#6.3 天空の星空
小さな滝が終わる頃、川の流れは穏やかになり、ボートはゆっくりと進むようになった。そして川幅は更に狭くなり川底が浅くなったが、ボートが底をつくようなことはないようだ。
行く手に高く壁のような山が見えてきたが、洞窟があって川はそこに流れて行く。川の流れからして、また何処かに落とされるようなことはなさそうだ。ボートは歩くよりも遅い速度で洞窟に入っていく。
洞窟の中は真っ暗で、冷たい風が吹いてくる。ボートが前に進んでいるのか分からないくらい、前が見えない。
ココナが少し震え、ヒロがビビる。何せヒロは船首で一人きりだ。できれば二人のところに瞬間移動したいと願ったことだろう。
「フフフ」
突然の声にココナが少しびっくりし、ヒロが涙目になる。暗くて誰の声だか分からない。おや、エリカだけがニンマリだ。
(来たよ)
エリカが手をパチーンと叩くと、星空が天空に広がった。ココナが『まあ』、ヒロが『おお』と声を上げると、エリカがまた手を叩く。すると星空の位置が変わり、そこが無数の星で輝いた。
「やってみて」
エリカが満面の笑顔で、ココナに手を叩くように催促する。それに戸惑うココナだが、既に手は構えの準備に入っている。
「こう?」
ココナが手を叩くと、また星空の位置が変わり、無数の星で輝き始める。何で星の位置が変わるのか分からないヒロは、その都度『おお、おお』と驚き担当になったようだ。
今度はエリカがココナの耳元で何やら囁き、『せーの』で二人して船底をバタバタと足踏みを始めた。ボートは小刻みに揺れ、ヒロがまた『おお』と声を上げている。
二人の足踏みで、星々が移動せず、次々と星が現れ満天の星空が広がっていく。そこをボートがゆっくりと進み、三人は星空を見上げている。しばし、星空見物をする三人だ。
調子に乗ってきたエリカが口元に手の平を添えて、フーとすると、そこから光の粒が吹き出し、それが上の方に届くと流れ星のように降り注いでくる。それを見入るココナとヒロ。二人の目は光の反射で輝き、口が開きっ放しだ。
更に調子に乗ったエリカが両手を広げると、そこに直径5mくらいの月が降りてきた。それを、ヒョイっとヒロの方に投げると、ヒロは押し潰されまいと逃げるが、そんな場所はない。これが運の尽きというのか。
月はヒロの手前でUターンし後ろに向かって、どんどん離れていく。そして迎えた火星では猫型火星人達がこちらに向かって手と尻尾を振っている。巻き上がる砂嵐が幾つも立ち登り、その終点から猫達が地上に降り注ぎ見事な着地を見せている。それに拍手喝采するエリカとココナだ。
次の木星では大きな渦に大きく長い棒が飲み込まれ、それがポーンと弾き飛んでいる。そして衛星のイオに当たり弾け、エウロパ、ガニメデの順に当たるとカリストで跳ね返り木星の渦に一直線に向かう。そこでまた大きな渦に飲み込まれポーンと弾き飛んでいく。それをずっと繰り返している。
目が回った冒険団は木星を離れ土星に近づくと、その環の上を大きな猫が右回りで走っているのが見えてくる。時折、尻尾を立てては終わらない旅を楽しんでいるようだ。
天王星では雪合戦する猫達は当たり判定に厳しく何処でもそれで揉めている。そのとばっちりで雪玉が冒険団の頭を掠めて飛んでいく。その度に『おお』と声を上げる冒険団一行だ。
流石に此処まで来ると陽の光が弱い。そのせいか寒くなってきた冒険団に海王星が迫る。そこでは猫達がコタツで丸くなろうと一番地を目指して争い、疲れ、束になって温もっている。どこもかしこも猫だらけだ。
そこから、もう飽きたのか一気に太陽系を離れ幾つもの銀河を巡り宇宙の果てにやってきた。星が少なくなってきたところで、エリカが立ち上がり両手を空に掲げると締めの花火が打ち上がる。当然、ドカーンと効果音付きだ。もう、ココナもヒロも何が何だか分からなくなったが楽しそうだ。
そうしてボートは遥かなる宇宙に別れを告げ洞窟を抜けると、穏やかな川をのんびりと下って行く。




