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第五話 鈴蘭ちゃん、気になる

鈴蘭視点です。この子、実は百五十センチも身長無かったりします。

 アルバイトへ向かう千島くんを見送ってから、わたしは桔梗ちゃんの手を引いて和室に連れ立って入った。もちろんお仕置きのためだけど、それ以外にも目的はあった。


「さてと、桔梗ちゃん。お仕置きの前に聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

「な、何でしょうか?」

「わたしって、千島くんと話してたとき、そんなに楽しそうだったかな?」


 これは普通の人には些細なことだけど、わたしにとっては大切なこと。念のため確認してみても、桔梗ちゃんの返事は同じだった。


「うん。雛菊お姉さんや桐矢お兄さんと話してたときと同じくらいには楽しそうでしたよ?」


 わたしは誰と話すときでも(もちろん害意のある相手は除く)楽しく会話することをモットーにしてるんだけど、本当に仲の良い相手には無理して合わせてるかどうかわかるそうだ。


(そんなつもりは無いんだけどな)


 本当に仲の良い相手である幼馴染である有磯雛菊さん曰く『楽しそうにしている仮面を被っている』とのことだ。もう一人の幼馴染、有磯桐矢くんもその例えに同意し深く頷いていたので間違いは無いだろう。


「つまりわたしは、あの二人と同じくらい千島くんを気に入ってるってこと?」

「そうなるかと」

「......」


 わたしの質問を桔梗ちゃんが肯定した。えっ? ちょっと待って。確かに千島くんとは学年一緒で何度か顔も見たことあるし、見かける度に顔色悪くなってて大丈夫かなこの人とか思ったことあるけど、話したのは今日が初めてなんだよ?


(それだけで気に入るとか、わたしってどれだけチョロインなんだよ。でもまあ、桔梗ちゃんや、かか様がそうだもんね)


 ヘコんだものの身内がチョロインな以上、血縁のわたしが違うわけも無いという答えに行き当たったためどうにか持ち直し、そのまま会話の矛先を桔梗ちゃんに向けた。


「というか桔梗ちゃんも千島くんと普通に話してたよね?」

「えっ!?」

「桔梗ちゃん、初対面の相手でしかも男子なんて一番苦手でしょ? それなのに、どうして普通に会話出来たのかな?」

「最初は緊張してましたけど、鈴蘭お姉ちゃんの恩人さんですから、頑張ってお話したんです」

「ああ、そういう理由なんだね」


 からかうつもりで聞いたのだけど、真面目に返されてしまった。ひとまず桔梗ちゃんの努力を買って、頭を撫でておく。


「はぅぅ、ですけどあんまりお話し出来ませんでした」

「あー、多分それは千島くんも話し下手だからじゃないかな? 学校で見かけても、いつも一人だったから」

「そうなんですか?」

「うん。といっても見たのは数回だけど」


 ただその数回で友達が誰もいないと察することが出来るくらいには、孤独のオーラが漂ってたけど。まああんな酷い顔色で、仏頂面してたら誰も話しかけないよ。


「はぅぅ、身につまされるお話です。私も学校でお友達出来ませんし」

「桔梗ちゃんの場合は、保健室に行かないと出会えないレアキャラだからって事情もあるけど」

「はぅぅ」


 ボッチ具合は似てると感じたのだけど、どうも千島くんも桔梗ちゃんというか子供が苦手っぽいと見て取れたから、二人で食事を用意することにしたのだ。


(せっかくもてなすために連れて来たのに、困らせたくないもんね)


 味にも満足して貰えたようだし、楽しんでくれてたみたいなので、わたしはホッと胸を撫で下ろしたのだけど、そうなると気になってくるのが一点。


(まさか、一緒に食べて泣かれるとは思わなかった。ボッチな理由もそこにあるのかも)


 あの顔色の悪さといいきっと家庭内に事情を抱えているんだろうな。じゃないと男の子が女の子の前で泣くなんてないよね。それも本人無自覚だったし。


(とと様が帰ったら聞いてみよう。男の子の考えることってわからないし......って、さっきからわたし千島くんのことばっかり考えてるよね!?)


 これではまるで気になる人が出来た思春期の女の子みたいじゃない。いや確かにわたしは思春期の女の子だし、千島くんのことが気になるし気に入ってるのは事実だけど、気になるの意味が違う。


(あくまでも、突っ込みどころが多いから気になってて、天然でからかいがいがあるから気に入ってるだけで、恋愛的な気になるとか気に入るとかじゃ無いんだからね! ってこれじゃツンデレみたいじゃん!?)


 心の中で自分自身の思考に突っ込みを入れ、一旦落ち着こうと考え深呼吸すると、目の前にいる桔梗ちゃんが心配そうにわたしをのぞき込んでいる。


「鈴蘭お姉ちゃん、先ほどから百面相してどうされました?」

「あ、いや、何でも無いよ。そんなことよりも、お仕置きしないとね♪」

「はぅぅ!!」


 心配してくれている桔梗ちゃんには悪いけど、それはそれ。わたしは桔梗ちゃんを膝に座らせ、後ろから手を伸ばし足に触れ、その足を包むルーズソックスを一気に脱がした。


「はぅぅぅぅ!!」

「あははっ、相変わらずいい反応だね♪ もう片っぽも脱がすね♪」

「きゃぁぁぁぁぁっ!!」


 両足とも脱がすと、可愛い悲鳴を上げた桔梗ちゃんの体から力が抜け、もたれかかるようにして気絶した。本人曰く靴下を一気に脱がされるとビックリして、そのショックで気絶するそうだ。


(だったら短いの履けばいいのに......って長っ!)


 わたしは手に持ったルーズソックスを伸ばしてみたのだけど、まるでタオルか白い蛇に見えたため長さを確かめたのだけど、桔梗ちゃんの身長どころかわたしの身長よりも長かったため唖然としたのだった。

お読みいただきありがとうございます。本日ももう一話更新します。

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