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サンセットライディング

作者: 芝田 弦也

眠りにつき始めた街並みを、がたついて今にも壊れしまうんじゃないかと思う軽自動車で駆け抜けていた。

明滅を繰り返すだけのやる気のない信号機を前に車も自分の思考も止まって、ふと振り返ると湧き出てくる自問。

(俺何やってんだろ……。)

少しでも疑問に思ったら切りがない程、浮かび上がってくる自問の声。

左右から飛び出してくる自動車が無いか確認しながら、自分の頭の中で渦巻いている疑問にも思考を巡らして、隣で寝息を立て始めた高校時代からの親友に目を配らせた。


もうじき大学を卒業をして社会人として旅立つ時期なのに、暇さえあればパチスロに没頭してばかりで社会人としての姿勢がまるきり見えない。さすがに就職先を見つけて豪遊しているだけかと思いきや、笑いながらパチプロになるとか寝言を言ってのける始末。しまいには自分の話には耳を貸さない様に気持ちよさそうに寝息を立てているのだから困ったもんだ。

口が達者なだけで手腕の方はからきしだから、時間もお金もおろせないまま時間を食いつぶしていると言うのに。


まぁ人の趣味にとやかく言うつもりは毛頭ないんだけど、娯楽のひと時が終わればいつも連絡を寄越してくる。

『終電逃したから、送ってよー』

始めの頃は、車の免許を取り始めたこともあり勇んで迎えに行ってたけど、いつの間にかに習慣化していた。今では当たり前のように足として使われている始末。俺はいつからお前の専属ドライバーとして契約したっけ?

俺の気持ちもよそに気持ちよさそうにヨダレなんかたらしてやがるよ。

その顔にイラっとして、小突いて起こしてやると不機嫌そうな顔で睨んでくるから手に負えない。

思い出したように先ほどの戦績を、しかめっ面で延々と愚痴をこぼしはじめる。

いつも通りの光景に下らなさすぎて笑えるけど、どの位の時間を彼の足として費やしたかと思うと、恐怖で身が縮こまる。

なのに隣に目をやれば、阿保みたいな顔して明日こそはやってやると息巻いている。

頭から湯気が出ているんじゃないかと疑うくらいの高揚ぶりだから、諭すように声をかけても届かない。

心ここにあらずで、自己陶酔の世界に入り浸っている。

そこから引き剥がすのは至難の業ってもんだろう。


でもここで諦めたらいけない。

ここで現実を見せつける為の言葉を見つけて諭さないと、明日の夜もこうして夜道を走り続けているのが眼に浮かぶ。

嫌なら無視すればいいんだろうけど、そうはいかない。

これは俺の勝負でもあるんだ。


親友がこの車を降りるまでの間、時間とお金の大切さといかにパチスロが無駄なのかを教え諭さなければいけない。

未だに改心に成功したことないけど、いつかはその世界から足を洗わせてやるんだ。

今まで、親友に注ぎこんで奪われてきた時間を取り返すためにも。

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