室に通された。

 程なくすると、公国王と公国王太子にスッキリとした顔になった王妃様達が入ってきた。

 騎士団長と共に、立ち上がって挨拶をする。

 それぞれの席に座り、侍従がお茶を入れてくれた。


「叔母上には本当に感謝のしようがない。そして、我が国が大変な迷惑をかけて誠に申し訳ない」


 公国王は感謝と謝罪の言葉を王妃様にしながら、公国王太子と共に深々と頭を下げた。


「顔を上げてください。こうして無事に解決できたのです。先ずは良しとしましょう」

「はい、有難う御座います」


 王妃様が話を返して、公国王と公国王太子は席に座った。


「半年くらい前から、外務大臣が怪しい動きをしているのが分かっていたのですが、表面上は何も行動を起こさなかったので偵察のみにしていました。それが一ヶ月前になって急に強引な動きを見せるようになりました」

「それで、ジュリエットとリディアを使者として我が国に寄越したのですね」

「はい、強引に外部との連絡を遮断されたので。帝国での聖女様の活躍を聞いてので、藁にもすがる思いでした」


 ということは、人神教国が帝国での企みに失敗したことで、矛先を公国に向けたというわけか。

 そして公国王と公国王太子を誘拐し、王国から助太刀をされない様に王都に襲撃を仕掛けたというわけか。

 

「外務大臣は王族誘拐に暴行もあり、違法奴隷の件もある。叔母上には申し訳ないですが、我が国で裁かせて頂きたくお願い申し上げます」

「議場でも申し上げましたが、正当な裁きをして頂けるのなら、我が国は何も申し上げません」

「有難う御座います。判決結果は、必ずお伝え致します」


 裁きに関する事は、このくらいで大丈夫だ。

 さっき王妃様達に連れ出された外務大臣がどうなったか怖くて聞けないし、後は公国王にお任せしよう。


「失礼します。ジュリエット様が、お見えになられました」

「そうか、入ってくれ」


 扉が開くと、ジュリエット様が入ってきた。

 ジュリエット様は、もう涙目だ。


「ジュリエット。すまんな、辛い思いをさせてしまって」

「お父様!」


 ジュリエット様は、公国王に抱き着き嗚咽を漏らしている。

 そんな妹の事を、公国王太子が優しく頭を撫でていた。


「ここにリディア様をお呼びしますか?」

「いや、一度しっかりと議場で関係者に説明をする。我々が公邸に戻ってから、リディアを呼んで頂けると助かる」

「承りました。ではリディア様には、準備をするようにと伝えてまいります」

「宜しく頼む」


 ということで、うちに戻ってリディア様とお付きの侍従に話をした。

 直ぐに準備をすると侍従は動き出し、リディア様はプリンと共にソワソワし始めた。

 再び行政府に戻ると、今決まった方針を伝えるために再度開場する所だった。

 俺は王妃様達と共に、貴賓席に案内された。


「それでは、此度の件について決定事項を報告する。まず、外務大臣を始めとする関係者は我が国で裁く事とする。エストランド王国とは、担当を派遣し調整を行う。鎖国は即刻解除し、交易を再開させる。また、人神教国に関する一切を禁止とする。代わりの外務大臣や捕縛された議員の代わりについては、後日関係者会議を開いて処遇を決定する。以上だ」


 演説台から公国王が残った議員に対し、今後の方針を説明した。

 議会はこれで終了となり、議場から人が退場する。

 どの人も、表情が良くなっていた。

 この国が、いい方向に進んで行けばいいな。

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