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第二百七十四話 救助活動の途中経過

 現地救助に入って一週間。

 ゲレーノ男爵領とマンチェス子爵領での住民の治療は殆ど完了。

 ララとリリとホワイトとタラちゃんの治療班は、ドーヴィル男爵領とナンス男爵領で住民の治療を始めている。

 ビアンカ殿下とレイアもブレンド領調査団に合流して、それぞれ活動し始めている。

 街道も一部が開通し、徐々に物資が届き始めてきた。

 

「ドリー、その手に持っている雛はどうした?」

「水辺の近くにいたの。水だけで生き延びていたみたいだよ」


 今日も未開通の街道の火山灰除去をしていたら、ドリーが付近の林の近くで火山灰まみれのサンダーホークの雛を見つけてきた。

 数羽いるようなので、手分けして火山灰を洗い落としてオーク肉の細切れを与えてやった。

 相当お腹がすいていたのか、勢いよく肉を食べていた。

 

「薬草取りのかごに、タオルを敷いておこう。この中に入れておけば大丈夫だろう」

「うん」


 サンダーホークの雛は全部で五羽。

 お腹が一杯になったのか、カゴの中ですやすやと眠ってしまった。

 森の中の動物も火山灰の被害を受けているだろうが、全てを救うのは難しいな。

 

 そんな事を思いつつ、ひたすら火山灰の除去を進める。

 

「あれ? サトーさんではないですか」


 ゲレーノ男爵領とブレンド領を結ぶ街道の火山灰の除去がほぼ完了したところで、ブレンド領の調査をおこなっていた学園生に遭遇した。

 どうやら、ゲレーノ男爵領とブレンド領が完全に開通したようだ。


「こちらでも、たまに灰にまみれた動物を見かけますね。従魔達のお陰で、こちらが手を出す間もなく綺麗にしてくれるのは有り難いです」

「下手に人間が手を出して、生態系を壊すわけにもいかないからな」

「仕方あるまい。ある程度森から火山灰は除去するが、全てに手を出すわけにはいかんのう」

「時間をかけて、ゆっくりと元通りになる」


 ついでだったのでブレンド領の村に行き、カロリーナさんとビアンカ殿下とレイアと少し話をした。

 頻度は少ないとはいえ、ブレンド領でもたまに火山灰まみれの動物を見かけるという。

 学園生の従魔が、水魔法で灰を洗い落としているという。

 うちが担当したゲレーノ男爵領とマンチェス子爵領でも、たまにそういう動物を見かけたな。

 幸いにして水深の浅い池があるので、いろんな動物が池に入って火山灰を落としていた。


「ゲレーノ男爵領とブレンド領が繋がれば、バルガス公爵領とも繋がる事になる。これで物資も本格的に行き渡るのう」

「各街道も開通し始めていますし、ここまでくれば救助活動も一段落かと」

「畑の火山灰の除去も終わった。後はお任せ」


 畑の火山灰も除去し、スラタロウがいつの間にかドワーフ自治領で購入していた籾殻くん炭を畑に混ぜて耕運機魔道具でうなっておいた。

 少し時間が経てば、土も中性に中和されるだろう。

 本音を言えば腐葉土や堆肥も混ぜたいけど、それは領民に任せよう。


 ゲレーノ男爵領に戻りバルガス公爵領まで街道が開通したとゲレーノに報告した所、商隊に直ぐにバルガス公爵領へ向かうように指示が出された。

 一旦、ゲレーノ男爵領に物資を集めるという。

 商隊がゲレーノ男爵領に戻って来る頃には、他の領地を結ぶ街道も開通しているはずだ。

 復興の見通しが立ったので、王城に向かい現状を報告する。


「市街地の火山灰の除去は終わり、主な街道の火山灰の除去ももうすぐ終わります。ゲレーノ男爵領からバルガス公爵領まで街道が開通しましたので、先ずは最悪の事態を脱したかと」

「そうか、サトー達と対応した部隊には感謝だな」

「しかし、サトーの所のフルメンバーと四個小隊を投入して、やっと状況が解消できるとは」

「これを放置していたビンドン伯爵達の罪は重いな」

「ろくに調査を行わずに、それぞれの領地だけでなんとかなると思ったのだろう」


 陛下と閣僚は最悪の事態を回避したことに安堵しつつ、この事態を招いた貴族主義の連中に憤慨していた。


「ちなみにですが、ビンドン伯爵の対応は進んでいますか?」

「王都の宝石商に問い合わせた所、バッチリ宝石の購入記録が残っていた。古美術商でも同様だ。ビンドン伯爵本人だけでなく伯爵夫人も不正に関わっていたので、取り巻きを含めて拘束し尋問を始めている」

「屋敷を捜索しているが、他にも色々と出てきている。今回の復興費用横領が霞んて見えるほどだ」

 

 もうビンドン伯爵は終わりだ。

 これだけの事をして、尚且色々な罪状が出ているのだから。

 取り巻きも捜査を受けているとなると、ほぼ貴族主義の連中は全滅するだろう。

 モートル伯爵もザンディ子爵も貴族主義を離脱したのと同じ様なものだし、四領地も同様だ。

 一部残っているとは思うが、虫の息だろう。


 報告が終わったので、マンチェス子爵領に向かって火山灰の除去を手伝う。

 ここは領地も広く火山灰の量も多いのだが、スラタロウとショコラというアイテムボックス持ちがいるので、かなりの火山灰が除去されていた。

 街道も火山灰の除去が進み、あと数日で通行可能となる。

 ちょうどブレンド子爵領で調査を行っている学園生の派遣期間終了とも重なるので、皆纏めて王都に送っていこう。

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